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INTERVIEW
143
成田悠輔研究者 Yusuke Narita / Researcher
Yusuke Narita / Researcher

『脳内イメージの街を再現し、謎の空間をデザインする』【後編】

何をしているかよく分からない人がやってくる余白を。

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update_2023.01.11 photo_tada / text_akiko miyaura

データやアルゴリズムなどを使ってWebビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、多くの企業や自治体と共同研究・事業を行っている成田悠輔さん。そのユニークな洞察力で論客、タレントとしても活躍されています。文学や映画、アートにも造詣が深く、今回はそういったクリエイションに対する考えやアートの未来、街が面白くなるために必要なものなど、成田さんならではの視点から語っていただきました。

前編はこちら

どんなオシャレ街も裏にはゲテモノを隠し持っている。

 今回撮影した「アダムアンドイブ」もそうですが、昔は用事がなくても六本木に来て、ぼーっと過ごすことがよくありました。1人で長時間居座っても何も言われず、店員さんも放置してくれる店があったんですよね。当時は朝まで営業していた「魚洋水産」とか「六本木 蔦屋書店」にふらっと来て、仕事しながら何か飲み食いしたり、本や画集を眺めたり。

アダムアンドイブ

アダムアンドイブ

西麻布の閑静なエリアにあるスパ施設。男性専用のアダムと、女性専用のイブに分かれており、24時間年中無休で営業している。サウナはもちろん、アカスリやマッサージ、岩盤浴など充実したサービスで、現在のサウナブーム以前から、著名人や芸能人をはじめ多くの人に愛されてきた老舗。

 普段は生活が昼夜逆転しているので、夜中に活動することが多いんですけど、1人で半分仕事半分散歩で朝までいられる場所がある街って意外と少ないんです。この界隈だと、六本木か新宿くらい。六本木は貴重な場所でしたし、愛着もあります。まあ私みたいな人が多いから、最近は深夜営業が少なくなったのかもしれないですけどね(笑)。

 街って六本木みたいにわかりやすい特徴がなくても、何かしら面白い要素を持っている気がするんです。私がアメリカで住んでいるのは田舎の大学街で、大して店もなく、観光名所があるわけでも高層ビルがあるわけでもない。普通に考えれば面白みのない街です。でもある日、夜中に散歩をしていたら、地下に繋がる洞穴みたいなものを見つけて。気になって侵入してみると、巨大なトンネル網のように地下道が張り巡らされた不思議な空間がダウンタウンの地下に広がっていたんです。最近知ったのですが、禁酒法時代に脱法バーのようなものが各地の地下でひっそり営業していたそうで、その名残りみたいです。きっと、すべての街が探せばそういう面白要素を持っているんじゃないかな。

その時間にいる必要のない人がやってくる場所が面白い。

 日本で住んでいるのも何の変哲もない中産階級の住宅街ですけど、昼間に歩くと違った世界が見えてきます。昼って、働いている人や学生は住宅街に留まっていないし、子育て世帯は意外と家のなかにいる。結果、何をしているかよく分からない人が出没するんです。この間も道端に座っていたら、全身を緑の蛍光色で包んだおじいちゃんが歩いてきて。その先を見ると、全身ピンクの蛍光色のおばあちゃんが待っていて、おじいちゃんがおばあちゃんに何か袋を手渡し、無言で去っていったんですよね。「やばい想像を掻き立てられる光景だな」と見ていましたが、どんなに退屈そうな街でも、場所や時間によってそういう奇跡的な光景が広がっているんじゃないかな。

"その時間にいる理由がない"人が集まるスポットをつくり出すことが、街を面白くする面もあるんでしょうね。夜に住宅街にいるとか、昼にオフィス街にいるっていうのは、社会的な理由があるので奇跡的な光景が生まれにくい。でも、真っ昼間の住宅街のように、"なぜ、今ここにいるの?"というシーンをつくり出すと、面白い出来事や光景がどんどん出てきそうです。

予期せぬ過ごし方、使い方ができる遊びをつくる。

 六本木みたいな街の難しさは、放っておくと四六時中、そこにいる理由が生まれてしまうこと。それでも、そういった場所で、異質な存在を街に取り込む分かりやすい方法は、予期せぬ人を動員することかも。「クリエイティブになるためのイベントを、東京ミッドタウンでやります!」と言っても、そこに来るのは自分の現状が面白くないゆえに、面白いことを考えたいと思っている凡人、という構図になりがちです。

 そうならないためには、今と違った時間の過ごし方や場所の使い方ができる"遊び"をどうつくり出すか。ただ、六本木は地価が高すぎて一定の階層以外の人はテナントになれないのが現実。ふらっと来ることもできない空気が少なからずあります。そんななかに、道に畳を敷きまくって野宿できる道端キャンプ場をやって、その横に所場代のかからない24時間営業屋台エリアでもつくれば、昔の私のようになんとなく居着くだけの怪しい貧乏人が増えるかもしれない。そういう余白を、街全体でつくることが大事だなと思います。

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人の頭のなかにある脳内イメージを、六本木に実装する。

 そういえば、昔、ある宗教団体がアメリカの田舎街を乗っ取った事件があるんです。彼らは突然、街に押しかけて土地を開墾し、住処をつくり始めた。さらに野望は大きく、街の行政を乗っ取ろうとしたんです。そのときにやったのが全米の街に無料の送迎バスを出し、「自分たちの街に移住したら、クーポンをあげる」と誘って、全国津々浦々のホームレスたちを集結させること。結果、有権者の過半数を握って街を占拠してしまいました。それとは趣旨が違いますけど、同じ方法を採ったらどうなるかは興味があります。ランダムに選んだちょっと遠い都市から、六本木のど真んなかに来られるバスを提供すれば、面白い文化の融合が起こりそうな気がしますよ。

ラジニーシ事件

ラジニーシ事件

インドを追われた瞑想指導者、バグワン・シュリ・ラジニーシが、1981年にアメリカ・オレゴン州の田舎町に「ラジニーシプーラム」という宗教コミュニティをつくり、更地を開拓してユートピアともいえるひとつの街をつくった。ドキュメンタリー映像『ワイルド・ワイルド・カントリー』や、バグワンの著書などから、当時を知ることができる。

 あと、ちょっと違った視点で、"街をデザインする"と考えると、人の頭のなかにある主観的イメージを実際に再現するのもいいかもしれないですね。都市や街って、リアルと並行するかたちで、人々の頭のなかに特定のイメージが存在すると思うんです。例えば、人を集めて六本木の街はどういう形をしているか、どこに何があるかと聞き出すと、主観的イメージが浮かび上がる。実際の街とは大きくズレるであろうそれらをデータとして抽出し、脳内イメージ通りの街をつくってみると変なものが生まれるんじゃないかな。このエリアはこの人の脳内イメージ、ここから次の道までは別の人の脳内イメージと、切り貼りしても面白そうだなと思います。

 少し範囲を狭めて、六本木ヒルズや東京ミッドタウンの脳内イメージでエリアをつくることもできますよね。建物や道の構造を聞いていくと、人それぞれに何があるか分からない謎の空間が存在しているはずで。例えば、「東京ミッドタウン・レジデンシィズ」(住宅棟)を知らない人は、その欠損している部分を何とか想像で埋めると思うんです。埋めた部分にこそ、人が東京ミッドタウンに抱いている本質的なイメージが現われるような気もします。

 こんなただの思いつき話をしていると変なものの見方をしているように思われますが、自分ではそんなつもりはなくて。ただ、特定の見方に縛られるのが好きじゃないので、ある視点だけで分析していると飽きてくるんです。そもそも世のなかで論議されるものって、基本的につまらないものばかりだなあ、と。そのつまらなさから逃げる方法はないかと、自分なりに変な視点、奇妙な表現を無理やりにでも考える。結果、それが人から見ると、何をやりたいのかよく分からない人に映るんでしょうね。

何もしなくても、違和感なく楽しく過ごせる方法はあるのか。

 最近、気になっているのは、仕事をしなくとも、違和感なく楽しく過ごしていく方法はあるのか、ということ。結局、人間は何かしていないとアイデンティティを保てない。だから、金銭面で困らなくても、みんな何かし続けないと辛いんですよね。

 人類の歴史を見ると、ほとんどの間、ひたすら生き続けるためだけに食べ物を得たり、掃除や洗濯をしたりと、四六時中、働き続けなければならなかったわけで。でも、もし何もしなくても生存できるなら、楽しく生き続けることができるのか。そう考えて、今はアメリカにいるとき、なるべく人と関わらず孤独に過ごすようにしています。数日人と会わないと身体がこわばって手が震えたりすることありますね(笑)。そのなかで何を感じるか、何をするとどんな変化が自分に生まれるかを実験している感じですかね。

 仕事をせず、専業主夫でもないという状況で安定した自分を保つって意外に難しいこと。できている人をほぼ見たことがない。何かし続けなくても、ごく自然にその場にいられる状態を何とか見つけたい。それが、今一番関心のあることですね。

撮影場所:アダムアンドイブ

取材を終えて......
取材に現われた成田さんは、散歩がてらにふらりと立ち寄ったような心地よい脱力感を携えていて、こんなふうに六本木の街にたたずんでいたのだろうと想像せずにはいられませんでした。その経歴からロジカルな回答が繰り出されると思いきや、データや歴史を交えながら、ご自身の視点といろんなものが融合して生まれているであろう言葉。しかも、それは瞬間、瞬間に視点が移動していて、「こんな考えもある」「これも面白い」と次々違うボールが投げ込まれてくる感覚でした。スタッフ一同、ただただお話を伺う時間が楽しかった。この言葉にすべてが集約されていると思います。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

成田悠輔

成田悠輔 / 研究者
成田悠輔 / 研究者

夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、多くの企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌を求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど様々なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。著書に『22世紀の民主主義: 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』など。東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法人経済産業研究所客員研究員などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション大賞・MITテクノロジーレビューInnovators under 35・KDDI Foundation Award貢献賞など受賞。

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