【イベントレポート】東京ミッドタウン「未来の学校祭 "脱皮 / Dappi ―既成概念からの脱出―"」

東京ミッドタウンとアルスエレクトロニカによる、未来の社会をみんなで考える新しいお祭り「未来の学校祭」。その第2回となる「未来の学校祭 "脱皮 / Dappi ―既成概念からの脱出―"」が、2020年2月20日（木）～2月24日（月）にかけて開催されました。

今回のテーマである「脱皮」は、昨年開催された「アルスエレクトロニカ・フェスティバル 2019」のテーマ「Out of the Box」が元となっています。社会の中に存在する見えない壁や、自分でつくり出す限界といった既成概念から脱皮するきっかけを、アート作品を通じて提示することが主旨となっています。

昨年に続いて来日したアルスエレクトロニカ総合芸術監督のゲルフリート・ストッカー氏は、「脱皮」というテーマについて、「既成概念を打ち破ることで、新しいイノベーションを得られると考えています。それだけでなく、隠れずに外に出るということは、責任を持って生きるということであり、未来へのチャレンジだと思っています」とコメントしました。

「LIMINAL」は、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル 2019」出展作品の一つ。ルイ=フィリップ・ロンドー氏が制作したこの作品は、光の輪の内側に取り付けたカメラによって、輪をくぐる被写体をスクリーンに連続して投影し続けるというもの。そして、輪を抜けた瞬間にその姿は途切れ、ほんの数秒でスクリーンから流れ去ってしまうため、現在が過去になっていくという時間の流れを、視覚的に感じられるようになっています。

モーリッツ・ヴェアマン氏が制作した「Alter Ego (Version II)」も、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル 2019」に出展された作品です。鏡を挟んで向かい合った他人と自分の顔を、交互に連続して映し出す不思議な鏡です。自分が映っているはずの鏡に他人の顔が映るという非日常的な光景には、なんともいえない不安感や、鏡の向こうにいる人との妙な一体感を覚えます。自分と他人の境界について考えさせられる体験でした。

東京ミッドタウン内のアトリウムに展示された「What a Ghost Dreams Of？」は、アーティストグループh.o（エイチ・ドット・オー）による作品。カメラで読み込んだ直近の来場者の顔情報をAIがリアルタイムで組み合わせ、現実の世界には存在しない顔を作成。それを自らの顔として中央のフレームに映し出します。監視カメラが街中に設置されるようになった現代社会と、今後ますます普及していくであろうAI技術が組み合わさった作品です。

こちらのカードは、長谷川愛氏が東京大学で実施した授業から生まれた「Revolutionary 20xx! Tool Kit」です。「問題」、「テクノロジー」といった5種類のテーマごとにカードの内容が分かれており、それぞれを組み合わせながら問題解決のためのアイディアを考える仕組みとなっています。

クリエイティブスタジオMESONと博報堂DYホールディングスが出展した「Spatial Message」は、AR（拡張現実）グラスを装着することで、上の写真のモニターに映っているように文字や図形が東京ミッドタウンの商業エリアの空間に浮かんで見えるというもの。将来、この技術が日常生活の中でどう使われるようになるのか、楽しみになる展示でした。

また、東京ミッドタウン・デザインハブでは、慶應義塾大学SFCやリンツ芸術デザイン大学など国内外の大学5校が、大学、教員、学生それぞれの取り組みを紹介。将来のクリエイター達が、現在どのようなことを考え、学んでいるのか、その一端を知ることができました。

クリエイターの視点、発想が表現されたアート作品や新しい技術に触れることで、これまで当たり前と思っていた既成概念に対する疑問に気づく。そんな、現状から「脱皮」するための第一歩を踏み出させてくれるような「未来の学校祭」でした。

編集部　森