本展は、サントリー美術館と佐藤オオキ率いるデザインオフィス nendo が企画・展示デザインを共同で手がける、日本美術を紹介する展覧会です。
鑑賞者が美術作品を前にしたときに、その作品の背景にある製作過程や作者の意図や想いなどを知ることで生まれる感動と、ただただ理由もなく心が揺さぶられる感動という、2種類の感動があると仮定して、前者を「information(左脳的感動)」、後者を「inspiration(右脳的感動)」と位置づけ、同一の作品に対して2つの異なる鑑賞の仕方を提案することを考えました。
このコンセプトのもと、サントリー美術館が所蔵する作品約3,000件の中から27点を選定し、「information」と「inspiration」の2つの展示空間の狭間に作品を配置することで「1つの展覧会のようで2つの楽しみかたができる」構成となっています。展示会場の中間に位置する吹き抜け空間では、本展のためにnendo によって製作された映像作品「uncovered skies」を展示予定です。日本美術とは切っても切れない「四季」をテーマにしたこの作品もまた、その製作過程や技術的な解説を楽しめる「information」的要素と、直感的に体感できる「inspiration」的な要素を兼ね備えています。「information」と「inspiration」で2つの異なる鑑賞が提案されていることで、展覧会の印象の個人差が大きくなり、鑑賞者同士のコミュニケーションが誘発されることが企画意図の一つとなっています。
本展は、決して左脳的な美意識と右脳的な美意識に優劣をつけることが目的ではなく、一度両者を意識的に切り離すことで、そこから抜け落ちた価値や、重複した要素、そして浮かび上がる多くの矛盾に気づくことを狙いとしており、この左右脳の間に横たわる膨大なグレーゾーンの存在とその魅力を再認識してもらえることを期待しています。