TOUR REPORT

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

update_2015.1.21 / photo_tsukao / text&edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

デザイン&アートの街・六本木は、アートギャラリーが集積する場所でもあります。今回のツアーでは、日本最大のアートの見本市「アートフェア東京」のプログラムディレクターを務める金島隆弘さんをガイドに、六本木エリアの3つのアートギャラリーを巡りました。まずは金島さんによるアートマーケットのレクチャーからどうぞ。

アート界は、教育機関・研究機関・マーケットで成り立っている。

「ギャラリーは、美大やスタジオなどに行ってアーティストと話をしながら自ら展覧会を企画したり、美術館での展覧会に協力をしながらビジネスをしています。つまり、アートマーケットの窓口を担っているということですね。よく美術館とギャラリーにどう違いがあるのか聞かれますが、美術館は自らの文脈を構築しながら展覧会を企画し、作品を展示します。一方、ギャラリーは文脈を考えるだけでなく、アーティストのプロモーションを意識しながら作品を展示し、販売をすることでビジネスを維持し、スペースを運営しています。ですから、美術館では入場料がかかりますが、コマーシャルギャラリーは入場料を取らないかわりに、展示している作品のほとんどを販売しているんです」

「アート界の仕組みをわかりやすくいうと、美大などの教育機関と、美術館などの研究機関、ギャラリーなどのマーケットに分かれ、このトライアングルの中で作品が流通しながら、価値が決定していきます。それらを繋ぐ役割としてメディアがあり、広く社会に美術の情報を発信しています。たとえば、ある作品の動きを見てみましょう。美術を教える学校や、自らのスタジオなどで制作された作品がギャラリストの目に留まると、ギャラリーやアートフェアなどで紹介され、販売されます」

値段がすでに決定しているのがギャラリー、値段が変動するのがオークション。

「作品が最初にコレクターに渡る市場をプライマリーマーケットと言います。プライマリーで作品を扱っているギャラリーでは、作品が慎重に値付されており、その金額から極端に値段が下がることは少ないと言えます。一方、オークションが扱うのは、一度コレクターの手に渡った作品。これをセカンダリーマーケットと呼んでいます。ここでは需要と供給で値段が変動するため、アーティストの人気度や作品の評価を測る目安となるわけです」

「日本の主要なギャラリーは東京や大阪といった大都市に集まっています。東京ではかつてそのほとんどが銀座にありましたが、現代美術のマーケットが大きくなっていくにつれて、そのエリアが広がってきました。東京都現代美術館ができると清澄白河に現代美術のギャラリーが集まりましたし、六本木にも森美術館ができてからはその数が増えましたね。今日はその中から、『ワコウ・ワークス・オブ・アート』『ヒロミヨシイ六本木』『タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム』の3つのギャラリーを回りましょう」

作品の価格はグローバルな基準で決められている。

「ギャラリーの面白さは、ギャラリストがいろいろな場所から見つけてきた作品が展示されていて新しい発見があるところ。しかも、買って自宅に飾れる。私も最初はアートの仕組みをよくわかっていなくて、作品を買ったのはこの仕事に就いてからでした。20万円くらいだったのかな、『高いなー』なんて思いながら(笑)。でも、価格にはちゃんとした裏付けがあるので、作品は資産にもなるんです。実際に私が買った作品は、美術館からの展示依頼もありましたし、今では80万円くらいの値段がついていると思います」

「美術品の価値のひとつの基準は、欧米のルールに基づいた評価体系です。そういったグローバルマーケットに作品をどう乗せていくかを、国際的な視野のあるギャラリストは常に考えています。高度経済成長の頃の日本では、日本独自のルールによって日本でしか流通しない作品でもとても高い値段がついていた時期もありましたが、それが今は通用しなくなってきています。現代美術のマーケットの中心はやはりニューヨーク、そこでの価値づけが一つの目安となり、そのトレンドが世界に広がっていると言ってもいいでしょう。また、お金の流れと美術の流通は連動する傾向にあるので、セカンダリーマーケット、つまりオークションなどは、香港やロンドンなどのような大きな金融市場のあるところも強いですし、最近は中国や中東も盛り上がりを見せています」

「先ほど美術館から展示のオファーがきたと話しましたが、ギャラリーは作品の販売記録を管理しているので、取り扱っているアーティストが展覧会をするときには大事な情報源になります。プライマリーのギャラリーが扱っていないような有名な作家の場合は、オークションレコードも参考になりますが、オークションは落札した人を公開しないルールがあるので、作品の行方がわからなくなってしまうことも。美術館はそのような状況でもいろいろなネットワークを駆使して作品を探します」