TOTOギャラリー・間では、6月22日(日)まで「篠原一男 空間に永遠を刻む――生誕百年 100の問い」が開催中です。
「住宅は芸術である」と唱えた篠原一男氏は、小住宅の設計に多大なエネルギーを費やした建築家。東京工業大学で教鞭をとり、退官後には自身のアトリエを構え、設計と言説の発表を続けました。
その影響を受けた後進の多くは現在、建築界の第一線で活躍中。坂本一成氏、伊東豊雄氏、長谷川逸子氏に代表されます。
本展覧会では、そんな篠原氏が生涯を通して自らに投げかけ続けた「問い」を紐解き、「永遠性」をテーマにその建築家像を再考します。
4月16日(水)に行われたプレスカンファレンスでは、キュレーターを務める建築家の奥山信一、貝島桃代、建築史家のセン・クアン、アシスタントキュレーターを務める東京科学大学技術支援員の小倉宏志郎、そしてTOTOギャラリー・間の代表である筏久美子の5氏を迎えて本展の目的が語られました。
「この展覧会は回顧展ではありません。彼の活動は今なお継続中です」と奥山氏。続けて貝島氏が「篠原一男の人間性、建築家としての在り方を見せたい。彼の建築の面白さを知ってほしい」と言葉を重ねました。
「本展は篠原一男を知らない若い世代へのメッセージとして企画されました。彼の残したものは何だったのか、その現代性を問う企画となっています」と、筏氏が想いを明かしています。
会場では、東京工業大学篠原研究室作製の原図や模型、真筆のスケッチ、家具などのオリジナル資料を展示。篠原氏自身が分類した「第1の様式」から「第4の様式」に沿って構成されています。
3階は「第1の様式」と呼ばれる初期作品から3つの代表作「から傘の家」「白の家」「地の家」を紹介。併せて、関係する5つのプロジェクトにも触れることができます。
作品それぞれの模型や図面で詳細を語りつつ、個人住宅の存続が困難な日本社会の中で、原形をとどめたまま継承されていった空間の永遠性を示しました。
3階と4階を繋ぐ階段の壁面には、篠原氏の活動に際して放たれた100の問いかけが掲げられています。さらに、この問いに対する100の応答を80年代以降生まれの建築家・研究者など100人に呼びかけ、一つにまとめたリーフレットを入場者に配布。帰宅後にも思いを馳せられるよう工夫がなされています。
大きなインパクトを放つ正面の写真は、写真家の大辻清司氏の自邸として設計された《上原通りの住宅》と詩人の谷川俊太郎氏のための別荘《谷川さんの住宅》。そのほか中庭には、篠原氏の経歴、作品、言説を辿る年表が設置されています。
4階では「人間・篠原一男」と銘打ち、2つの自邸と3冊の作品集、そして最晩年のインタビューを通して、氏の姿を振り返ります。
「第4の様式」を代表する、篠原氏のアトリエに併設された《ハウス イン ヨコハマ》の再現展示もなされ、実際の作品と同じスケールで壁面や家具を眺めることが可能です。さらに、遺族から託された貴重な原図とあわせて楽しむことができます。
未完の遺作となった篠原氏の山荘計画のために描かれた800枚を超える膨大なスケッチ。そのうち30枚ほどピックアップされたオリジナルの原図からは、全く別のアイデアを同時に走らせていた氏の思考が垣間見えるでしょう。
本展に際し、長らく入手困難だった1996年発行の作品集『篠原一男』の復刻版が発売。時間を超越する固有の建築空間を求めた篠原氏の思想とともに、手元に置いてみてはいかがでしょうか。
編集部 福島
「篠原一男 空間に永遠を刻む――生誕百年 100の問い」
会期:2025年4月17日(木)~6月22日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜日・祝日
入場料:無料
会場:TOTOギャラリー・間
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根剛、キュレーター=奥山信一/貝島桃代/セン・クアン、アシスタントキュレーター=小倉宏志郎
後援:一般社団法人 東京建築士会、一般社団法人 東京都建築士事務所協会、公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部、一般社団法人 日本建築学会関東支部
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://jp.toto.com/gallerma/ex250417/index.htm