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INTERVIEW
108
養老孟司解剖学者 TAKESHI YORO / Anatomist
TAKESHI YORO / Anatomist

『わからない“自然”を排除せず、よく見る』【後編】

感覚と外界の接点にあるアートが、引きこもり型の脳を刺激する。

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update_2019.09.04 photo_tada / text_tami okano

解剖学者であり、無類の虫好きでも知られる養老孟司さん。21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『虫展 -デザインのお手本-』では、企画監修を務め、虫を見ることの面白さ、見ることからはじまる私たちの思考と行動の可能性を問いかけます。養老さんはなぜ虫が好きなのか。虫から学ぶべきことは何なのか。そして、人々が集う都市の魅力は? 六本木のこれからは? 日本が誇る知の先達が、語ります。

前編はこちら

これからは、花蝶風月。人間ばっかり威張るな。

 日本には古くから、自然の風物を題材にした歌や絵巻がつくられてきましたが、身近な存在である虫はもっと使われてもいいと思っています。花鳥風月というくらいで、花に鳥......なのですが、虫を入れてもいいと思っているんです。昔はハエが多くて困るとか、暮らしの中で虫は風流ではなかったんだろうけど、そろそろ花鳥の鳥を、チョウチョの蝶にして「花蝶風月」でもいいのではないでしょうか(笑)。

 「形」という意味でも、虫は相当に面白いんです。たとえば、機械は人間が緻密な設計を重ねて、ハンドルをどうするとか、角をどうつくるかとか、つまりデザインをしてつくるわけです。だけど、虫は、それを自らつくっています。理屈で言うと、虫がつくっている形は遺伝子がつくっていて、人がつくっている形は、脳がつくっている。ここで、その脳は遺伝子がつくっているという話はめんどくさいことになるからから置いておきます。で、それぞれが、結果として、驚くほど同じものをつくる。

 三葉虫のレンズっていうのが、化石でたまに出るんだけど、断面を見ると非常に優れた複眼で、胃の調査で使うレンズのそれと同じです。しかも、三葉虫は何億年も前にそれをつくっている。ウンカの歯車もそうで、ウンカ類の幼虫がジャンプをするために脚と脚の間につくる構造は、機械の歯車とまったく同じです。人間のほうは「自分で思いついた」と勝手に言っているけれど、人間ばかりが威張るんじゃないぞという話ですよ。人がものをつくることに関する脳との関係、身体との関係は、まだまだ研究途上ですが、人間は、所詮、自分の脳からは出られません。だからこそ、人間以外の生き物をお手本にしていくと、少しは可能性が広がるのかもしれません。

自然を見て、全体を生態系として組み上げる。

 最近は「バイオミミクリー」という言葉も広く知られるようになりました。その考え方を、ものをつくる人が取り入れていくと、少しはまともになっていくかのかな、と思います。バイオミミクリーとは、単に「生き物から学ぶ」ではありません。機能や形の模倣ではない。「人間がつくるものも、きちんと生態系として組み上げよう」ということです。壊れてゴミになる時の処理も過程を考えるとわかりますよ。生態系では牛糞でも馬糞でも、まず虫が片付けます。その虫をまた次の生きものが食べて、というふうに繋がっていく。そういうふうになるように、工業製品をつくるにも社会設計をしましょう、ということなんです。さもないと、ゴミが出てどうしようもない。自然を見て、全体を生態系として組み上げることを本気で考えていかないといけない時代になっていると思います。

 たとえば、太陽光パネルは結構不細工ですよね。太陽光を活用するなら、せめて木の葉みたいなものにならないですかね。デザインの人たちは、何をしているんでしょう、あれを製品として出すなんて。虫を採りによく山に行くわけですが、木が伐られて太陽光パネルが並んでいるのを見ると、一体、何が起こったのかと思います。あんな不細工なものを許していると、人間の美的感覚がおかしくなってしまう。風力発電も、景色のいいところに建っていて、もう少し遠慮してほしい。

 人間は傲慢になっていませんかね。だからバイオミミクリー=生き物みたいに、というのが大事なんです。虫は謙虚ですよ。あんな小さい身体で、脳だって小さいのに、いろいろ"考えて"ますよ。それに比べて人間は1キロ以上の脳を持っているのに、何やってるのか。ぜんぜん使ってないのではないでしょうか。

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六本木は地理的に面白い。放っておけばいい。

 六本木はめったに来ないけど、面白い街だと思っています。なぜかと言うと、高台で起伏がある。麻布もそうだけど、結構な急斜面で東京の中では地形的に面白い場所なんです。虫採りでしょっちゅう急斜面を歩いているから、そういう土地が好きで、東京でも起伏がなくてベターっとしているところは全然面白くない。平地で散歩をすると、角ひとつ間違えただけでどこにいるか、全然分からなくなって迷子になります。

 六本木ヒルズのあたりは、それこそ急坂で、再開発がはじまる前までは、古い東京が残っていました。終戦直後から変わらないような、タイムマシーンみたいな場所で、ごっちゃごちゃしていて結構好きでした。六本木ヒルズは、その復讐かもしれませんね。最近は、どこもかしこも、ピカピカで真っ白です。たとえば病院で、清潔さは当然として、病人や老人があまりにも真っ白な壁に囲まれたら、むしろ具合が悪くなることもある気がします。

 六本木を他の都市とは違う魅力的な街にしたいとおっしゃるけれど、都市というのは似てくるものなんです。当たり前です。だって、「同じ」であることが都市の基準だから。わざわざ変えようとして、いろんなことをして新しいものを取り入れようとするのは、「同じ」が基準になっているからですよ。だからこそ、変えたがる。でも、放っておいたら違っちゃった、というのが本当の違いであって、意図して違えたものは意味が違います。そもそも、住んでいる人が違うんだから、放っておいたらひとりでに違ってくるはずです。六本木は放っておけばいい。地形的には面白いですから。

都市は雰囲気が、クリエイターは目が大事。

 古くから人が住んでいるところは、なんとなく落ち着くんですよ。京都もそうでしょう。鎌倉も京都と同じで、いいところなのかどうなのか、わざわざ好んで、人が集まってくる。僕はそこで生まれ育っているからどこがいいんだか分からないけど、なんでそんなに、いいと言われるのかと考えてみたら、現代の人にとっては、背景に宗教があるところがいいのかなと思いました。

 現代人は宗教を本気では信じていません。でも、宗教的なものは、古くから人間に居着いたものですから。それが底流しているような場所、感じられる場所にいたいんです。だから鎌倉は、あんなに混む。お寺や神社が多いから。新しい、なんだかよく分からない宗教はダメですよ。あくまでも、人々が長く信じて安心してきたもの。それがなんとなく、じんわりとある雰囲気、そう、都市は「雰囲気」が大事なんです。六本木もお寺さんにうまく動いてもらえばいいと思います。日本のお寺さんが、不動産業よりももっと本業をできるようにすればいい。

 一番やらなければならないのは、身体を使うこと、感覚を使うことだと先ほど言いましたが、たとえば、六本木の街を歩くだけでも随分違う。いろんなことが見えるはずで、それが見えなかったとしら、目が悪い。冗談ではなく、それは本当に重要なことです。世界を見るためには、まず目がいる。見えないってことは、自分の目が悪いかもしれない、とは意外に考えない。以前に、テレビで、アフリカから来た人の視力が5.0だ、すごく目がいい! と騒いでいたんだけど、そうじゃない! お前の目が悪いんだよ! ってひとりで怒ってました(笑)。都市の中で目が悪くなるような生活をしているから悪くなっているわけで、生き物としての当たり前が、分からなくなっています。本当の問題って、なんでしょうね。

取材を終えて......
自らの経験をもとにした独自の視点を軽快に、いや痛快に、たっぷり語ってくれた養老孟司さん。取材撮影時は自らが企画監修した『虫展』オープン前日。「世界を見るためには、まず目がいる」と語る養老さんは、ひとつひとつの作品を「よく見る」ため、オペラグラスを急きょ購入しました。虫をお手本にしたアートやデザインをよく見て、楽しむ姿はまるで少年のよう。そういえば、会場となった「21_21 DESIGN SIGHT」の名前も、優れた視力や見ることの大切さを込めたもの。街の可能性も、私たちの思考や行動の可能性も、まずはよく見ることからはじまるのだと、教えられました。(text_tami okano)

前編はこちら

養老孟司

養老孟司 / 解剖学者
養老孟司 / 解剖学者

1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。1962年 東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年 東京大学医学部教授を退官し、東京大学名誉教授に。著書に『からだの見方』(サントリー学芸賞受賞)『形を読む』『解剖学教室へようこそ』『日本人の身体観』『唯脳論』『バカの壁』『「自分」の壁』『養老孟司の大言論(I)〜(III)』『身体巡礼』『骸骨巡礼』『遺言。』など多数。昆虫を通して生命世界を読み解きつつ、「身体の喪失」から来る社会の変化について思索を続けている。

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