サントリー美術館では、8月30日(日)まで「眼のごちそう 食器」が開催中です。主に桃山時代から江戸時代までの陶磁の食器を特集した企画であり、形、色彩、文様のすべてが一気に華やかになった食器の世界をたどります。

重要文化財である《染付松樹文三脚大皿》は、蛇目高台の三方に葉形の脚が付いた大皿。目を引くのは、皿の表面だけでなく、側面にまで施された華やかな意匠です。料理を盛った状態で眺めるだけでなく、持ち上げたときに見える美しさまで計算されていたことがわかります。

取り分けに使われた大皿や鉢の中には、鑑賞性だけでなく、把手を備えたものもあります。《織部洲浜形手鉢》と《備前洲浜形手鉢》は、料理をいただいた後に、底の洲浜形に描かれた文様が現れるつくりになっています。完食して初めて見えてくる文様が、食卓にささやかな驚きを添えてくれます。

今では日本酒を注ぐ器として知られる猪口ですが、近世では調味料や薬味を入れる器として使われていました。鰹に醤油や酢味噌を合わせたり、鯵に粉山椒を添えたりと、好みに合わせて風味を加えるための小さな器です。

《織部鷺文輪花皿》は、客一人ひとりに提供される向付です。飯椀と汁椀の位置がわかるように展示されており、当時の様子をより具体的に想像できます。同じ器が客人の前に並ぶことで、食卓には自然と一体感が生まれます。料理を食べ終えた後、手に取った器を眺めながら、文様や形について感想を交わす。そのような時間もまた、もてなしの一部だったのでしょう。

角の丸い四角形をした重要文化財《白泥染付金彩薄文蓋物》は、模様の美しさも相まって、籠を思わせる風合いを持っています。外側には白泥、染付、金彩ですすきが描かれ、内側には規則正しい花襷文が広がっています。外側ののびやかなすすきと、内側の整然とした文様。その動と静の対比が、蓋を開ける瞬間の期待を高めてくれます。

刺身を盛り付ける際に使われたとされる《ガラス簾》は、涼やかな見た目が印象的な作品です。透明感のあるガラスの質感は、料理の新鮮さをいっそう引き立てたことでしょう。器は料理を受け止めるだけでなく、季節感を伝える役割も担っていました。暑い季節には、目にも涼しい器を選ぶ。その感覚は、現代の私たちにも通じるものがあります。

美術館を出て右手にある「不室屋カフェ」では、本展の会期限定で特別なスイーツも味わえます。また、「加賀麩とりどり膳」に使われている器の紹介も掲示されており、展示で触れた「器と食」の関係を、実際の食事の場でも体感できます。
人の営みと切っても切り離せない食事。本展を訪れると、「何を食べるか」だけでなく、「誰と食卓を囲むか」「どのように客を迎えるか」にまで心を配って器を選んできた人々の姿が見えてくるでしょう。
編集部 山下
「眼のごちそう 食器」
会期:2026年7月8日(水)~8月30日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います
会場:サントリー美術館
休館日:火曜日(8月11日は18:00まで開館)
開館時間:10:00~18:00
※金曜日および8月29日(土)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
主催:サントリー美術館
協賛:三井不動産、鹿島建設、サントリーホールディングス
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2026_1/index.html
