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INTERVIEW
140
大貫卓也デザイナー / アートディレクター Takuya Onuki / Designer / Art Director
Takuya Onuki / Designer / Art Director

今こそ社会で機能するデザインを【後編】

デザインには、未来を変える力と大きな責任がある。

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update_2022.08.31 photo_tada / text_akiko miyaura

大貫卓也さんは"日本を代表する"、"伝説の"という前置きが、飾りにならない稀有なデザイナーであり、アートディレクター。今も多くの人の記憶に残る日清カップヌードル「hungry?」やペプシコーラ「Pepsiman」、資生堂「TSUBAKI」、新潮社「Yonda?」、としまえん「プール冷えてます」など、数多くの傑作広告を生み出してきました。脳天を撃ち抜かれるような大貫さんの発想は、驚きを与えたのち、前から知っていたかのように私たちに浸透していく。まさに奇才というべき存在です。今回は亀倉雄策賞を受賞した「HIROSHIMA APPEALS 2021」ポスターの制作過程や思いを中心に、大貫さんから見たクリエイティブの現状、デザイナーが今できることなど、じっくり伺いました。

前編はこちら

常識の反対にある価値観が、人を動かしていく。

 「HIROSHIMA APPEALS」は、良い悪い、正しい正しくないで測る類のものではありません。発信することに価値があると思っています。それに対して広告は、あくまでものを売るための手段ですから、良い悪い、正しい正しくないがある。

 昔はとにかく「新しい」が最高峰の価値でした。「やられた!」「悔しい」と言いながら、新しさ合戦をずっとしていた気がします。そこで戦うためにこれまでの常識を疑い、常識の反対にある新しい価値を提示することでアイデアを生み出し続けてきました。

としまえん「プール冷えてます」

としまえん「プール冷えてます」

1986年、としまえんプールのポスターを制作。「ビール冷えてます」をもじったコピーとかわいらしいペンギンのキャラクターで構成されている。プールの魅力をストレートに伝え、広告としての本来の機能を果たすポスターとなった。

 今でも現代美術などは新しさに大きな価値を置いていますが、広告やデザインの世界はかなり様子が違ってきている。昔は広告代理店やクリエイターと名の付く専門家しか、企画をしてはいけないという敷居がありました。今はその敷居が下がって、みんなが企画する世の中になった。一見、すごくいいことですが、みんなが意見を言えることが、逆に合議的で、斬新なものをつくることへの弊害にもなっているのではないか。リーダーシップを持った責任を取れる人間がいなくなり、新しいものより、正しいという言い訳でできたものばかりです。自分が損をしなければいいという個人化も進んでいると感じます。リスク回避で回っている現状は、やっぱり退屈です。当然、コンテンツに力がなく、クリエイティブが若い人のSNS発信や有名人のバリューに勝てていない。

新しい価値観こそ、最も強力な広告になる。

 ビジネスとして成功するなら、いいものを真似した方が合理的だと考えるのが、今のマーケティングですから。そうやって残念なことに、新しいかどうかはますます重要性を失ってきている。さらにパソコンがデザインの中心となって以降、デザインに参加できる人の層が広がり、結果、類型化したデザインが世の中に溢れ、全国津々浦々、似たようなおしゃれ企画風デザインが並んでいます。それまでぱっとしなかった商品が、パッケージをおしゃれに変えたら売れた。機能しない広告よりも、デザインの方が購買欲を左右すると、あたりまえのことに気づいたわけです。しかし、デザインに注力したのはいいのですが、それが表層的になってしまった。新しいふりをしたパッケージにごまかされて、一瞬、成功したように見えるだけで、長持ちしません。まあ、このデザインブームもあと5年くらいで、機能しなくなるのではないでしょうか。

 デザインの領域は確実に広がり、デザインの可能性はますます広がっています。本来、新しい価値観こそ、最も強力な広告であり、コンテンツです。クリエイティブもデザインも、もっと"新しさ合戦"をしてもらいたいと、本当に思います。

アウトプットの力が伴わなければ、いいアイデアも成功できない。

 昨今は、デザインや広告においても、手法やプレゼンテーションの話ばかりが先行しています。要は、口だけになっているのではないか。自分が若い頃は、しゃべるデザイナーはほとんどいませんでした。そんなデザインが言語化してきたことは良かったと思っています。しかし、現在のクリエイター達は、理屈は立派なんですが、最終的な着地が伴っていない。でなければ、どのビジネスもみんな成功しているんじゃないでしょうか。おそらく新しいアイデアは、世の中にいっぱいあると思います。しかし、その新しいアイデアを成功させるには、そのアイデアをジャンプさせる新しい表現が不可欠だということです。

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デザインは無力じゃない。大きな影響力を持っている。

 僕は広告、デザインといった仕事は、すごく影響力を持っていると思っています。「HIROSHIMA APPEALS」のポスターで言えば、戦争なんて1人の力でどうにもならないって思うじゃないですか。そんなことしても何の影響力もないでしょ。そうやって賢そうなことを言うのが今の風潮ですよね。もちろん、僕もそう思う部分はあります。でも、やめてしまったら先は何もない。たった1枚のポスターであれ、目にした少年1人が何かを感じたなら、それはもう影響を与えているということ。最初は何でも1つの点から始まっています。何もできないと諦めるのは、やっぱり違うと思うんです。

 2005年の『愛・地球博』の仕事をした時に、自分が思い描いたアイデアにゾクゾクした経験があるんです。1970年の大阪万博では"月の石"が展示され、話題になった。じゃあ、今度は何を目玉にするのかと模索していたある日、「目の前にある自然を大スターにすればいいじゃないか」と思い付いた。自然が日本で大ブームになれば、子どもたちの育ち方から何から多くのことが変わり、引いては日本全体が変わる。そう思った瞬間、「自分のアイデアで、未来を変えられるんだ!」と鳥肌が立った経験があるんです。

『愛・地球博』

『愛・地球博』

2005年3月25日~9月25日まで、愛知県で行われた21世紀最初の国際博覧会。日本の万博史上最多の120以上の国が参加した。メインテーマは「自然の叡智」。大貫さんはこの万博に関わり、シンボルマークのデザインを行った。

 だから、世の中に発信することの責任は重いと思っています。なんだか、真面目すぎるかな(笑)。でも、本当なんですよ。個人主義でやっていたら、お金儲けの話にしか繋がっていかないけど、未来を考えた時、デザインは何かを変えられる力になれるんです。

デザイナーは"ビジュアルで伝える"責任を果たすべき。

 僕たち表現者が世の中のためにできることとして、アイデアをもっと"ビジュアルで見せる"ことの重要性を感じます。やっぱり、人ってビジュアルを見ないと想像ができないんですよね。例えば、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」を見て育った人は、幸せな家族の画が浮かぶ。でも、もし今後そういったコンテンツがなくなったら、「家族の画って何?」と考えても思い描けなくなる人が出てくると思うんです。人は思った以上に、視覚で規定されているんですよね。

 当たり前の風景が放っておけばいつしか消えて、気づいた時には何もなくなるんじゃないか。そんな危機感もあります。先に話したように、考えや理屈だけで面白い企画を立てて、いいアイデアだと言ったところで、最後のアウトプットが伴っていなければ、結果が出ない。類型化したアイデアやデザインばかりが生み出されることで、みんな何も見えなくなっていないだろうか。だからこそ、今、デザイナーはビジュアルできちんと伝えるという当たり前の責任を果たすことが、必要だと僕は思っています。

撮影場所:『日本のグラフィックデザイン2022』(会場:東京ミッドタウン・デザインハブ、会期:2022年6月30日~8月11日)

取材を終えて......
「僕はしゃべりすぎちゃうから、今日はしゃべらないって決めてきたんだよ」と、笑いながら始まったインタビュー。それでも私たちの聞きたいことに丁寧に、時にサービストークを交えながら熱を持って答えてくださった大貫さん。現状を打開するには、大貫さんのように考えに考え抜き、ダイナミックに常識を覆し、ちゃんと人の心まで届けることがいかに大切かを考えさせられました。生み出す苦悩はあれど、広告が、デザインすることがとにかく面白いのだと伝わってくる。こちらまで楽しく、心が熱くなる取材でした。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

大貫卓也

大貫卓也 / デザイナー / アートディレクター
大貫卓也 / デザイナー / アートディレクター

1958年東京生まれ。1980年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。同年、博報堂入社。1993年大貫デザイン設立。としまえん、日清食品カップヌードル、ラフォーレ原宿、新潮文庫Yonda?、ペプシコーラPepsiman、資生堂TSUBAKI、SoftBankなど、多くのブランドコミュニケーションを行う。東京ADC賞・会員賞・会員最高賞・グランプリ(1981・1986・1987・1989-2002・2007・2018)、カンヌ国際広告映画祭グランプリ(1992)・金賞・銀賞(1993・1994・1995)、NY ADC金賞(1992)・銀賞(1992・1993)、毎日デザイン賞、毎日広告デザイン賞最高賞、ほか受賞多数。

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