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INTERVIEW
128
山縣良和ファッションデザイナー / 教育者 Yoshikazu Yamagata / Fashion Designer / Educator
Yoshikazu Yamagata / Fashion Designer / Educator

『職人と歴史へのリスペクトがある街づくり』【前編】

世界でも有数の技術力とクリエイションを地続きなものに。

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update_2021.06.23 photo_tada / text_akiko miyaura

ロンドンの名門校、セントラル・セント・マーチンズ美術大学在学中にジョン・ガリアーノのアシスタントを務め、首席で卒業。帰国後、若くしてブランド「writtenafterwards」を立ち上げた山縣良和さん。さらに、2008年には「ここのがっこう」を設立し、間口の広い学びの場をつくりました。山縣さんが描いてきたのは、生きるためのファッションであり、着飾ることと自然が延長線上にあるのが当たり前の未来。世の中のファッションという概念を超えた場所で、温度のあるクリエイションを続けている山縣さんが、人や社会、都市にもたらそうとしているものは——。そのヒントとなる現在国立新美術館で開催中(2021年9月6日まで)の『FASHION IN JAPAN 1945-2020 ―流行と社会』の展示のお話を起点に、今感じていること、未来のためにできることを伺いました。

後編はこちら

人間と自然を切り離さないファッションサイクルが必要。

 ファッションの世界は、1990年代から2010年代にかけて、ものすごいスピードで回転率が上がっていきました。グローバル化が進む中、大量生産、大量消費が当たり前になり、ファストに市場に届けていくという流れが顕著になっていった。結果、デザイン側も生産側も疲弊してきているというのが、近年の様相だと思います。

 それがコロナ禍によって、今までのサイクルでは回らなくなってしまった。同時に、これまでの流れを見直すきっかけになったという側面もあります。"人工的につくり出すファッションサイクル"だけでなく、"人間と自然を含めた上での装いのサイクル"を見直していく必要がある。今、世界的にそういう空気になっているのかなと感じます。

 現在、僕が参加している『FASHION IN JAPAN 1945-2020 流行と社会』のお話をいただいたのは、コロナ禍前でした。もともと「何か新しいものを見せられたらいいな」とぼんやりと考えてはいたのですが、コロナ禍を経て空気も変わった今、2021年に展示するものとして「次の一歩となるようなものを見せたい」という思いが強くなっていきました。

FASHION IN JAPAN 1945-2020 ―流行と社会

FASHION IN JAPAN 1945-2020 ―流行と社会

日本人が生み出した装いの文化や、その豊かな表現を生み出すきっかけとなった明治期以降の社会状況、流行といった現象を発端に日本のファッションを包括的に紹介する展覧会。戦中戦後の国民服やもんぺの時代から、国際的に華々しい活躍を見せた日本人デザイナーの作品、日本の若者から発信されたKawaii文化、サステナブルな近未来まで、世界に誇る日本のファッションを社会的背景とともに紐解く。2021年9月6日(月)まで、国立新美術館(企画展示室1E)にて開催。
https://6mirai.tokyo-midtown.com/event/fashion_in_japan/index.html

着飾ることと自然に還ることが繋がる、ポジティブな循環を。

 そんな矢先、展覧会のこけら落としとして開催された3月のイベントで、「FUMITO GANRYU」の丸龍さんとご一緒させてもらうことになったんです。国立新美術館内の空間を使って僕がインスタレーションを行い、同じ空間で「FUMITO GANRYU AW21 RUNWAY SHOW」を開催した「FUMITOGANRYU+Yoshikazu Yamagata(writtenafterwards)ショー」。その時に、和紙でつくった衣類と土をガラスケースに入れて展示したのですが、『FASHION IN JAPAN 1945-2020 流行と社会』でも、衣服が土に還っていく様子を見せ、新たな衣服とファッションの役割を考えるプロジェクト《合掌》を行っています。

FUMITOGANRYU+Yoshikazu Yamagata(writtenafterwards)ショー

FUMITOGANRYU+Yoshikazu Yamagata(writtenafterwards)ショー

『Rakuten Fashion Week TOKYO』の関連イベントとして、FUMITOGANRYUとwrittenafterwardsで国立新美術館初となる合同ファッションショーを開催。山縣さんのインスタレーションが空間を彩る中、FUMITO GANRYUの2021年秋冬コレクションのランウェイショーを行った。その様子はオンライン配信され、モデルが手に持ったカメラの映像を映し出すなど、革新的なクリエイションとなった。

合掌

《合掌》

土と衣服がガラスケースの中に収められ、菌によって繊維が分解されて朽ちていく様子、やがて土に還っていく自然の循環をインスタレーションとして表現。山縣さんいわく「美術館の特性上、紫外線を積極的に入れることが難しく、菌の発生を抑えなくてはならない場所なので、紫外線に当てながら微生物を活性化させることで朽ちていく様子を見せることができません。菌がいないガラスケースの中でどのような生態系がつくられるのか分からないですが、会期中に何かしら目に見える形で変化していくことを望んでいます」

 和紙の布は、昔から日本で着られているものですが、ここ最近はかなりアップデートされています。研究も進んでいて、和紙は土に還るスピードが非常に早く、堆肥的な効果も抜群に高くて、土を豊かにするということが分かってきたんです。近年ファッションの環境負荷に与える影響が大きな問題になっている中で、「着飾ること」と「自然に還ること」が繋がって、かつポジティブになることはないかなという思いで制作に取り組んでいます。この課題は非常に複雑なジレンマを抱えているので、方向性の答えは見えていませんし、答えがあるのかさえも分かりませんが手探りながらも進めようと思っています。

 僕の作品だけでなく、この展覧会は日本のファッション史において、大事な大きな一歩だと感じます。考えてみると、これまで日本の戦後以降のファッションの歴史を俯瞰できる展覧会ってあまりなかったように思います。いちデザイナーの生い立ちであったり、時代時代の流行を紹介することはありましたが、今回はデザイナーではない方々が残した衣服が紹介されていたり、衣服以外の写真や映像から紐解いていたりもして。あらためて、日本はいろんな角度からの装いが多く生まれた場所なんだと僕も再確認できました。世界的にも影響を与えた、日本のファッションがどう変化してきたのかを、包括的に知れるという点が、この展覧会においてすごく重要だなと思います。

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複雑化する社会で生きる人々を、ケアするファッション。

 展示されているような歴史を経て、現代のファッションはどう変化しているのか。ソーシャルネットワークによって自己承認欲求が可視化された部分もあって、ある種のファッション的なものがすごく加速しているのは感じますし、新しい楽しみ方が生まれているのも実感します。そういう意味では、広く捉えた定義でのファッションへの興味は、すごくエネルギーがある。ただ、衣服だけを取り出すと、相対的に熱量は下がっているのかもしれません。でも、それは単純にファッションが衣服だけの表現媒体ではなくなっていて、意識の比重が変わったということなのかなと思います。

 比重は変わろうとも、ファッションが自己表現や承認欲求的な部分に一番近いメディアではあることは、きっと変わらないと思うんですね。現代はパーソナルメディアを通じた表現の場が増えて自己が増幅し、様々な"私"が存在するようになっている。それによって社会構造が複雑化している中で、ファッションがそれぞれの環境に適応できるクリエイションやシステムをどうつくるか、というのは意識として大事だと思います。

 例えば、複雑化した自己に対しての心と身体のケアに、もう少しフォーカスできる部分があるはず。ファッションって自己と他者のように、他の世界と向き合う間の役割を持ったもの。そういう意味では、心の悩みとか対人関係の問題と向き合う時に、改善する方法の一つがそこに隠れているように思うんです。

 以前、自閉症の子どもたちと一緒にワークショップをやったことがあるんですよ。仮面をつくって別の自分になる、「変身ワークショップ」を行ったのですが、仮面をかぶった途端、ふだんとは違う子どもたちの性格や表情、言動が出てきたんです。そう考えると、衣服というのは一つ自己を切り替えるものになり得るもの。医療現場とかを含め、広く可能性を持っているんじゃないかなと感じます。

変身ワークショップ

変身ワークショップ

福岡県糸島市で行われたワークショップ。子どもたちが変身したいものを画用紙に描き、大人のサポートも行いながら実際に仮面や纏えるものを制作するというもの。

 ファッションは、人類が地球上に生まれてから、ずっと共にしているメディアであり、コミュニケーションツールです。ある種、人間の原点的な部分が垣間見られるものなので、表層的な部分も大事ですが、もっと本質的な部分での役割があるはずですし、それがこの先の未来もすごく大切になってくると思います。

身につけていた服が食べ物へ。発想の転換が未来を左右する?

 その一つとして、短期型の大量生産、大量消費を前提とした社会構造を見直すことが必要だと思います。ここ数十年の過剰な動きでもあるので、何かしら改善を図るアクションはしていかないといけないですよね。具体的な方法として、「少なく、長く着る」という一昔前では普通だった価値観の再考も大事だと思います。こういうことって気恥ずかしくなるくらい当たり前に言われてきた言葉になってしまいますが、物を大事にすること、長く使うことが素敵だという事を言っても、偽善だなんだと嘲笑されない社会の空気が底辺にもっとあれば、少しずつ価値観が変わっていく部分ってあると思うんですね。そういう方向づけをするのは、ファッション業界に関わっていく人たちの責任や役割の一つかなと思っています。

 あと、いまあるエネルギーをうまく変換すること。前に聞いて、面白いなと思った話があるんです。名前は忘れてしまったのですが......コンピューターの世界で、ユーザーがアダルトコンテンツを見たいがために、ボタンを押しまくるという現象を逆手に取って、実験的なことをした人がいるそうで。欲求のためにボタンを押しまくるエネルギーを使って、解読が難しかったパスワードを突破する力にする、みたいな。知らず知らずのうちに、ユーザーの欲望や承認欲求が、相反すると思われているものが助けになるってすごいことですよね。それこそ、発想の転換じゃないかと思います。

 それを衣服に置き換えると、自己承認欲求の一つとして着ていた衣服が、土に還すとキレイな花やおいしい野菜を育てる堆肥になる、お洒落をして街に出ると動物や植物が意図せず喜ぶ、自分の衣服は自分の細胞からつくられる、というような発想の転換なのかなと。古くから薬のことを「内服薬」、飲むことを「服薬」といいますよね。昔の人には、身体の外側に身につけるものと、内側に受け入れるものを繋げて考えていたと見える部分がある。その考え方を基にすると、外で着たものが、食べ物などに変換されて、最終的に自分の皮膚になるというような、自分の実感となるポジティブな循環システムがもう少しできるようになればと思います。

 僕が衣服を通じてこれからやりたいと思っているのは、まさにそういった発想の転換やエネルギーの変換。装うことの愛おしさを表現していくと同時に、先に話した心のケアや身体上のケア・キュアとしての機能の可能性を探っていくことが大事だなと思っています。

撮影場所: 国立新美術館『FASHION IN JAPAN 1945-2020 ―流行と社会』(開催中~2021年9月6日まで)

後編はこちら

山縣良和

山縣良和 / ファッションデザイナー / 教育者
山縣良和 / ファッションデザイナー / 教育者

1980年鳥取生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学デザイン学科ウィメンズウェアコースを卒業。2007年4月自身のブランド「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」を設立。2015年日本人として初めて LVMH Prizeノミネート。 デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「coconogacco」を主宰。2019年The Business of Fashion が主催するBOF 500に選出。

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