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INTERVIEW
126
藤本壮介建築家 Sou Fujimoto / Architect
Sou Fujimoto / Architect

『建築物、道、ランドスケープが溶け合う“間”をつくる』【前編】

世界の豊かさは、曖昧な空間でこそ見つかる。

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update_2021.03.24 photo_tada / text_akiko miyaura

混沌とした現代にあって、人々の生活に、そして世界の街に命を吹き込むような建築を生み出している藤本壮介さん。内と外、自然物と人工物といった一見、両極にあるものをグラデーションを描くように美しく溶け合わせて、同時にそれぞれを際立たせる場所をつくり出しています。今までにない建築物を手掛けながらも、藤本さんがつくっているのは、心地よい空気が流れる時間であり、誰かの人生が豊かになる場所であり、未来を変える力。建築を通して考える都市の在り方や、コロナ禍において感じたこと、これからの都市環境など、さまざまな視点をお話いただきました。

後編はこちら

どちらも切り捨てない建築。

 建築というのは、世界のあらゆる混沌を引き受けなければならない側面を持っていますが、同時にそこが面白さでもあると感じるんです。例えば、六本木のような、ある種ごちゃごちゃした場所が持つ魅力は、時間をかけてつくられるもの。そこに生まれる街の豊かさって、簡単につくれるものではないんですよね。一方、僕は北海道の自然溢れる田舎で育ってきたので、人工物だけでは何か物足りないというのもわかる。僕が育った家は雑木林のような場所にあるのですが、木々が雑然と茂っている中、どっちに行くでもなくウロウロとできるあの感じと、東京のヒューマンスケールのごちゃごちゃした商店街のような場所が、なんとなく似ているようにも思えるんです。

 ただ、自然の厳しさを肌感として理解している身からすると、東京は、人工物と自然が適度に溶け合って優しい場がつくられていると感じることがあるんですよ。東京って人間がいろんなものを小さくあしらって、自分たちの生存を脅かさないようにうまくアレンジすることで、街がかわいらしくできている気がするんです。一方で巨大な建築物の開発が進むと、そのヒューマンスケールの街が失われかねない。でも、巨大さだけが持つダイナミズムもあると考えると、何でもかんでも小さければいいということでもなくて。どちら"が"いいではなく、どちら"も"いい。だからこそ、自然物と人工物の片方を切り捨てるのではなく、小さなスケールと大きなダイナミズムのどちらかでもなく、両方の魅力をしっかり取り込みたいという思いが、建築における僕の出発点になっているのかもしれません。

House N

House N

2008年、大分に完成した藤本さん設計の住宅。箱で囲われ、建物の内外は入れ子構造のようになっており、壁のあちこちに光や風を通す大きな穴のような窓がある。
写真:IWAN BAAN

House NA

House NA

棚のように積層する薄い床と林立する細い柱を組み合わせ、独創的な空間の構成を生み出した住宅。室内は個室として区切らず、 緩やかに繋がっている。
写真:IWAN BAAN

さまざまな要素が溶け合い、"多様な場所"を生み出す。

 建築って、いい意味で曖昧な場所をつくることができるんですよね。簡単に言うと、中と外、開放的なものと守られているもの、繋がっているものと離れているもの......こうやって言葉にすると両極端ですが、それらの両者の間に広がる豊かさみたいなものがあるというか。もっといえば、そこには人間が生きていて、人が多く集まる場所もあれば、一人で静かに過ごす場所だってほしい。秩序だっているものと、秩序がないものの両方に魅力がありますし、シンプルなもののよさもあれば、複雑でカオスなもののよさもあります。僕は両者が融合することではじめて生まれる"場所の多様さ"のようなものをつくりたいと思っているんです。

 "多様さ"というのは、プロジェクトによっても違いがあります。例えば、場所ごとに積み重ねてきた気候風土や文化的背景も、その土地の過去の歴史や現代の姿も違う。建築をやっていると、ひとつとして同じ場所はないことを実感するんです。さらに関わる人によってプロジェクトの意味合いも変わる。そういったさまざまな要素が溶け合って、"多様=いろいろな場所"が生まれるんですよね。そこでは僕たちはいろいろな選択肢を持つことができる。とても豊かな場所になるのだと感じます。

 僕が実現したいのは、多様であると同時に人間にとって安心感があり、一方でどこか予測不可能な面がある場所。人工物はどちらかというと単調になりがちで、すべてが予測可能な方向へいくことが多い。逆に、自然は多様であり予測不可能。だからこそ、人工物と合わさることで、"ちょうどいい何か"が出来上がるんじゃないかと思うんです。ワクワクするようなポジティブな予測不可能性というのは、これからの都市のヒントになる気がします。

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この場所であればこれしかない。探り当てる感覚。

 僕が建築物を建てるとなった時、最初にするのはわりと普通のことなんです。プロジェクトや場所の背景をしっかりリサーチして、自分がその場に行った時の印象を大切にしつつ、そこで生きる人たちの話を聞く。考えてみると、話を聞いている時にアイデアが浮かんでくることが多いかもしれませんね。最初はとりとめのない話なんですけど、ひと言、ひと言によっていろんな形や情景が浮かび、だんだんと結び合わさっていく......というように。一見バラバラに思えるさまざまな印象が、少しずつ繋がって最後にひとつの形となり、空間として落ち着く。天才的な思いつきって本当に稀で(笑)、そうやって徐々に統合していくのが建築のプロセスなのかなと僕は思っています。ただ、ひとつの形になったとはいえ、それはまだ出発点くらいの感覚。それをもとに検証する中でアイデアが変化し、結実していく。最終的に「この場所であれば、これしかない」という説得力に繋がったときに、何かを探り当てたような感覚を得られるんです。

 自分の中で"探り当てた感覚"を得られたもののひとつは、南フランスのモンペリエの集合住宅《L'Arbre Blanc》。地中海のそばなのでとても天気がよくて、「冬でもお昼ごはんを外で食べちゃうような場所」というところから、高層マンションではあるけれど「できるだけ大きなバルコニーをつくってみよう」という思いつきがスタートなんです。方法は無限にあるので、さまざまなやり方を試す中で、他の要因も入りながら建築の形に結実していきました。《白井屋ホテル》も「大きな吹き抜けをつくったら面白そうだな」というところからはじまり、クライアントさんと時間をかけてやりとりする中で、どんどん豊かに育っていった感覚がありました。

L'Arbre Blanc

L'Arbre Blanc

2019年に藤本さんが、フランスの建築家の方々と協働して手がけた南フランスにある集合住宅。L'Arbre Blancはフランス語で「白い木」を表すが、まさに葉が樹木から広がるように配置され、屋外での時間を楽しめる大きなバルコニーに、室内と屋外が連続性を持ったリビングルーム、自然と住人たちの新たな関係性をもたらすようなパブリックスペースの取り入れ方など、これまでにない集合住宅の在り方を示した。
写真:IWAN BAAN

白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL

白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL

江戸時代から続いた300年余りの歴史に一度は幕を下ろした、群馬県・前橋にある白井屋旅館。2020年、同じ場所で「白井屋ホテル/SHIROIYA HOTEL」として新たな歴史をスタートさせた。藤本さんがリノベーションを手がけたこのホテルは、建物の真ん中に4階までの大きな吹き抜けを擁し、館内のあらゆる場所と部屋にさまざまなアート作品が飾られている。客室はすべて異なるデザインになっている。
写真:Katsumasa Tanaka

 「頑張って探り当てた」という意味では、《武蔵野美術大学 美術館・図書館》がそうですね。最初は"書物の森"のような図書館をつくりたいと思ったものの、なかなか答えにたどり着けず......。空間をさまよい歩いて、いろんな場所、いろんな書物と出会ううちに、「機械的に本を見つけやすい場所というのではなく、散策して歩けるような場所をつくろう」という考えに至ったんです。とはいえ、しっかりと機能的に本を見つけやすいルートは確保し、同時に散策するワクワク感や、予測不可能性を両立させています。最終的には渦巻き状の本棚を置いた、迷路のような空間になっていきました。美大の図書館だったこともあって、様々なインスピレーションを得られて、その場で床に座って本を読みはじめてもいいような、森のような場所になったと思います。

武蔵野美術大学 美術館・図書館

武蔵野美術大学 美術館・図書館

森に迷いこんだような不思議な空気を持つ、美術館・図書館。その内側には、地上2階分もあるという大きな書棚がらせん状に渦を巻く。散策するような感覚をもたらす空間と同時に本来の目的を果たす図書の検索性も併せ持った、唯一無二の芸術的建築物。
写真:DAICI ANO

ポジティブに楽しみ、誠実につくっていく。

 僕が大切にしているのは、何をつくりたいか、ではなく、その場所がどうなってほしいか、に耳を澄まし、どうなっていくんだろう、と見守る感覚。思い通りにつくることとはまったく違い、ある種の感触は持ちながらも、先が読めないものをつくっている感じなんです。農作物を育てることに近いのかな。場所や気候によっても、関わる人や手の加え方によっても農作物の出来って変わるじゃないですか。とはいえ、農作物なら「にんじんをつくっている」と分かるけれど、僕らの場合は何を育てているか分からない状態(笑)。「この場所ならではの何かが実ってほしいよな」と願いながら、土の匂いや風向きといった豊富にある手がかりを探っているんだと思います。

 建築に関しては、これまでも今もずっと試行錯誤。特に若いうちは何もわかっていなかったので、自分が考えたようにはいかなかったことも多々あります。もちろん、すべてを全力でやって自分なりに結果を残してきたつもりではいますが、ある意味、流されながらも幸いにして素晴らしいクライアントさんや、素晴らしいプロジェクトに恵まれてきた。それにどんなプロジェクトを依頼されるかは予測できないので、都度、新しいプロジェクトや土地に出会うたび、面白がりながらはじめるということが大切なのかな、と。「ここから、どんな冒険がはじまるんだろう」とポジティブに状況を楽しんで、誠実につくっていきたいということは常に考えています。

後編はこちら

藤本壮介

藤本壮介 / 建築家
藤本壮介 / 建築家

1971年北海道生まれ。

東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では、2019年、津田塾大学小平キャンパスマスタープラン策定業務のマスターアーキテクトに選定、2020年、2025 日本国際博覧会の協会事務局会場デザインプロデューサーに就任。2021年には大分空港海上アクセス旅客ターミナル建設工事基本・実施設計業務 最優秀者に選定される。

主な作品に、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013(2013年)、House NA(2011年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館(2010年)、House N(2008年)等がある。

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