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INTERVIEW
125
岩崎貴宏美術家 Takahiro Iwasaki / Artist
Takahiro Iwasaki / Artist

『都市を表象する“日用品”のありかを探る』【後編】

土地に根付くアートから、マクロな都市空間が見えてくる。

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  • NO125 岩崎貴宏 『都市を表象する“日用品”のありかを探る』【後編】
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update_2021.03.03 text_ikuko hyodo

歯ブラシ、タオル、ダクトテープ、文庫本の栞、シャーペンの芯など、身の回りにある日用品を使って俯瞰的な都市の風景を生み出す、美術家の岩崎貴宏さん。一見雑然と重ねられたタオルの山の上に鉄塔が建っていたり、ビルのように林立する本から繊細なクレーンが空に向かって伸びていたり。虫の眼と鳥の眼のような異なるスケールで、物事の本質と全体像を捉えて提示することで、私たちの視点を揺さぶります。そんな岩崎さんの眼に、東京や生まれ育った広島はどう映っているのでしょう。そしてコロナを経た先に、どんな都市の風景を思い描いているのか、お聞きしました。

前編はこちら

東京はビルボードでアイデンティティが変わる。

 東京とエディンバラを比べると、エディンバラは広告や看板を出してはいけないところがほとんど。いつ行っても街並みが変わらないので、人によっては退屈なイメージを抱いてしまうと思うんですけど。一方、東京はものすごい数のビルボードがあって、それらが変わることによって、街の風景や印象が大きく変わるんですよね。このあいだ渋谷に行ったら、FOREVER21だと思っていたところにIKEAのデカい看板が出ていて、それだけで渋谷の街が違って見えました。そもそも僕が高校生の時は、同じ場所にHMVがあって、すごく尖った街だと思っていたのに、いつの間にか家具の街になっているのが不思議だなあと思って(笑)。グラフィカルなインターフェイスが変わることで、街の印象だけでなくアイデンティティも変わりうる、いい例だと思います。

 六本木の街の印象は、美術館やギャラリーが集まっている場所。他には、個人的に青山ブックセンターがなくなってしまったことが悲しい。広島には洋書やアート本などを扱うような書店が少ないので、東京に行ったら本屋を覗く行為が自分としては結構重要だったんです。青山ブックセンターに行きたいがために、わざわざ六本木に行くこともあったので、そういった場所は僕にとっての六本木の魅力のひとつでした。

今はみんなが知恵を使う時。

 コロナ禍を経て街や人がどう変容するのかという問いに関しては、僕は社会学者ではないので、具体的にはわかりません。ウイルス自体も変異しているし、政治は常に流動的だから、自然に、なるようになっていくのだと思っています。ただ、今だからこそ推し進めてほしいのは、一極集中を分散させること。東京にいる才能豊かな人たちを、もっと地方に送り返してほしい。東京で学んだ人たちが広島にたくさん来てほしいし、山口や岡山、鳥取、島根にも来てほしいんです。この先、VRとか仮想現実を含めたリモートはますます盛んになっていくはず。だからこそ才能のある人たちが、場所を選ばず東京の外に出られるタイミングでもあると思うので、その流れを押し進めるような政策を打ってほしい。そうすれば展覧会だって東京に集中する必要がなくなるし、行きたい展覧会が各地に分散したら面白くなるんじゃないですかね。

 広島もそうですが、今は外から人が入ってこないよう要請している地域が多いですよね。とりあえずコロナ禍が収束するまでは、広島は広島内で、岩手は岩手内で楽しむ文化を各地域が育む時期なのかもしれない。そして海外から人が自由に来られるようになった頃には、魅力が地方に分散されて、日本全体の魅力も増していればいい。アーティストはどこにでもいるし、魅力的だったらその土地へ移り住むようなフットワークの軽さがあるから、コーディネーターやキュレーター、ギャラリストのような、アートのインフラを支えているような人たちが、地方に分散していけると面白いと思うんです。面白いキュレーターがいれば、若いアーティスト内ですぐに噂になっちゃうだろうから(笑)。そういう人たちはおそらく、アーティスト以外にもさまざまなネットワークを地方に連れて行くこともできるはず。東京のネットワークを地方に持っていくような動きが重要なのだと思います。

ART BASE 百島

ART BASE 百島

広島県尾道市の離島、百島の旧校舎を活用し、2012年に開館したアートセンター。現代美術作家の柳幸典氏がディレクターを務め、地域再生を目指した展覧会、ワークショップ等を実施。施設内には、岩崎さんの作品《アウト・オブ・ディスオーダー(万物流転)》も常設展示されている。他にも広島では、港湾倉庫や空き家等を利用した施設、プロジェクトが複数立ち上がっている。

 昨年から今年にかけて、渋谷スクランブルスクエアのSHIBUYA SKYで個展「FOCAL DISTANCE | 焦点距離」をしたのですが、搬入を終えた早朝、人のいない展望台から、富士山が見えました。まさか渋谷のど真ん中からこんなにクリアに富士山が見えると思わなかったので、衝撃的な光景で。コロナ禍で人の行き来がなくなって、インドでは大気汚染が改善されてヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見えたとか、ガンジス川がきれいになったという話もあります。渋谷から見えた富士山がコロナの影響かどうかわかりませんが、今まで当たり前だったこと、こういうもんだと思っていたことを変換できるタイミングにいる気がします。だからコロナが収束したら大量のエネルギーを使っていた元の形に戻るのではなく、新しい形態に行くことが大切というか。これまでの資本主義を新しい形に持っていくタイミングだと思うので、そのためにもみんなが知恵を使わないといけない時がきていると思います。

FOCAL DISTANCE | 焦点距離

FOCAL DISTANCE | 焦点距離

渋谷スクランブルスクエアに開業した展望施設「SHIBUYA SKY」の1周年を記念して、46階のSKY GALLERYで2020年11月1日~2021年1月17日に開催された個展。「視点を拡げる」というテーマのもと、岩崎さんがSHIBUYA SKYの体験からインスピレーションを受けて制作した作品を主軸に展開。
テクトニック・モデル
2020
撮影:三嶋一路
©Takahiro Iwasaki, Courtesy of ANOMALY

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コロナ禍で内向きなアートにも光が当たる!?

 今、あらためて昨今のアートシーンを振り返ってみると、最先端のアートってインタラクティブというか、参加型だったり大型なプロジェクト型だったりと、外に開く力やいわゆるコミュ力が試されるようなものが多いですよね。一方で僕は一人でちまちまつくっているせいか、ワークショップみたいなものが苦手なんです。以前、自分がつくる手法を用いて、ワークショップでみんなにも何かをつくってもらおうと思ったら、「こんなの、一般の人ができるわけがない!」と言われてしまって。昔ながらの職人気質があるので、様々な人を巻き込んで作品が生まれるような、コミュ力の高いアーティストが羨ましかったりします。

 一方で、このコロナ禍を通じてこれから何か変化が生まれるとしたら、僕みたいにスタジオに篭って孤独に制作している人たちの作品も、再び見直されるかもしれない、という予感もあります。美大で学んでいる学生の中には、インタラクティブなことが本当は苦手だけど、そういうことをやらなければいけないと考えている人も、おそらくいると思うんですよ。だけど図らずともコロナでこんな自宅待機状態になり、みんなが同じ環境で授業をするのではなく、オンラインを介して家で細々とやるからこそ、あらためて身の回りから思いつくアイデアが出てくるはず。そういったことに脚光が当たるようになるのも、それはそれで新しいのかなと感じています。

 なので、疎外的な環境から孤独感を持った作品が生まれてくるだろうというイメージが僕の中にあって、それはそれで楽しみです。アーティストがやるべきことは、とにかく作品をつくり続けること。インタラクティブなことをやっていた人たちも、ネットやVRなどを駆使してより複雑に人とつながる表現方法を探求していくでしょうね。今後は作品自体の多様性が、また少し違う意味合いで広がってくるのではないかと期待しています。

六本木の街に"眠っている"アートを拝見。

 普段はその土地や歴史に応じて作品を制作しているのですが、そういった制作以外で街を眺めてみて、気になっていることがひとつあります。自分の作品を買ってもらった"その後"をあまり知らないんですよね。歯ブラシの作品を「トイレに飾ってます」という人から、iPhoneで撮った写真を見せてもらったり、個人で展示スペースをつくっている人にプライベートで招待してもらったくらいかな。コレクターたちの手に渡った作品がどんなふうに飾られていたり、保管されていたりするのか知ることができたら、もっと面白いだろうなと思って。

歯ブラシの作品

歯ブラシの作品

「アウト・オブ・ディスオーダー」シリーズのひとつ《bush》。歯ブラシのブラシ部分から繊細な鉄塔が立ち上がる。
アウト・オブ・ディスオーダー(薮)
2015
撮影:村田冬美
©Takahiro Iwasaki, Courtesy of ANOMALY

 六本木にはアートコレクターの方がたくさんいると思うので、どんな作品を買って、どんなふうに飾っているのか、オフィスやお宅を拝見するツアーをしてみたい。というのもニューヨークで以前、1年に1回くらい開催しているコレクターのお宅拝見的なイベントに参加させてもらって、発見が多かったんです。たとえば美術館で絵を見ても、巨大な空間でいまいちものとしてのリアリティが湧かなかったけど、オフィスや家の壁にちょこっとかけてあったりすると、すごくかっこよくて、買えるんだ、自分もこの作品がほしいなと思ったりするんですよね。

 僕は作品をつくる側の人なので、コレクションする感覚がわからなかったんですけど、つくるだけではなく飾って日常にハリを与えるのっていいなとその時はじめて思いました(笑)。地方でやっても面白いと思うんです。床の間が私設ギャラリーみたいなものだと考えると、日本人はもともと家の中にギャラリーを持っていたわけだから。六本木の街にどんなアートが眠って独り占めされているのか。珍品でもいいから、垂涎の逸品を見てみたい。今のIT関係の人は、どんなものを買ってどう楽しんでるんだろうなあ。

取材を終えて......
コロナ以前、東京の人口流入は全国で最大でしたが、今、その流れが変わろうとしています。広島を拠点に活動する岩崎さんには、東京で暮らし、東京を活動の場にする人とは違う、都市の姿がおそらく見えているのでしょう。私たちが当たり前と思って見過ごしがちな現実を、対象との距離や、スケールを変えて可視化することで、新鮮な驚きを与えてくれる岩崎さんの視点。立ち止まらざるを得ないこんな時こそ知恵を使い、新しい未来を築くことができる。スクラップ&ビルドの絶好のタイミングなのだと教えてもらいました。(text_ikuko hyodo)

前編はこちら

※画像はオンラインインタビューで撮影した画像を使用しています。

岩崎貴宏

岩崎貴宏 / 美術家
岩崎貴宏 / 美術家

1975年広島県生まれ。広島県在住。

岩崎貴宏は、歯ブラシ、タオル、文庫本の栞、ダクトテープなど身の回りの物で、繊細で儚い風景を作り出し、見慣れた日用品を別のイメージに転化することで、固定化された私たちの視点を揺さぶる。床に雑然と積み上げられたタオルに鉄塔が建つ様は、山奥の送電線を支える鉄塔を想起させ、林立する文庫本の栞にクレーンが建っている様は、まるで建設中のビル群を見ているようだ。また、岩崎は、歴史的な建築物の地上の実像と水面に反射する虚像を一体化させた様を、ヒノキの木片で精巧に再現する「リフレクション・モデル」シリーズも制作している。これら作品が生まれた背景には、岩崎が生まれ育ち、現在も拠点にしている広島という都市が、原子爆弾によって一瞬にして壊滅し、戦後復興期に軍事都市から平和都市へと180度転換した史実からの影響が見て取れ、岩崎自身の時間への意識を感じさせます。2017年には、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表に選出され、個展「逆さにすれば、森」(2017年) が開催された。その他、近年の主な個展として、2015年に、「岩崎貴宏展 埃 (10-10) と刹那 (10-18)」(小山市立車屋美術館)、「岩崎貴宏展 山も積もればチリとなる」(黒部市美術館)、ニューヨークのアジアソサエティで個展「In Focus」が開催された。

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