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INTERVIEW
103
森永邦彦ANREALAGE デザイナー KUNIHIKO MORINAGA / ANREALAGE Designer
KUNIHIKO MORINAGA / ANREALAGE Designer

『空間の形に応じて人の動きが変わる、街と服の新たな関係』【後編】

服を着ることで生活や人生が変化する、そういう人を少しでも増やし続ける存在でありたい。

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update_2019.04.24 photo_mariko tagashira / text_akiko miyaura

「A REAL-日常」「UN REAL-非日常」「AGE-時代」を意味する「ANREALAGE」。そのデザイナーをつとめる森永邦彦さんは、「神は細部に宿る」という揺るぎない信念のもと、細かいパッチワーク、人の形を超えた独創的なデザイン、テクノロジーを取り入れた洋服など、想定外のファッションを生み出してきた。日常と非日常を越境することは、ブランドが掲げるテーマでもありますが、会期中の『六本木クロッシング2019展:つないでみる』ではジャンルを超え、さまざまなアーティストらと“つながり”を提示。15年を経たブランドの軌跡とともにモノづくりへの思い、いまと未来のファッションの考察など、たっぷり伺いました。

前編はこちら

スクリーンに収まったファッションが見過ごしているもの。

 ここ数年は、身の回りのものからテーマを見つけることが多かったのですが、この半年は"洋服"から見つけようという方向に向かっていたんです。だから、何か気になったものを入れる「実験ボックス」も、洋服のディテールばかりになっていました(笑)。

 "細部を着る"というのが、まさに最新コレクションで発表した今期のテーマ。これは毎回のことなのですが、僕はテーマの真逆をやるということをしていて。例えば『SHADOW』というコレクションなら、真っ黒な影じゃなく真っ白な影をつくったり、『CLEAR』のときは透明なものを真っ黒にしてみたり。テーマの対極をいかに表現するかを大事にしてきました。今期『DETAIL』というテーマを掲げるなかでも、みんなが"これがディテールだ"と思っているものを、いかに裏切るかを考えました。細部は小さいもの、という概念があるのであれば、その概念自体を裏切ろうと。結果、洋服のディテールをそのままスケールアップして着るという発想にたどり着いて。たとえば、トレンチコートやシャツの襟だけを着る、モッズコートやスウェットパーカのフードだけを着る、MA-1の袖だけを着るというアプローチをしているんです。

 いまって洋服を見る場所、伝える場所が明らかに"スクリーン上"になっているじゃないですか。すべてがパソコンやスマホの画面サイズに収まっていて、わかったつもりでモノを買ったり、伝えたりしている。そこで見失われているもの、見過ごされているものは何かと考えたとき、スケール感というのが出てきて。最新コレクションを発表する前に、インスタグラムで全部の洋服のディテールを発表したんですよ。スクリーン上で見ると、何の変哲もない袖や裾。最初は「ANREALAGEがすごく普通の洋服を発表してきた?」と湧いたんです。でも、ふたを開けたら、そのディテール自体が洋服そのもので、とんでもないスケールだったっていう。これは警鐘を鳴らすとかではなく、いまの時代における洋服の在り方に対して、その隙間を埋めたいということ。この魅せ方によって、いまのANREALAGEを見てくれている人たちと、いいコミュニケーションがとれたんじゃないかなと思っています。

 昨年行った15周年のショー『A LIGHT UN LIGHT』は、自分の精神も肉体もすべて注ぐようにしてつくった集大成的なものでした。約40分かけて100体を見せるっていう、すごく濃密な、かなり修行じみたコレクションでした。そこから、次はどうするんだろうとみんなが思っているなか、大きく道を変えたのが今回の『DETAIL』。つくっているものとしてはクスッと笑ってしまうような、ちょっと気楽な方向なんですよね。そうやって新しいことに向け、また変化しようとしているブランド像を、最新コレクションでは伝えられたんじゃないかなと思います。

DETAIL

『DETAIL』

2019-2020 A/W COLLECTIONのテーマ。画面の上では伝わらない服、画面の上ではわからない服をという思いをもとに、超スケール大にした服のディテールをひとつの洋服として着ると斬新な提案。リアルとアンリアル、バーチャルと現実という対比をつくってみせた。また、15周年を経たタイミングで、「神は細部に宿る」というブランドの原点に戻る意味合いもある。

A LIGHT UN LIGHT

『A LIGHT UN LIGHT』

「アマゾン ファッション ウィーク東京(AMAZON FASHION WEEK TOKYO)」のスペシャルプログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」のなかで行われたショー。約4年ぶりとなった東京でのショーで、2003年の初COLLECTION~2019S/S COLLECTION『CLEAR』に発表したものから100体のルックを披露。4年半ほどを費やし、テクノロジーを積極的に取り入れながら、"光"を洋服で表現してきたシリーズの完結でもあった。

パリにあったのは、街のムードといいものを見てきた審美眼。

 『A LIGHT UN LIGHT』『東京コレクション』と、東京でのショーは久しぶりでもありました。都市にはそれぞれ色があると思うのですが、パリは明らかにエレガントというのが軸にあって、それが評価の基準になっているんです。東京はそれとは全然違って、いろんな価値が混在している印象がありますね。お客さんを見ても、パリは限られたファッションの達人みたいな人が多いですが、東京はもっとオープンで、ANREALAGEのショーに来てくれる人もファッションとは違う表現をしているクリエイターなんかもいて。そういうフラットな場所にファッションとして入って、刺激を与えられるのはすごくおもしろいなと感じます。

 逆にパリの魅力的なところはコレクションの期間中、街全体がファッションに溢れて、街がすごく湧いていること。タクシーに乗れば「どこの会場に行くんだい?」って、当たり前に会話が繰り広げられるんです。それから、やっぱりパリのファッションウィークには本物をその目で見てきた人がたくさん集まるので、審美眼だらけです。東京はブランドやショップ、そして、人もすごく独特で強くて、ファッションとしてズバ抜けている都市。また、異業種には東京から世界に飛び出し、日本が誇るクリエーターやアーティスト、表現者がたくさんいますよね。そういう異業種の人とファッションが交わることで、他の都市にはない東京独自のファッションウィークが形成できると思います。

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空間の形に合わせて人が動く服を着て、街で壮大なかくれんぼ。

 もし六本木でやってみたいことを考えるなら......昨年、ライゾマティクスの真鍋大度さんと石橋素さん、ダイアログ・イン・ザ・ダークの檜山晃さんとともに、これまでの知覚方法をアップデートする「新しい知覚」を探るプロジェクト『echo』を日本科学未来館で実施しました。それを使って新しい感覚を探るプロジェクトをしてみたいですね。

 ファッションの世界では、視覚が何よりも重要視される分野ですが、視覚に頼らない人にとってもファッションが果たせる役割があるのではないか、ファッションが持つ"着飾る"こと以外の機能を拡張して、ファッションの壁を超えたいと思ったことが、このプロジェクトのきっかけです。そこから、盲目の方が生きている特別な感覚世界を、服に落とし込むプロジェクト『echo』が始まりました。

 プロジェクトでは、視覚障がいを持つ方たちの知覚を補助する"白杖"という道具をヒントに、服を介して空間を知覚できる皮膚のような器官を人に備えさせるウェアの開発を行いました。例えば、コウモリは超音波を出して自分と周囲との距離を測りますよね。これを人間にも応用できないかと考えたんです。視覚に頼って生きていると、聴覚、触覚、嗅覚をあまり使わなくなりますが、目の見えない人たちは、私たち以上に自分の発した音の反響を感じ取り、自身と周囲の建物や障害物との距離が知覚できる。その感覚を取り入れて、視覚障がいを持つ方にとっての服の感じ方、空間の感じ方を追体験できるウェアをつくったんですね。

 簡単に言うと、空間を知覚するセンサーがついていて、視覚が機能しない暗闇でも周囲の環境との距離を測れるウェアです。障害物が迫るとそのセンサーが反応し、振動することではじめて空間を認識できる仕組みになっていて。目隠しをしながら、振動を頼りに空間を歩くことができるんです。今回は周囲の環境に対するセンサリングでしたが、この精度を変えることでより遠くのもの、例えば、夜空に浮かぶ星を知覚することも、目に見えないダニやノミのような小さなものも知覚することが可能にもなる。その服をいろんな人に着てもらって、かくれんぼや鬼ごっこなんかができたら。空間の形に応じて人が動くモビリティー感覚が生まれたとき、人の移動はどうなるのか、街のサインはどう変わるのかはすごく興味があります。

『echo』

『echo』

衣服が新しい身体器官になるという、新しい可能性を開拓するプロジェクト。視覚障がい者とともに、ダイアログ・イン・ザ・ダークとライゾマティクスリサーチ、アンリアレイジが感覚に関する対話を通して、空間と呼応する服『echo wear』を製作した。服自体が信号を発して、距離をはかることで空間を認知し、その反応が振動として返ってくる。視覚とは違う感覚で空間を感じる世界初のイノベーション。

人と違うことがファッションであり、普及されることもファッション。

 そういったプロジェクトもそうですが、この先、ファッションを通じてできることはいろいろとあると思うんです。ファッションはカルチャーとしての側面も大きく、アートだったり、音楽だったり、いろんなジャンルと交われるもの。だから、ファッションの領域を超えてフラットにいろんな人やモノと交われる媒介として存在して欲しいという願いはあります。

 ただ、そうなればなるほど、ファッションの芯からは距離が出てしまう面もあって。ファッションって、すごく両極の軸をもっている現象だと感じます。"人と違うことがファッションである"という言葉のもとに、ある特権を得られる部分もある。でも、それだけだと成り立たなくて、多くの人に混ざり合い、普及されてこそ、ファッションだとも言えます。しかし、今度は普及されすぎると消費されてしまって、ファッションとは言えなくなってしまう危惧もある。難しいけれど、その両極が必要なんでしょうね。

 そして、最近は日本のファッションが、おもしろくないという声を聞くこともあります。ひとつは、人の熱量が多方面に向いているのもあるんじゃないかなって。ファッションのなかの話だけじゃなく、選択肢が広がっていて、いろんなコンテンツを買える世の中になっているので。そもそも、おもしろいファッションって少数だと思うんですよ。いまも確かに存在はしているし、その数もあまり変わってないはず。ただ、二次流通やファストファッション含め、相対的に服がすごく増えたことで、埋もれて見えているのかなとは思います。

 日常的な洋服というのは、すごく大事だと思うんです。それをつくれるデザイナーは絶対必要だし、そこは日本にはたくさんいるので安心な部分。だからこそ、僕らは日常的に見えるけれど、日常じゃないようなものを服としてつくっていきたい。それこそが、クリエイションだと思っているので。誰か1人でもそれに気づいてくれたり、ANREALAGEの洋服を着ることで生活や人生が少し変化したり、そういう人を少しでも増やせるブランドでありたいなと思います。

取材を終えて......
森永さんもご自身を"ニュートラル"と表現されていましたが、インタビュー中もとても穏やかでフラットで、何かを押しつけてくる空気をもたない魅力的な方。何より驚かされたのは思考力です。不思議な力を持つ洋服たちは、本当に考え抜いた人からしか生まれない究極のファッションなのだと再確認させられました。新たな道を踏み出した今期の『DETAIL』は、大胆なのに心を揺さぶるチャーミングさ。ここからのANREALAGEがますます楽しみです。(text_akiko miyaura)

前編はこちら

森永邦彦

森永邦彦 / ANREALAGE デザイナー
森永邦彦 / ANREALAGE デザイナー

1980年東京都国立市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。 大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりをはじめる。2003年「アンリアレイジ」として活動を開始。2005年東京タワーを会場に東京コレクションデビュー。東京コレクションで10年活動を続け、2014年よりパリコレクションへ進出。2019年フランスの「LVMH PRIZE」のファイナリストに選出、同年第37回毎日ファッション大賞受賞。2020年伊・FENDIとの協業をミラノコレクションにて発表。2021年ドバイ万博日本館の公式ユニフォームを担当、2023年ビヨンセのワールドツアー衣装をデザイン。

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