TOUR REPORT

第12回六本木デザイン&アートツアー 森美術館「ゴー・ビトゥイーンズ展」特別ツアー

第12回 六本木デザイン&アートツアー 森美術館「ゴー・ビトゥイーンズ展」特別ツアー

update_2014.8.20 / photo_tsukao / text&edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

六本木ヒルズ・森美術館で開催中の「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」は、世界各国26アーティストの作品に表れる子どものイメージを通して、彼らを取り巻く環境や創造性に迫る企画展。森美術館のアソシエイト・キュレーター、椿玲子さんの案内でこの展覧会を巡った、第12回六本木デザイン&アートツアーの様子をレポートします。

ゴー・ビトゥイーンズ=媒介者としての子どもの視点で世界を眺める。

「『ゴー・ビトゥイーンズ展』は、子どもを"さまざまな境界を行き来する媒介者"と捉えた、5つのセクションから構成されています。副題に『こどもを通して見る世界』とあるように、"子どもの視点を通して世界をもう一度眺めてみませんか"という問いかけでもあります」

 ガイドの椿さんのこんな言葉から、ツアーは始まりました。「さっそく、展示を見ていきましょう」と促され、一同は最初の「文化を超えて」のセクションへ。ここには、多文化の中で生きる子どもたちの姿に焦点を当てた作品が集められています。

展覧会の企画のベースとなったフォトジャーナリズム。
ジェイコブ・A・リース 《街に眠る浮浪児たち》
「我々以外のこの世のもう半分の人々はどう生きているか」シリーズより 1890年頃

 最初の部屋に展示されていたのは、壁面にぐるりと並べられた写真。これは19世紀末にニューヨークで活躍したジャーナリスト、ジェイコブ・A・リースやルイス・W・ハインらの作品で、リースは移民の子どもたちを「ゴー・ビトゥイーンズ」と名付けました。

「親が移民なので、ここに写っている子どもたちは英語が母国語でありません。でもすぐに言葉を覚えて、親の通訳などをしていたそうです。子どもなのに働いていたり、学校の授業中でも親が迎えにきて家の手伝いをするために帰らなければならなかったり、文化の壁を越えることができる『媒介者』だった。そういう意味で、展覧会のタイトルにもなりました」

20世紀初頭のアメリカで、働く子どもたちの写真群。
ルイス・W・ハイン「児童労働シリーズ」

「こちらのルイス・W・ハインも、児童労働についてフォトジャーナリズム的な視点で撮った人。移民とは限りませんが、工場で働く子たちを撮影して、労働時間や賃金などもこと細かに調べたそうです。彼のリサーチがのちにつくられたアメリカの児童労働法に役立ったといわれていますね」

 ちなみに、下に置いてあるプレートは「子どもキャプション・プロジェクト」といって、ワークショップを通して子どもたちがつくったキャプション(作品解説)を編集し、「こどもたちのこえ」として掲示したもの。たとえば「おんなのこがみているのはせんそう?」など、新鮮な視点から作品を観ることができます。

戦時中、日系アメリカ人収容所の実態を伝える。
宮武東洋「マンザナー収容所」シリーズ

 こちらは第二次世界大戦中、カリフォルニアにあった日系アメリカ人の収容施設「マンザナー収容所」で暮らす人々を撮った、宮武東洋さんの写真シリーズ。自身もここに収容されることになり、隠し持っていたレンズで内部を撮っていたところ、それが収容所の所長に認められて公式にカメラマンとなったそう。

「写真を観ていると、子どもたちがアメリカの文化を学んでいたりして、第二次世界大戦中の日本と比べて、意外と豊かだなって思ったりもします。でも、同時にこの子たちは『アメリカ人として戦場に行きます』と誓わなければいけなかった。もちろん、そうしたつらい部分もたくさんあったんですね」

日本に生きるコリアンの日常を描く。
金仁淑《スウィート アワーズ》部分 2001-2014年

「在日コリアンの作家、金仁淑(キム・インスク)の作品で、彼女の周囲の人々の暮らしぶりや、通っていた朝鮮人学校を撮っています。彼女は朝鮮人学校について、少人数制で子どもをのびのびと育てるいい学校だと言っていました。自分の中にあるコリアと日本、その両方を文化的につなげていきたいという気持ちが込められています」

アイロニカルだけど幸せな親子関係。
ジャン・オー「パパとわたし」シリーズ

 次の部屋へ進むと、壁一面にカラフルな色彩の写真が並べられていました。一見、普通の親子の写真のようですが、よく見ると写っているのはアジア系の女の子と白人のお父さん。

「中国では、一人っ子政策の影響で、多くの子どもたちが国際養子縁組され、アメリカに渡りました。その大多数が女の子だそうです。彼女の一連の作品にはある種のアイロニーもあると思いますが、同時に、普通の幸せそうな親子にも見えますね」

ふるさとを愛する子どもたちの声。
ウォン・ホイチョン《ああ、スルクレ わが町スルクレ》

 同じ部屋の一角には、テントが張られ、中ではトルコの子どもたちの姿を追った映像が流されていました。作品タイトルにある「スルクレ」とは、イスタンブールの郊外にある、ロマ族が住んでいる地域のこと。

「映像の中では、子どもたちにスルクレってどんなところ? と質問しています。彼らは自分の街がすごく好きで、その魅力を生き生きと語っているんですが、その街はいずれ再開発で取り壊される運命にある、そんな作品です」