「写真と暮らす」をテーマに、ギャラリーにブックストアが併設されたスペース「IMA CONCEPT STORE」。現在こちらで開催中の、コンテンポラリーフォトグラファー・西野壮平さんの展覧会へ。西野さんは2016年秋にサンフランシスコMoMAで個展開催が決定するなど、注目度大の作家。公開制作のため在廊中のご本人にもお話をうかがうことができました。
こちらの作品は、都市を歩いて撮影した膨大な写真をコンタクトシートに現像、1枚1枚を貼り合わせて大きな地図に仕上げる「ジオラママップ」というもの。写真は2014年に発表した東京のジオラママップで、東京ドームや隅田川、皇居などが描かれ、東京を俯瞰した地図のように見えますが......。
近寄ってみると、このとおり。これは六本木や渋谷のあたりで、建物のほか、電車や車、人物のスナップ写真もコラージュされています。寄れば人々の様子が見え、引けばひとつの都市の姿が立ち現れるという、鑑賞する距離によって印象がまったく異なる面白い作品でした。
こちらが西野壮平さん。展示期間中は在廊して、この秋に撮影してきたキューバの首都・ハバナの写真を使ってリアルタイムでジオラママップをつくっています。私が訪れたときはキャンバスの1/3が写真で埋め尽くされた状態、ここから作品がどうなっていくかは、西野さんにしかわかりません。
「ハバナには1ヶ月ほど滞在していたのですが、街を歩いているとすぐにフィルムが3本、4本なくなってしまいますね。最終的に写真は1万枚以上、ほぼすべてを使って地図の形にコラージュしていきます。記憶をさかのぼるというか、どのエリアでどんな経験をしたかを思い出しながら、1枚1枚貼っていく。このプロセスも旅の一部、完成してようやく旅が終わるという感じでしょうか」
「ある時期からは、毎回、滞在中の様子を映像に残すようにしています。今回はこれまで巡った9都市の映像を初めて展示しました。滞在中にどんな人と出会って、どういうふうに撮影したかがわかると思います。どの都市でも床屋で髪を切ると決めていて、その様子も流れますよ。インドの路上にある床屋さんではなかなかの髪型に仕上げてもらいました(笑)」
「こちらは『Day Drawing』という作品。いつも身につけているGPSトラッカーの軌跡を、毎日写真に撮っているんです。ジオラママップがいろいろな時間の線が重なった織物だとしたら、これは1日分の移動を記した1本の糸。人間はある意味『移動する生き物』ですから、その軌跡を有機的なものにしたいと思って、線に沿って開けた穴から漏れた光を長時間露光で撮影しているんです」
そのほか、「CITIES」というインスタレーションも。ジオラママップをグリッド状のピースに分割、そのうち好きな10枚を購入することができるというものです。展示会場だけでなく、ウェブでも展開されているプロジェクトだそう。特製ボックスに収められた10枚にポスターとブックレットも付いて5万円。どのピースも1点ものと考えるとかなりお買い得(?)かもしれません。
今回の展示に合わせて初写真集も並べられていました。先ほどの「CITIES」のように、東京のジオラママップを1ページずつ分割して綴じたもの。全体図が別紙で付いていて、作品のディティールを細かく見ていくことができます。
今回、西野さんの「ジオラママップ」を見て感じたのが、特に男性にはたまらない世界なのではないか?ということ。私自身、グーグルマップのストリートビューを延々見てしまったり、ジオラマや模型が好きだったりするので、単純に「ジオラママップ、やってみたい......」と思ってしまいました。
ちなみに、期間中は「西野壮平とつくる『World Mapping』」というワークショップを開催、西野さんディレクションのもと、参加者みんなでマッピング作業を体験してZINEをつくるのだそう。本日12月25日(金)まで申し込み受け付け、初日13:30までは当日受付も可能とのこと。興味があればぜひ参加してみては?
編集部 飯塚
information
「Action Drawing: Diorama Maps and New Work」
会場:IMA CONCEPT STORE(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F)
会期:11月26日(木)~2016年1月17日(日)11:00~19:00
休館日:月曜日・日曜日・祝祭日
入場料:無料
http://imaconceptstore.jp/ud/exhibition/56398938abee7b5384000002