東京ミッドタウン・デザインハブにて、2020年1月6日(月)~1月14日(火)にかけて開催された特別展「-STORY-第59回日本クラフト展」。59回目を迎えた今回は「STORY」をテーマにした600点を超える作品が集まりました。
今回、経済産業大臣賞・日本クラフト大賞を受賞したのは、丹花浩子氏の「平和のかけら」。さまざまな模様が重なったタペストリーですが、実は芋版によって製作されています。完成までに使用した芋版の数はおよそ100個以上、版を押した回数は1万回を超えるという力作です。一見、機械で印刷されたかのように整然と模様が並んでいますが、近くから見ると一つひとつが微妙に異なっていることがわかります。
また、丹花氏は本作について「平和祈念式典での黙祷後、自然と手を合わせていたことが製作のきっかけになった」と語り、広島県出身の彼女ならではの「STORY」を作品に込めていました。招待審査員を務めた秋元雄史氏は「同じ模様の繰り返しだから、芋の個性を越えて、パターンとしての統一感を出さなければならない。下手をすると荒れる画面をよく統制を取りながら、ピンと広がる張りのある画の表現にしたものだ」と称賛をおくっています。
伊藤俊氏によるこちらの「Dawn Chorus」は、招待審査員田中智子賞に選ばれた作品。田中智子氏は選考評の中で「今までこんな作品は見たことなかった」と絶賛。ピアノ線で吊り下げられたステンレス製のロッドが絶え間なく動き続け、金属同士が触れ合うたび静かに音が響く、いつまでも眺めていたくなる作品です。
布や木、ガラスに金属と、いろいろな素材の作品を見ることができるのが本展の大きな魅力。さらに、金属という1ジャンルをとっても、鉄、青銅、アルミなど使用される素材は多種多様です。また、同じ素材であっても作品によって印象が大きく変わったりと、素材の持つ面白さを存分に味わうことができました。
公益社団法人 日本クラフトデザイン協会理事長を務める岡英司氏が「オリンピックの開催地として世界の耳目を集める本年は、数多くの海外からの訪日客が予想されています。こうした中、日本の『クラフト』がさらに広く理解されることを期待いたします」とコメントを寄せたように、今後こうしたクラフト作品が世界へ広がっていくことが楽しみになる展覧会でした。
編集部 森
東京ミッドタウン・デザインハブ特別展「-STORY-第59回日本クラフト展」
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
会期:2020年1月6日(日)~1月14日(月・祝)※終了しました
開館時間:11:00~19:00
休館日:会期中無休
入館料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://designhub.jp/exhibitions/5538/