作家自身4年ぶり、amanaTIGPでは初の個展。本展では、東京の住宅の不透明な窓のみを捉えた写真群から約25点が展示されます。約10万枚という膨大な作品数から構成された本写真群は、コロナ禍の2020年4月から2022年11月の間、2年半にわたって撮影されました。
東京は世界有数の住宅過密地区であり、そのひとつひとつを眺めてみると、多くの窓がすりガラスや型版ガラス、フロストガラスと呼ばれる類の不透明なガラス窓であることに気がつきます。垂直水平なスクリーンに映しだされる光景は、閉ざされた内なる空間に外の景色を伝える風景画となり、また同時に外側の世界にとっては、無機質で四角い枠の奥に住まう人々の生活を描く一種の肖像画にもなり得ます。不透明なガラス越しにのぞく日用品や雑多なものの数々は抽象化され、そして抽象的であるがゆえに、そこに息づく人々の生活は情報化・言語化されることのない不安定なうねりとなり、見知らぬ誰かの内面を投影しているようにすら感じられるのです。
屋内の環境を求めながらも屋外の恩恵にあやかりたいという人間の相反する欲望を満たした矛盾の産物ともいえる窓を、作家は「『人』ひとりひとりと『社会』をつなぐ"結節点"としての役割も担っているように思える」と言います。大きさや窓枠の幅(額幅)の異なる作品が点在する、小さくも混沌とした東京という街の様相を成形した疑似空間にて、転換の過渡期ともいえる奥山作品をぜひご覧ください。尚、本展の開催に合わせて作品集も刊行されます。