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【イベントレポート】国立新美術館 パブリックトーク「デザインをみせる、建築をあつめる~世界の美術館の現場から~」

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撮影:石原敦志

  • 国立新美術館
update_2026.06.22

2026年5月29日(金)、国立新美術館にてパブリックトーク「デザインをみせる、建築をあつめる~世界の美術館の現場から~」が開催されました。本イベントは、同館とドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムが共催した国際的な美術館のネットワーク会議「muscon Tokyo 2026」の関連企画として実施されたものです。当日の様子をレポートします。

1996年にヴィトラ・デザイン・ミュージアムの提唱で始まったmuscon(ムスコン)は、今回、アジアでは14年ぶりの開催となり、14カ国から100名を超える専門家が集まりました。その締めくくりとなる本パブリックトークでは、ヨーロッパやアジアの第一線で活躍する専門家を迎え、美術館で建築やデザインを収蔵・公開することの意義や役割について、国際的な視点から意見が交わされました。

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撮影:石原敦志

最初に登壇したのは、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム館長のマテオ・クリース氏です。家具メーカー・ヴィトラ社によって設立され、ドイツの工場敷地内に1989年にオープンした同館。クライス氏は「企業ミュージアムではありません」と独立した非営利組織であることを強調。その言葉通り、特定の企業にとらわれず、過去200年間にわたるデザインと建築のあらゆる表現を収集しており、デザイン史において重要な約7000点の家具コレクションや、ヴェルナー・パントンら著名デザイナーの貴重なアーカイブなど、世界有数の質を誇る所蔵品を有しています。

建築の収集について、クリース氏は「有名建築家たちの作品が集まる美術館の敷地を、単なる鑑賞用の『建物のコレクション』と捉えることには反対です。なぜなら、それらはただ展示されているだけでなく、実際に使用されている『生きた建築』だからです」と説明。教育施設としての活用や、解体予定だった歴史的建築の移築・保存など、実践的な用途へと射程を広げていることを語りました。

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撮影:石原敦志

続いて、香港にある視覚文化のミュージアムM+から、シニアキュレーターでデザイン・建築部門統括の横山いくこ氏が登壇しました。2021年にオープンした同館は、約9300点のコレクションを有しています。横山氏は「アート、デザイン、建築、映像を分けず、一つのチームとして同じ時代をカバーし、それらが重なる部分を強調しながらコレクションを作っています」と独自のアプローチを紹介しました。

特に注目を集めたのが、倉俣史朗氏が設計した新橋の寿司店「きよ友」を移築・収蔵した事例です。横山氏は、当時の食器やレシート等の資料も全て一緒に収蔵したことについて、「美術館のリサーチは『道具箱』みたいなものだと思っています。これから先の世界の研究者やキュレーターが新しい発見をしていくためのものが美術館のコレクションだと思っています」と、未来を見据えたアーカイブの意義を語りました。

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撮影:石原敦志

3人目の登壇者は、今年4月に国立新美術館長に就任し、大阪中之島美術館の特別顧問も務める菅谷富夫氏です。2022年に開館した大阪中之島美術館は、1980年代から日本のデザイン作品をいち早く収集してきました。

大阪という家電メーカーが集まる地域性を活かしたアーカイブ化の工夫として、菅谷氏は「メーカーに協力していただき、歴史的な製品の全方向の写真を撮り、スペックをデータ化し、ホームページにアップしていくという作業を始めました」と紹介。これにより「メーカー自身にも『残していこう』という意識を持っていただき、展覧会の際には作品を貸していただけるようになりました」と、企業を巻き込んだ保存の仕組みづくりについて語りました。

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撮影:石原敦志

最後を飾るのは、ロンドン東部に新設されたV&Aイーストのチーフキュレーター、ブレンダン・コーミア氏です。16歳から24歳の若者をターゲットにした同館では、アプライドアート(応用美術)を単なる美術のカテゴリーとしてではなく、社会に対する姿勢として捉え直していると語りました。「見た目の美しさや形だけを追求するのではなく、その作品が生まれた背景や、社会にどのような影響を与えるのか、そしてそれが世界にとって本当に良いことなのかといった倫理面について考えるようにしています」と、同館の理念を説明しました。

また、誰でもアクセスできる収蔵施設「V&Aイースト・ストアハウス」の画期的な取り組みも紹介。「誰もがオンラインでデジタル化されたコレクションを検索し、最大5つのオブジェクトを予約してスタディルームに持ち込むことができます。研究者であるかは問いません」と、開かれた美術館のあり方を提示しました。

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撮影:石原敦志

それぞれの美術館が持つ独自のアプローチやコレクションへの思想が共有された本イベント。質疑応答では、AI時代における美術館の役割や、工芸とアートの境界線といった現代的な課題についても意見が交わされました。世界の先進的な事例から、これからのデザインや建築の収集・展示のあり方を考える上で、非常に示唆に富む時間となりました。



編集部 齊藤

INFORMATION

パブリックトーク「デザインをみせる、建築をあつめる~世界の美術館の現場から~」
日時:2026年5月29日(金)17:30~19:00
会場:国立新美術館 3F講堂
主催:国立新美術館
登壇者:
マテオ・クリース(ヴィトラ・デザイン・ミュージアム館長)
横山いくこ(M+シニアキュレーター、デザイン・建築部門統括)
ブレンダン・コーミア(V&A イースト チーフキュレーター)
菅谷富夫(国立新美術館長、大阪中之島美術館特別顧問)
モデレーター:高美玲(国立新美術館国際連携室長)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.nact.jp/

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