六本木未来会議六本木未来会議
  
  • JP / EN
  
                    
  • INTERVIEWインタビュー
  • CREATORクリエイター
  • EVENTイベント検索
  • PROJECTプロジェクト
  • BLOGブログ
  • ABOUT六本木未来会議について
thumbnail
thumbnail
  • 利用規約
  • お問い合わせ
  • facebook
  • twitter
  • mail
  
Thumbnail Thumbnail
INTERVIEW
138
タムラサトル美術家 Satoru Tamura / Artist
Satoru Tamura / Artist

廃墟を使って手が震えるほど大スケールな動く作品をつくる【後編】

意味から切り離された、ただそこにあるという神々しさ。

  • HOME
  • INTERVIEW
  • NO138 タムラサトル 廃墟を使って手が震えるほど大スケールな動く作品をつくる【後編】
  • タムラサトル
  • ワニがまわる
  • 国立新美術館
PDF
  • JP / EN
update_2022.06.22 photo_yoshikuni nakagawa text_koh degawa

ユーモアに満ちていて、コミカルな作風ながらも、意味や文脈から切り離された不思議な作品で見る人の心を動かし、鑑賞者に問いかけるタムラサトルさん。現在、国立新美術館にて代表作「まわるワニ」のカラフルな彫刻を中心とした大規模な個展を開催中です。回転するワニのシリーズの変遷、なぜあえて意味がないものをつくるのか、そしてタムラさんにとってアートとはどんなものなのか、お話を伺いました。

前編はこちら

課題違反ギリギリを攻めていく。

 作家になるきっかけを得たのは高校生の時。当時から訳のわからないものや変なことをするのが好きで、課題があると違反ギリギリを攻めていたんです。中学では「変なことやりやがって」という反応だった先生からも、高校になるとちょっといい反応がもらえるようになったことも大きかったですね。

 高校までは、絵を描くことにもまったく興味がありませんでした。現代美術のことは「変なことをやっているジャンルがある」と思っていて、本をめくるたびに「こんなのやっていいんだ 」とショックを受けていました。「何これ。ビデオ彫刻って、そんなのいいの? 」という感じで。そういうのを見て「俺これだったらやっていける」、「これなら負けない」と変な自信があったのかもしれない。

 中でも最初に強烈な印象が残っているのはロバート・ラウシェンバーグ。当時、美術の教科書の表紙か何かになっていたので覚えているのですが、コンバイン・ペインティングという、ペンティングの上にヤギの剥製が乗っている作品でした。「ずるいじゃんこんなの」というのと同時に、「俺こういうの得意だわ」と思ったのを覚えています。

ロバート・ラウシェンバーグ

ロバート・ラウシェンバーグ

ネオダダを代表するアメリカ人アーティスト。二次元と三次元の素材をミックスさせ、絵画や彫刻といったジャンルを超えたコンバイン作品を制作した。
画像:Robert Rauschenberg Foundation

意味や目的から切り離されると、真実に近くなる。

 僕の作品は、モチーフから意味や目的を切り離して、ただ動くことを見せています。青臭いことを言うようですが、その方が真実に近いと思うからです。ただそこにあるだけのものって、何かすごく神々しい感じがするんです。

 それは、赤瀬川原平のトマソン的なものなのかもしれない。例えば、何にも繋がっていない、電線がすべて取られてただ荒野に立っている電柱に、僕は神々しさを感じるんです。かつては何かに使われていたのだろうけれど、今はただそこにあるだけ。これから朽ちていくんだろうっていうものができたらいい。ワニがまわる作品も少しコミカルな感じですが、見る人が「なんなの?」って思ってくれたらいい。

トマソン

トマソン

赤瀬川原平などが提案した芸術の概念。途中で途切れてしまい機能を果たしていない階段など、無用の長物となった建築物の一部のことを指す。フィールドワーク的に街を観察する実践は、後に「路上観察学」へと繋がっていく。

 2014年頃、久しぶりに「まわるワニ」を展示した時、大学の友だちに「これ、全然古くならないね」と言ってもらったことがあって。2人で「なぜだろう」と考えました。結果、おそらく意味や文脈から切り離されていることで、語りづらく、評価しづらくなるからではないかという答えにたどり着きました。

 豊洲にある石川島播磨重工の乗船所跡地の展示では、本来おもりとしての機能を持つ錨に穴を開けて軽量化し、軽い錨をつくったんです。作品名はずばり《ライトアンカー》。これは、意味を反転することで「ハマったな」と感じたパブリックアート。こんな風に具体的なお題があると、その文脈を解体するのが楽しいですね。

ライトアンカー

ライトアンカー

制作年:2014
素材: 産業遺構, 粉体塗装
豊洲フォレシア
画像提供:TOSHIO SHIMIZU ART OFFICE

int138_main_04

リバプールで見た「とんでもない作品」を六本木で。

 コロナの前、アートフェアや展覧会で地球を2周くらいしました。マイアミ、バーゼル、香港と様々な街を訪れたのですが、リバプールで偶然ものすごい作品に遭遇したんです。街中で、廃墟のビルの一部が円形にくり抜かれて回転するというとんでもない作品。立ちくらみがするほどのショックを受けました。作品をつくったのはリチャード・ウィルソンで、実際のビルの一部が本当に動くんです。

Turning the Place Over (場の回転)

Turning the Place Over (場の回転)

イギリス人アーティスト、リチャード・ウィルソンによる作品。廃墟ビルの2層分をくり抜き、360度回転させた。2008年第5回リバプール・ビエンナーレに出品され、2011年まで展示された。
©Richard Wilson

 取り壊される予定のビルを用いた作品で、下には普通に通行人がいたりするんです。ビルを丸く切る技術、壁面を回転させる技術......。「こんなこと許されるんだ」と、すべてが謎で衝撃的でした。

 六本木を舞台に何かするとしたら、このくらいのことをやりたいですね。日本でキネティックな作品を制作する場合、安全性を考えたら屋内で、となりますが、海外ではある程度のレベルの作家になるとこういう無茶苦茶なことをやるので、その攻めの姿勢は見習わなくちゃいけないなと思います。これぐらいスケールの大きい作品をつくったら、電源を入れる時、手が震える......と言うより、失神しちゃうかもしれない。もう、ボタンを押さないで帰っちゃうかもしれません(笑)。想像しただけでもドキドキしてしまいます。

撮影場所:『ワニがまわる タムラサトル』(会場:国立新美術館 企画展示室1E、会期:2022年6月15日〜7月18日)

取材を終えて......
カラフルで巨大なワニがまわる、ギリギリと音を立ててマシーンが動く......。タムラサトルさんの作品を見ていると、子どもの頃に水を上からこぼして遊んでいた時のような、あるいはただ広い海を目の前にした時のような気持ちの良い思考停止状態に陥る感覚があります。「鑑賞者として、これで合っているのか」と思っていたこともあったけれど、意味や文脈から切り離されてただそこにあるものへの眼差しは、こういうものなのかもしれないな、とお話を聞いていてすっと腹に落ちるものがありました。(text_koh degawa)

前編はこちら

タムラサトル

タムラサトル / 美術家
タムラサトル / 美術家

1972年 栃木県生まれ。1995年 筑波大学 芸術専門学群 総合造形卒業。「まわるワニ」、「後退するクマ」、「登山する山」、「バタバタ音を立てる布」、「端数がない重量の彫刻」、「大袈裟で開放的なスイッチ」、「動き続ける図形もしくは文字」、「10回たたく装置」、「空間を最大限に使用しただけインスタレーション」などを制作・発表している。

他のクリエイターを見る
  • タムラサトル
  • ワニがまわる
  • 国立新美術館
SHARE twitter facebook

RELATED ARTICLE関連記事

PICK UP CREATOR

  • 大貫卓也
    大貫卓也
  • のん
    のん
  • 豊田啓介
    豊田啓介
  • 三澤遥
    三澤遥
  • 尾崎マリサ(スプツニ子!)
    尾崎マリサ(スプツニ子!)
  • 佐藤可士和
    佐藤可士和
参加クリエイター 一覧

RANKING

ALL
CATEGORY
PAGE TOPPAGE TOP

PICK UPピックアップ

  • 六本木未来大学
  • クリエイティブ・カウンセリングルーム
  • 連載 六本木と人
  • 連載 デザイン&アートの本棚
  • クリエイターの一皿
  • 連載 デザイン&アートの本棚
  • ピックアップイベント

PARTNERパートナー

  • AXIS
  • 国立新美術館
  • サントリー美術館
  • 21_21 DESIGN SIGHT
  • Tokyo Midtown Design Hub
  • FUJIFILM SQUARE
  • 森美術館
  • ラクティブ六本木
  • 六本木ヒルズ
  • facebook
  • twitter
  • contact
  • TOKYO MIDTOWN
  • 利用規約
  • 個人情報保護方針
  • 個人情報の取扱いについて
  • Cookieおよびアクセスログについて
  • プラグインについて
  • お問い合わせ

Copyright © Tokyo Midtown Management Co., Ltd. All Rights Reserved.