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INTERVIEW
118
中里唯馬ファッションデザイナー Yuima Nakazato / Fashion Designer
Yuima Nakazato / Fashion Designer

『都市開発とあわせて衣服の循環システムを構築する』【前編】

ファッションデザイナーも街づくりの一員に。

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update_2020.07.08 photo_yoshikuni nakagawa / text_ikuko hyodo

パリ・オートクチュールコレクションで活躍する、唯一の日本人ファッションデザイナー、中里唯馬さん。世界的アーティストの衣装デザインを手がけた経験などを通して、一点物の衣服をより多くの人に届ける方法を模索しています。活動の原点にある思いや、服づくりにユニークなテクノロジーを積極的に用いる理由、近年のファッション業界の大きな潮流といえる「サステナビリティ」をどう捉えているのか、そして未来の都市と衣服のあり方についてお聞きしました。服と人、着る人とつくる人の理想的な関係を追求し続ける、ファッションデザイナーの哲学が見えてきます。

後編はこちら

"自分のための服"を多くの人が着られる世の中に。

 私はベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーでファッションを勉強して、その後、東京に戻り、デザイナーとして活動を始めました。初期の頃、あるミュージシャン(ブラック・アイド・ピーズのボーカル、 ファーギー等)の衣装をオーダーメイドでつくらせていただいた体験が、服づくりの原点になっています。ロサンゼルスに住んでいる方でお会いしたことはなかったのですが、似合うであろう服を想像しながらつくり、フィッティングの時に初めてお会いして着ていただきました。結果、とても気に入ってくださり、その後も同じ服を何回も発注していただいたんです。その一連のやり取りを通して、着る人のことを考えてつくる面白さに出会いました。サイズがぴったり合うということだけではなく、着る人のバックグラウンドや性格、どんなライフスタイルなのかまで想像してデザインをして、喜んでいただけた。そのプロセスが服のあり方として理想的で、多くの人がこういう服を着られるような世界になったらとても豊かだ、と思うようになったんです。

 一方で世の中の多くの人が着ている服は、今のところその対極にあって、不特定多数に向けて大量につくられた服のほうが一般的といえます。サイズや着心地だけではなく、あらゆる意味でその人に合った服を着ること自体がかなり特殊で、世界でも限られた人だけの体験になっているわけです。これをより多くの人に届けるためには何をすべきなのか、という思いが私の原動力だったりします。

 「手づくりの服」という意味では、お母さんが子どもにつくる服も一種のオーダーメイドですし、街の商店街にあるようなテーラー屋さんにスーツを仕立ててもらうのもオーダーメイドなので、昔から存在するプリミティブな手法ともいえます。デザイナーというつくり手と着る側が、近い距離感で服を生むような流れは、今は特殊なことに捉えられがちですが、そもそもファッションの原点にあるものです。それを新しい発想やテクノロジーなどと組み合わせることによって、多くの人がより豊かな服を受け取ることのできる世の中になっていくかもしれない。テクノロジーとひとことで言っても、最先端の技術もあれば、太古から受け継がれている技術もあります。こうしたヴィジョンを実現するために、ありとあらゆるテクノロジーを組み合わせていきたいという思いで、古今東西のテクノロジーをリサーチして情報を集めています。

着物とテーラーリングの技術を組み合わせた、未来の服。

 ファッションの中だけでソリューションを探していこうとすると、視野が狭くなってしまうので、異業種の人とのコミュニケーションを大切にしています。最近特に注目しているのが、スパイバー社が開発している人工タンパク質によってつくられた、ブリュード・プロテインというマテリアル。この生地は自由に収縮をコントロールできるのが大きな特徴で、服に生かしたいと考えています。というのも、布は基本的に長方形であるのに対して、体は3次元の曲線なので、カーブを描いて裁断しないと体にフィットしませんよね。しかし長方形の布からカーブを切り出すと、必然的に無駄が出てしまいます。

ブリュード・プロテイン

ブリュード・プロテイン(BREWED PROTEIN)

山形県鶴岡市に本社を置くバイオベンチャー企業、スパイバーが研究開発している人工タンパク質素材。石油を使う合成繊維と異なり、微生物の発酵プロセスを用いてタンパク質を生成。サステナブルな素材として、アパレル分野を中心に大きな注目を集めている。中里さんは、「YUIMA NAKAZATO」2019-20年秋冬コレクションにてスパイバー、ザ・ユージーン・スタジオとコラボレーションし、作品を制作。全ルックでブリュード・プロテインが使用された。
写真:SHOJI FUJII

 一方で着物は、長方形の生地をそのまま使って体に合わせているので無駄が出ませんが、体からは離れた形になっています。カーブで体のラインに沿わせるのは、ヨーロッパのテーラーリングの技術ですが、ブリュード・プロテインの生地が動く性質を利用することによって、着物とテーラーリングの技術を組み合わせたようなアイデアが実現できるのではないかと思っています。現段階では、プログラミングによって生地の動き方を自由にコントロールできるようになっていて、その技術を使ってパリでコレクションを発表しています。今後はこの技術をさらに進化させてスケール化させて、より多くの人に届けることが目標です。

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つくり手と着る人の距離を近づけることが、サステナビリティにつながる。

 ファッションでもここ最近、サステナビリティの流れが大きく加速しています。新型コロナウイルスの影響で多くの人が困難な状況に陥り、人生にとって本当に大切なものを立ち止まって考える時間ができた。そのことで、サステナビリティの必要性についてより深く考えるようになったのではないかと思っています。ただ、言葉やイメージだけが先行する場合もあって、サステナビリティは向き合うほどに奥が深く、難しいんですよね。そう簡単には答えを出せないのですが、その時にポイントとなってくるのは、想像することの大切さです。服はそもそもどこからやってきて、どこへ行くのか。店頭に並んでいる服を買って、着て、古くなったら破棄するという流れの中では、その前後がどうなっているのか、イメージしづらい。しかし実際は、その川上にも生地の生産や加工、縫製などいろんなステップがあって、場合によっては国や地域を越えてこうしたステップを経ていることもある。服を破棄した後も同様です。サステナビリティの概念を通して、着る側の人たちもそういったプロセスに意識を向け始めているのは、とてもいい潮流だと思います。

 もちろん、ファッションデザイナーの視点から考えることもとても大事で、単純にサステナブルな素材を選んだからOKということにはなりません。世界中にサステナビリティを意識したマテリアルはたくさんあるので、どれをチョイスするか見極める力がより求められるでしょう。さらにそのうえで、パターンを裁断する時に無駄が出ないか、加工方法が工賃と見合っているのかなど、生産プロセスを見直すことも大切。もっと言うと、デザイナーがどんなにいい素材を選んで、生産体制を整えて服をつくったとしても、その思いが消費者に伝わらず、短期間で破棄されてしまったら意味がなくなってしまいます。

 服を大切に長く使ってもらいたい。たとえ繊細なつくりな服だとしても、大切に着ようとか、お直ししてでも長く着たい、と思ってもらえるものをつくりたい。そんな服をどうしたらつくることができるのか。その答えは、つくり手であるデザイナーと着る人の距離を近づけることではないでしょうか。一方的にこちらの思いやストーリーを伝えるだけではなく、着る側からも服をつくった人の顔が見えてくるような、双方向の関係性を築いていく。そんな着る人とのコミュニケーションが、デザイナーに求められているのだと思います。

先人たちのフィロソフィーを抽出して、未来へつなげていく。

 着物は世代を超えて長く着続けていくものですが、よくできているなと思うのは、とてもシンプルな構造で、少しのお直しでいろんな体型に合うところ。サイズの概念がほぼないので、誰でも着られて、逆に言えば誰にも合わないようになっている。この発想が非常に未来的だと思います。サイズの概念がないことによって、誰でも着ることができるユニバーサルな構造になっているわけです。とはいえ今のライフスタイルだと、毎日着るのは難しかったりもするので、着物のフィロソフィーを受け継いだ新しい服のあり方を常に模索しています。

 未来のことを考えようとすると最先端の技術に意識がいきがちですが、先人たちが編み出したアイデアはとてつもなくエポックメイキングだったりするので、過去にもヒントはたくさんあります。そのまま取り入れられないとしても、フィロソフィーを抽出して現代のライフスタイルに合ったデザインにすることはできるはず。過去と現在と未来をつなげていくのも、デザイナーの仕事だと思っています。

後編はこちら

(撮影協力:21_21 DESIGN SIGHT)

中里唯馬

中里唯馬 / ファッションデザイナー
中里唯馬 / ファッションデザイナー

ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーを日本人最年少で卒業し、欧州最大の学生コンテストのインターナショナル・タレント・サポート(ITS)で2年連続受賞。2009年に自身のファッションレーベル「YUIMA NAKA-ZATO」を設立。2016年7月、日本人として史上2人目、森英恵氏以来12年ぶりとなるパリ・オートクチュール・ファッションウィーク公式ゲストデザイナーのひとりに選ばれ、コレクションを発表。その後も継続的にパリでコレクションを発表し、テクノロジーとクラフトマンシップを融合させたものづくりを提案している。

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