【展覧会レポート】国立新美術館「ダリ展」

シュルレアリスム、ピンとはねた口ひげ、溶けた時計の絵......。20世紀を代表する芸術家として今も人気を博している、サルバドール・ダリの約10年ぶりとなる回顧展が国立新美術館で開催中です。絵画やオブジェ、ジュエリー、書籍に映像などなど、国内外から約250点のダリ作品が集結した本展は、国内過去最大規模。その内覧会時の様子をお届けします。

展覧会は、初期から晩年までの足跡をたどる、全8章で構成。ダリはシュルレアリスムの画家として知られていますが、その生涯で非常に多岐にわたるジャンルの作品を手がけました。本展の特徴は、なんといっても展示作品の多彩さにあります。

たとえば1935年頃のこの作品は、幻想的なモチーフがちりばめられた、まさにシュルレアリスム的な油絵。画面右端には、ダリの代名詞的なモチーフともいえる"柔らかい時計"が描かれています。

一方、初期にはこんな印象派を思わせる作品も。この時期はポスト印象主義の影響を、その後はキュビズムや古典主義などの影響を受けるなど、さまざまな美術のエッセンスを吸収して、画風を確立していきました。

映画「アンダルシアの犬」も上映。シュルレアリストのルイス・ブニュエルとともに製作した映像作品で、眼球をカミソリで切るというショッキングなシーンから始まります。そのため、作品解説の横には「刺激の強い作品が含まれています」との注意書きが。

こちらは「引出しのあるミロのヴィーナス」と題されたブロンズ像。タイトルどおり、ミロのヴィーナスに引出しが付いています。この引き出しは、無意識の世界を示唆しつつ、乳房と組み合わされることでエロティックな意味も暗示しているのだそうです。

インスタレーションも手がけています。並んでいるのは、「シュルレアリスム国際展」で展示された作品の写真。人形が乗っているタクシーや奇妙な装飾が施されたマネキンなど、なんともダリ的です。

こちらはなんとアクセサリー。デザインと職人の技術が宝石の価値を超えて評価されることを目指し、1949年に宝飾品のデザインをスタートしたのだそう。金とダイヤモンドでできたピンのモチーフは、やっぱり"柔らかい時計"でした。

晩年には、こんな巨大な作品も描いています。代表作のひとつ「ポルト・リガトの聖母」は、原子物理学の理論を古典芸術に融合した、神秘的であり実験的でもある作品。

中央にはイエスを抱く聖母マリアが描かれていますが、実はモデルになっているのは、最愛の妻であるガラ。ガラは、ダリの唯一無二のミューズとして、多くの作品にモデルとして登場しています。

展示の最後には、スペインのダリ劇場美術館の一室を再現した「メイ・ウエストの部屋」が展示されていました。写真のように、正面から見ると、2つの絵画は目、暖炉は鼻、ソファはくちびるになって、メイ・ウエストの顔に見えるという作品です（メイ・ウエストは20世紀に活躍したアメリカの女優）。

過去最大規模というだけあって、このブログでは紹介しきれないほど、見どころはたくさん。ダリ・ファンも、未体験の方も、ぜひ訪れてみてください。きっとその発想に驚かされますよ！

編集部　飯塚

information
「ダリ展」
会場：国立新美術館　企画展示室1E
会期：9月14日（水）～12月12日（月）
開館時間：10:00～18:00
※毎週金曜日は20:00まで
※10月21日（金）・22日（土）は22:00まで
（入場は閉館の30分前まで）
公式サイト（URLをクリックすると外部サイトへ移動します）：
http://salvador-dali.jp