TOUR REPORT

第11回 六本木デザイン&アートツアー 永井一史氏による「日本のグラフィックデザイン2014」特別ツアー

第11回 六本木デザイン&アートツアー 永井一史氏による「日本のグラフィックデザイン2014」特別ツアー

update_2014.7.16 / photo_tsukao / text&edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の年鑑『Graphic Design In Japan』2014年度版の発行を記念し、東京ミッドタウン・デザインハブにて開催されている「日本のグラフィックデザイン2014」展。第11回六本木デザイン&アートツアーでは、この企画展を、サントリー「伊右衛門」やトヨタ「LEXUS」などのアートディレクションで知られる永井一史さんと一緒に巡りました。その様子をお届けします。

多彩に広がるデザイン領域を、最新のグラフィックから概観する。

「日本のグラフィックデザイン2014」展の会場に集まった参加者のみなさんを前に、まずはガイドを務める永井さんからのごあいさつが。この企画展には、JAGDAに所属する約3000人のクリエイターの作品から選りすぐったものが展示されています。

「つまり、この展覧会は最新の日本のグラフィックデザインの断面図のようなもの。デザインは地域振興やエデュケーションなどの領域にも広がり、すごい勢いで進化している。そういった状況を、今日のツアーでつかんでもらえればと思います」

 各カテゴリーを代表する10作品には「JAGDA賞」が、さらに全応募作品の中からもっとも輝いている作品とその制作者には「亀倉雄策賞」が与えられます。ツアーのスタートは、その亀倉雄策賞を受賞した葛西薫さんのポスターから。

2013年日本グラフィックデザインの最高峰。
葛西薫「ヒロシマ・アピールズ」

「ヒロシマ・アピールズ」は、毎年選ばれたひとりのクリエイターがデザインする、平和希求のポスター。この作品は、JAGDAと並び日本を代表するデザイン団体、東京アートディレクターズクラブでもADCグランプリを受賞、「今のグラフィックデザインの最高峰」と永井さんも絶賛していました。

「『平和とは?』というような概念的なアプローチではなく、原爆で亡くなった20数万人の中のひとりの人生の断面を通して広島を表現している。葛西さんが『原爆が落ちたときは真っ青な空だった』と聞いた記憶も発想の起点になっていて、ランニング姿の男性が見ているのは、B−29なのか原爆なのかわからないけど、そういう一個人の存在の重みや積み重ねた人生を奪ってしまう瞬間を切り取っている。原爆の悲劇をこれまでとまったく違う形で表現した、すばらしいポスターだと思います」

「僕はふだんポスターを貼ったりしないんですけど、できあがってからすぐに購入して、今でもオフィスに貼ってあります。葛西さんはこの作品を手がけるとき、今まで培ったデザイナーとしての技術を捨てて、ひとりの人間としてゼロベースで向き合ってつくったと言っていました。そういう気持ちが、シンプルな手描きの線で表現されていますよね。アートと違って、デザインはコミュニケーションです。見た人の頭の中に原爆の悲劇を創出させる設計があるところが、デザインとして優れていると思います」

伝統の造形を受け継いだロゴは、地域ならでは。
石川竜太「まいどや」

 ここからは、各カテゴリーのJAGDA賞受賞作品が続きます。まずは「CI・VI・シンボル・ロゴ・タイプフェイス」カテゴリーから選ばれた作品。作者の石川竜太さんは、新潟で活躍しているデザイナー。地域の固有性や文化性をベースにした人材が出てきたことも、今年の傾向だそう。

「これ、何て書いてあるかわかりますか? 『まいどや』という酒販店のロゴで、『ま』という文字を回転させているんですね。こうやって『実はこのロゴってね』と話すことで納得感があれば、それでコミュニケーションが取れる。日本に古くからある造形性を咀嚼してつくられた、現代的なロゴマークです」

まるで刷られた版画のような新聞広告。
池澤樹「森の彫刻」

「こちらは『新聞広告・雑誌広告』カテゴリーの受賞作で、サントリーのウイスキー『白州』の新聞広告です。作者の池澤樹さんは、自然の素材から生まれ、白州の自然で育まれたウイスキーを表現するために、彫刻家に森や鳥を彫ってもらったそう。広告全体が木版画の作品のようなところがとても魅力的です」

普通の展覧会をはるかに超えた先鋭的イベント。
原研哉「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」

 続いて、原研哉さんの「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」の展示へ。こちらは、「環境・空間」カテゴリーの受賞作で、お台場・青海で行われた家にまつわる大規模なイベント。

「仕事をリタイアした方が自宅をリノベーションしたり、スマートハウスが増えていったり。これからの日本の暮らしの可能性を、家を中心に可視化した試み。隈研吾さんや伊東豊雄さんといった建築家や、無印良品やホンダといった企業とコラボレーションして、デザイナーによる展覧会をはるかに超える規模で開催されました。これもデザインの広がりの極北というか、今までにない新しい試みだと思います」

デザインの枠を広げた画期的な展覧会。
佐藤卓「21_21 DESIGN SIGHT デザインあ展」

 さまざまなメディアを横断しながら表現する作品を対象とした「複合」カテゴリーの受賞作は、20万人以上を動員した「デザインあ展」。

「佐藤卓さんは、見た目のデザインの背後にある、 "デザインの考え方"みたいなことを伝えていきたいという思いから、NHKと一緒に実現させた番組が『デザインあ』、そのエッセンスをリアルな場で表現したのが、『デザインあ』展。子どもたちが楽しそうに遊んでいたり、普通の展覧会とは違う、デザインの枠を広げたすばらしい企画でした」

INTERVIEW