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INTERVIEW
154
奈良美智美術家 Yoshitomo Nara / Artist
Yoshitomo Nara / Artist

徒歩圏内の小さなコミュニティーでお祭りを【前編】

人間を人間らしくしてくれるのがアートの役割。

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update_2024.01.10 photo_yoshikuni nakagawa / text_akiko miyaura

現代の日本を代表する美術家として、国際的に活躍する奈良美智さん。2023年11月に開業したばかりの麻布台ヒルズ中央広場には、彫刻作品《東京の森の子》が設置されました。近年は頻繁に北海道を訪れ、現地の人々と交流しながら制作や展示を行っています。そこで今回は、「森の子」シリーズのお話をはじめ、震災をきっかけに変化した制作のあり方、滞在制作を通した北海道のコミュニティーへの関わり方、そしてアートとコミュニティーのこれからについて伺っていきます。

後編はこちら

世界と交信するための"森"。

 今回麻布台ヒルズに設置された《東京の森の子》は、大きさを変えて何体かつくっていて、最近ではロサンゼルスに大きいサイズのものが置かれました。世界各地に"森"という観念が広まっていく、そういう象徴になるといいなと思っています。先の尖った形は、僕が生まれ育った北国の針葉樹や、あとは子どもたちはみんな好きだと思うけれど、クリスマスのモミの木から。希望を感じさせる特別なモチーフですよね。

《東京の森の子》

《東京の森の子》

麻布台ヒルズ中央広場に設置されたシリーズ最大のブロンズ像。他には青森県立美術館の《Miss Forest / 森の子》、栃木県N's YARDの《Miss Forest / Thinker》、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の《Miss Forest(LACMA Version)》などがある。

麻布台ヒルズ

麻布台ヒルズ

六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズに続き、森ビルが「Modern Urban Village」をコンセプトに開発を進める再開発プロジェクト。2023年11月24日開業。同施設内には奈良さんの他に、オラファー・エリアソン氏、ジャン・ワン氏、曽根裕氏などの作品がパブリックアートとして設置されている。
© DBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills

 僕が育った青森県は、妖怪好きな人には恐山でなじみがあるんじゃないかと思います。やっぱり仏教とは違う、昔からあるアニミズムのような信仰がまだ残っている。それがどこからやってくるかと言うと、森や山の中からなんですよね。以前行ったアイルランドでも、自然物に神が宿るような共通した宗教観を感じて、自分が「森の子」をつくったのは、人間が生まれる以前のものたちと交信するためだったのではないか、と後から思いました。もし僕が南国で育っていたら、 "クスの子"や"マングローブの子"になっていたんじゃないかな(笑)。

 「森の子」は、大都会でも離れ小島でも、どこに置かれても存在理由があるような彫刻であってほしい。アートかどうかに限らず、街を出た時にどうしても思い出してしまう故郷の山や川に似た、生活の目印となる存在になってくれたらいい。映画『2001年宇宙の旅』の冒頭で、未知の力でつくられた立方体が出てきますよね。ああいう意思を持った構造物のように、自立してそこにあり続けてほしい。それで《東京の森の子》と同じものが南極大陸にもあって、全部地球の真ん中へ繋がって交信していたとしたら、面白いじゃないですか。

震災以降に発見した土の手触り。

 なぜ粘土を用いた立体作品をつくるようになったかと言うと、東日本大震災が発生してから虚無感に襲われて、筆を握れなくなったことがきっかけ。すべては壊されるのに制作する意味はあるのだろうか、津波がきたら人の命までなくなっちゃうじゃないか。そう感じる中で、何か踏ん張らなきゃと思った時に、土に行き着いた。筆も握れないしキャンバスも貼れない、そんな中で赤ちゃんが最初ににぎにぎと手にとるような原始的な素材として土がありました。振り返ってみればリハビリだったと思うのですが、粘土を扱う時は道具を使わず自分の手だけ。一戦交える気持ちで身体全部を使って、粘土と対峙してましたね。

 震災以前の立体作品は、発泡スチロールを削って原型をつくり、最終的にファイバーグラスで仕上げるような表面がツルツルとしたスムースなものをつくっていました。だけど、そのつくり方では廃棄物がたくさん出る。洗練された形にはなるんだけど、自然に優しい素材ではなく、工場の中でできるようなものだったんですね。

 今は手を動かしていく過程そのものが、自分の中ですごく面白い。筆を持って絵を描く時は、次のタッチをどこに置くかとか、細かく考えないとできないんですよ。ところが粘土だと、手が勝手に動いてくれる。全て身体が教えてくれるような感じがあって、自然が味方してくれているんじゃないかと思えますね。表面がつるっとした工業製品のような昔の作風とは違い、いろいろな角度から、手の跡=自分の思考が見えるようになりました。

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関係性が自然に生まれることから始める。

 制作の方法で言うと、洞爺湖でワークショップのプロジェクトを最近やったんだけど、それは呼ばれたから始まったわけじゃないんですよ。3年か4年ほど通っていくうちに小さなコミュニティーの人たちと顔見知りになって、5、6年目くらいから何かできないかと動きが出てきたもの。最初から何かをやろうと思っていたんじゃなくて、自然に出来上がっていったワークショップだったんですね。

ふらっと奈良さんと

ふらっと奈良さんと

2022年に実施された洞爺の子どもたちとの絵の共同制作プロジェクト。約1ヶ月間にわたる滞在制作の様子は『Summer Records 奈良さんが洞爺で過ごした夏の記録』として1冊にまとめられている。
画像:森髙まき(たまたま舎)

 地方へ足を運ぼうと思うのは、そこにしかないものを求めているから。洞爺湖であれば、景色やそこでお店をやっている人たちのコミュニティー。彼らはその場所に来る人たちだけを相手にしていて、例えば外に向かってこんなことやってるよ! と積極的に発信はせず、本当に口コミレベルで発信している。だから自然にじわじわと広がっていくんだよね。最初からインターネットを使って、遠く離れた人に来てください、というやり方じゃない。そういう小さいながらも人が来てくれる環境を大切にしているコミュニティーが僕は好きなんです。

 洞爺湖を訪れたきっかけは、あるパン屋さんが津軽三味線の映画を自主上映したっていうたまたま見つけた記事で、もしかしたら青森出身の人かもなと思ったからでした。ただ、訪ねてみたら、お店が休みだった。で、次に訪ねたのが1年後で、また休み。その次が3年後になっちゃったんだけど、店の前に子どもがいて、やってる! と思って入ろうとしたら「今日休みだよ」って(笑)。それでそのまま帰ってTwitterに投稿したら返事があって、実は土日しかやっていないことがわかった。そんなこともあって、すぐにまた足を運んだら仲良くなっていって。お互いに自然に近づくのを待つというかね。そんなペースなので、知らない土地で急に何かやってくださいと言われてもできない。やるとしたら子どもたちと仲良くなって、その家族ともお酒を飲む間柄になってから(笑)。

小さなコミュニティー間で生まれる化学反応。

 飛生芸術祭の時は、廃校の周囲の林を再生しようという話がもともとあって、森がどうやって再生されていくのかを見たかったから足を運んだ。予定していた前の日に行ってみたらちょうど森づくりの作業日で、これからバーベキューするから食べて行って、と。そういう流れがあって、ここで芸術祭もやっているから僕がレクチャーをすることになった。その間に子どもたちが大きくなったりしてね。

飛生芸術祭

飛生芸術祭

北海道、白老町内の小さな集落である飛生(とびう)にあるアートコミュニティーが開催する芸術祭。アートコミュニティーは旧⾶⽣⼩学校にアトリエを構え、1986年発足。2009年より「⾶⽣芸術祭」が開始。学校林を整備する森づくりの活動を軸に、1年に1度開催されている。

 この芸術祭は、あくまで森をつくることが中心。その方が人が集まると思うんです。例えば美術をキーワードにすると、美術好きか作家しか集まらない。でも森って生活に身近だし、とくに北海道はアウトドア王国だから。何が楽しいって、森づくりをした後は夕方からバーベキューが始まること。人里離れてるからどれだけ酔っ払って騒いでも、誰にも迷惑かからないし。

 僕が思うのは、人対人でつながるんじゃなくて、ゾーン対ゾーンで交わることが重要。若者だけ、あるキーワードだけでつながるんじゃなくて、有象無象のもやもやっとした小さな塊同士が合わさると化学変化が起きやすいって思いますね。もちろん大きくなりすぎると、決まりごとが必要になって難しくなるんだけど。小さければ、フリーマーケットをやろう、お祭りをやろうといったことがとんとん拍子でできるし、その中で自分は何ができるかを考えられる。奈良さんは後片付けがうまいから片付けて、とか(笑)。美術ではないことで関われるのが、自分にとっては新鮮ですね。

THE SNOWFLAKES

THE SNOWFLAKES

奈良さんと飛生アートコミュニティーの国松希根太さん、小助川裕康さん、奥山三彩さんの4人組のアーティスト・コレクティブ。2020年に結成されて以降、北海道をはじめ沖縄、韓国で海岸に打ち寄せられた漂流物を素材とした作品を発表している。THE SNOWFLAKESの特別インスタレーションが2024年3月24日(日)まで北海道の苫小牧市美術博物館で展示されている。

画像:特集展示「THE SNOWFLAKES」中庭展示スペース展示風景
(画像提供:苫小牧市美術博物館)

撮影場所:麻布台ヒルズ中央広場《東京の森の子》

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奈良美智

奈良美智 / 美術家
奈良美智 / 美術家

1959年青森県生まれ。1987年愛知県立芸術大学修士課程修了。1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミー在籍終了。ケルン在住を経て2000年に帰国。1990年代半以降からヨーロッパ、アメリカ、日本、そしてアジアの各地で規模に関わらず様々な場所で展示発表を続ける。見つめ返すような印象的な絵画、日々自由に描き続けるドローイング作品のほか、木、FRP、陶、ブロンズ、そしてインスタレーションなど多様な素材や空間に生命を吹き込む様な彫刻作品を制作。また、制作の日々や旅先での出会いを収めた写真作品も発表している。
作品はニューヨーク近代美術館、ロサンジェルスカウンティー美術館、ボストン美術館、ナショナルギャラリー(ワシントンD.C.)、大英博物館(ロンドン)など世界中の美術館に所蔵される。
近年の主な個展に「Yoshitomo Nara」(ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアム(アメリカ)/ユズ・ミュージアム(上海、中国)、2021-23年)「YOSHITOMO NARA. ALL MY LITTLE WORDS」(アルベルティーナ近代美術館(オーストリア)、2023年)「The Beginning Place ここから」(青森県立美術館(日本)、2023-24年)など。2024年夏からはビルバオ・グッゲンハイム美術館から始まるヨーロッパ巡回展が企画されている。

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