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INTERVIEW
116
三澤 遥デザイナー Haruka Misawa / Designer
Haruka Misawa / Designer

『新しい見せ方のアイデアを開発する』【後編】

「新型コロナウイルス」との日常を見つめることで生まれるデザイン。

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update_2020.05.13 text_tami okano

2019年度の毎日デザイン賞を受賞し、今後の活躍に、より一層の期待が集まるデザイナー、三澤遥さん。これまでの活動で行なってきた「現象から引き出すデザイン」は、身近にある物事の新たな捉え方や楽しみ方を提示し、その先の可能性を切り開いていく試みでもあります。今回のインタビューが行われたのは、新型コロナウイルスをめぐる緊急事態宣言後の4月半ば。オンラインのビデオ会議システムを使って行われました。今までの当たり前がままならない今、コロナ発生以後の「未来」に対してできることは何か。三澤さんの率直で真摯な言葉から、「その先」へのヒントを探ります。

前編はこちら

「新しい日常」を観察する。

 新型コロナウイルスのことで、きっとみなさんがそうであるように、私自身も、日常はガラリと変わりました。このインタビューは「Zoom」を使ったリモートインタビューですが、これまで、オンライン会議なんて無理って思っていたけれど、やってみたらできた、とか、小さな発見の数々もありました。

 今まで非日常だったものが、日常化しはじめたことはたくさんあって、それは望んだことではなかったとしても、「新しい日常」、ではある。そして、デザインは日常とは切り離せないものなので、日常になったオンライン会議にも、新しいデザインのヒントはあるはずだし、人と直接は会えない、という制約も、制約があってこそ生まれる新しいデザインの考え方の基になるはず。だから、今は普段できない体験をちゃんとしておこう。新しい日常をちゃんと観察しておこうって、思っています。

 新しい日常の個人的な経験をもう少し話すと、もう本当に、すごい小さな話になってしまいますが、今まではご飯を家で食べることがあまりなかったので、料理をつくっている人を近くで見る面白さとか、できたてのご飯の美味しさとかも、私にとっては新鮮です(笑)。あと、家に水槽があるんですけど、忙しいときは水槽が藻で緑色で......、《waterscape》という作品をつくっておきながら、どこがスケープだ! って反省をする日々だったのが、今回のことで家にいる時間が増えたので、水槽も大掃除、じっくり鑑賞をしています。他にも、鉢植えを育てるのは苦手で、今まで家に買ってきたことはほとんどなかったんですけど、この機会に植物を育てることにも挑戦してみているところです。

waterscape

waterscape

水棲生物の生態環境をゼロから捉え直し、新たな水中景観の可能性を探るプロジェクト。水棲生物の生態に寄り添った視点から導き出されたデザインの水槽は、3Dプリンター、型抜き、吹きガラスなどを用いて作成。生き物にとって心地よい環境が、ミニマルなデザインによって繊細に表現されている。
写真:林 雅之

小さな気付きから生まれるデザイン。

 今は、自分にとってもみなさんにとっても、同じものをじっと見る、かつてない機会なんじゃないかと思うんです。先日、自宅でのキノコ栽培が流行っているってニュースで知ったときも思ったんですけど、何かとストレスが多い毎日を送っている中、家で何かをじっと見る習慣を身につけておくと、身近な幸せに気付けたりする。そういう小さな気付きから生まれるデザインや仕事も、これからより増えると思います。

 コロナがとても大きな問題として私たちの暮らしの中にやってきて、私はデザイナーなので、デザイナーなりに「役に立ちたい」という気持は、もちろんあります。あるんですけど、それが今すぐ、「リアルタイムに役にたつ何か」をつくることなのかは、個人的に、当初から葛藤がありました。私には医学的な専門知識もないし、専門家の中でも意見が分かれているような繊細な問題に対して、簡単にアプローチをすることはできない。マスクひとつつくるにしても、私がつくったデザインのマスクで命に関わるようなことになっても、責任はとれないし、注意喚起のメッセージをビジュアライズするにしても、情報が時々刻々と変化する中、間違ったものが伝わり、残り続けてしまう恐さもある。そういうことを徹底的に検証してやれる人もいるけれど、残念ながら、私はそういうタイプではない......。

 ではいったい、どんな形で役に立てるのか。時代は大きく変わるはずなので、「新しい見せ方のアイデア」であったり、新しい日常への気付きであったり、コロナ後の時代に対しての準備を進めることで役に立ちたいと思っています。

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今までの当たり前は、当たり前ではない。

 冒頭で話した、この6年間のプロフィールのイラストを描きながらつくづく思ったのは、今まで「当たり前」だった日常は、私が思っていたよりも、案外素晴らしいものだったんじゃないか、ということ。リモートワークで離れているスタッフに会えると嬉しいし、特に人と会うということについては、今、ちょっとしたことでも喜びに満ちているのを感じます。

 ものづくりは「人の脳みそを借りろ」というのは、以前、上司でもあるデザイナーの原研哉さんに言われた言葉なのですが、それは、自分だけで考えるのではなく、人からの反応を見ながら自分のアイデアを固めていったり、人に意見をぶつけて方向性を変えていったりする、ということ。自分の頭の中だけでできあがるデザインなんて、ないんですよね。スタッフと横に並んで会話をしながら、とか、一緒に手を動かしながら考えていく中で見えてくることこそが貴重で、そういう時には、横にいる人の客観性も織り交ざって物ができている。その人がその日、犬を見たか見ないかでもアイデアは変わってくるし、いろんな人の日常が網目状につながった中にデザインがある。そういうものづくりも、今までだったら当たり前だったので意識して考えていなかったけど、改めて客観的にその価値を捉え直すことができた。当たり前は当たり前じゃない。そのことに、気づけたっていうのは、前向きな兆しでもある。

 今までの当たり前の中には、変わらぬ価値と変えていくべき問題が混在しています。今回のコロナをめぐる変化を50年後、100年後に振り返って見たとき、今がどういう位置づけになるのか分かりませんが、次の世界に何を求め、どういうことを目標にしていくのか。その先で何をつくっていくのか。それを歴史の中で試されていくんだと思います。そしてそれを見極める機会が今なのかもしれません。

変わりながら続けていく。

 2018年に、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで「続々」展をやらせていただいたとき、原研哉さんに展覧会についての寄稿文をお願いしました。文章を書いていただくにあたり、原さんに「いつか私が立ち止まったり、デザイナーをやめたくなったときに読み返せるものにしてください」ってお願いをしたんですけど、今回、コロナのことがあり、今までを振り返る中でその時の言葉も思い出しました。

続々 三澤 遥

続々 三澤 遥

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)にて2018年に開催された三澤さんの個展。三澤デザイン研究室が過去5年間で発表してきた作品を振り返りながら、「続々と変化させていく」意思を示し、未来への可能性を模索。《waterscape》、《動紙》、《UENO PLANET》をはじめ11のプロジェクトが展示され、三澤さんの持ち味である、身近な物事の新たな捉え方や楽しみ方を存分に感じられる展覧会となった。
写真:加藤純平

 内容は極めて個人的なことで、三澤は一輪車に乗れるとか、糸ノコが使えるとか、そういうことが中心なんですけど......、「続々」という展覧会名に呼応するかのような、ものづくりの意欲を持ち続けることへのエールを書いてくださいました。尊敬するグラフィックデザイナーの永井一正先生にも、壊しながら続けていけ、って言われたんですよね。自分の固定概念を壊して、いい意味で周りを裏切りながら、続けて行くんだよ、と。そういう、いろんな人の言葉を思い出しながら、今、やっています。

 今年、2020年の春の出来事には、毎日デザイン賞をいただいたことがあって、それは私の人生の大事件。いただいた評価や期待を超えるようなものをつくっていくために、今後、自分が何をしていきたいかを冷静に考えるきっかけにもなりました。加えて、今回のコロナで強制的に考える時間を得たことを決して無駄にせず、変わる世界と、変わらない普遍的な美しさと、いろんなものを注意深く観察しながら、デザインの挑戦を続けていきたいと思います。

取材を終えて......
インタビューの冒頭にもあるように、今回の取材はオンラインのビデオ会議システムを使って行われました。誰もが新型コロナウイルスの1日も早い収束を願っているのはもちろん、さまざまな制約のある日常をいかに乗り越えていくかに心を砕いています。そんな中、「この先の未来」について考えるのは、とても難しい......。でも、オンラインで1時間半にも渡ったインタビューには、三澤さんの冷静な観察力と前向きさが溢れ、励まされる言葉にもたくさん出会うことができました。画面越しの笑顔もとにかくキュートな三澤さん。次の機会には、直接お会いしてお話しをお聞きできますように。(text_tami okano)

前編はこちら

  

※画像はオンラインインタビューで撮影したスクリーンショットを使用しています。

三澤遥

三澤遥 / デザイナー
三澤遥 / デザイナー

1982年群馬県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、デザインオフィスnendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所に所属。2014年より三澤デザイン研究室として活動開始。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を視覚化する試みを、実験的なアプローチによって続けている。
主な仕事に、水中環境をあらたな風景に再構築した「waterscape」、飛行する紙のかたちを研究する「散華プロジェクト」、takeo paper show 2018「precision」への出品作「動紙」、上野動物園の知られざる魅力をビジュアル化した「UENO PLANET」、「虫展 −デザインのお手本」への出品作「視点の採集」がある。著書に『waterscape』(出版:X-Knowledge)。

http://misawa.ndc.co.jp/

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