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DESIGN & TOUR
#03六本木デザイン&アートツアー

第3回 六本木デザイン&アートツアー 清水敏男氏・青野尚子氏による「六本木パブリックアート巡り」

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update_2013.10.02
第3回 六本木デザイン&アートツアー

update_2013.10.2 / photo_ryumon kagioka / text&edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

東京ミッドタウンと六本木ヒルズを中心に設置されているパブリックアートの数は、およそ数十点。そう、六本木は、いわばパブリックアートの聖地なのです。今回は、インディペンデントキュレーターの清水敏男さんと、デザインやアートの分野で活躍するライターの青野尚子さんをガイドに迎え、六本木未来会議読者が街に点在する作品群を巡ったツアーの様子をお届けします。

東京ミッドタウン http://www.tokyo-midtown.com/jp/design-art/artwork/
六本木ヒルズ http://www.roppongihills.com/facilities/publicart_design/

 ツアー参加者が集まったのは、けやき坂通りの交差点に設置された大型のアート作品「カウンター・ヴォイド」(宮島達男)の前。残念ながら震災以降は点灯されていませんが、本来はガラススクリーンにLEDで表示されたデジタルカウンターが輝く、六本木を代表するパブリックアートです。

 案内役を務める清水さんは東京ミッドタウンのパブリックアートのディレクションを担当、そして青野さんは東京ミッドタウンのアートとデザインの書籍を清水さんとともに制作したのだそう。六本木のパブリックアートに通じるお二人の、アート愛あふれるかけあいで、ツアーの様子をお楽しみください。

ストリートファニチャーの王道的作品。
吉岡徳仁「雨に消える椅子」

清水敏男 けやき坂のストリートファニチャーにはいろいろな形のものがありますが、吉岡徳仁さんはストレートに「椅子」です。これはやられた! という感じですね。

青野尚子 透明なガラスでできていて、雨が降ると消えているように見えるという、ポエティックな作品です。「雨が降ると椅子が消えた、僕の恋も消えてしまった」なんて外国人の方が言っていましたけど。

清水 実際に座ってみるとわかりますが、この椅子は本当に座り心地が良いんですよ。では、駆け足ですが、次の作品に行きましょう。

六本木ヒルズのシンボルは何を表す?
ルイーズ・ブルジョア「ママン」

清水 作者のルイーズは女性彫刻家で、女性をテーマにした彫刻をたくさんつくっています。森タワーのすぐ下にあるこの作品のタイトル「ママン」は、フランス語で「お母さん」という意味。形は蜘蛛なんだけれど、卵をいっぱい抱えたお母さんなんです。

青野 母性がテーマということで、"包み込むような愛"ともとれるし、ちょっとどろどろした"支配する母"ともとれる。みなさんは、どんなふうに解釈しますか?

参加者 私は、母親の支配的なイメージをすごく感じます。

清水 パブリックアートというと、万人に受け入れられるものを置くことが多いんですが、公共の場に、こういう先鋭的な作品を置くのはとってもいいなと思いますね。

高層ビルに対抗するために必要なもの。
イザ・ゲンツケン「薔薇」

青野 「ママン」の奥にあるこの作品は、六本木ヒルズのような、人間のスケールを超越した巨大な建造物に対抗するという意味で、人間のハートや情熱を表す「赤いバラ」を置いたと聞きました。

清水 ドイツ人らしくなくて、ロマンティックですね(笑)。作品のうしろの東京タワーとのコントラストがいいですね。

日本の「パブリックアート」は、90年代にはじまった。

清水 六本木ヒルズと、これから向かう東京ミッドタウン、国立新美術館の3つで「六本木アートトライアングル」を形成して、アートで街を盛り上げようとしています。ヨーロッパでは、中世から街なかに彫刻を置く伝統がありますよね。日本も、今や都市の構造はヨーロッパと同じになっているわけですから、街とアートを結びつけられればと思っているんです。

青野 1960年頃に、土方定一が山口県宇部市で野外彫刻展を開催していますね。街に彫刻を置くことが全国的に広まった一方で、街の雰囲気を考慮せずに設置された作品は「彫刻公害」と揶揄されるケースも出て......。

清水 いわゆる「パブリックアート」の先がけは、福岡じゃないかと思うんですね。1990年代に、ミュージアム・シティ・天神という活動があって、銀行の前や工事現場の塀にアートを置くという、期間限定のフェスティバルをやっていたんです。

青野 最近では、アーティストが街の人の流れなどを考えて作品を設置して、人々が見て歩くことで街が発展するようなものに変わっていきましたね。

第3回 六本木デザイン&アートツアー

 清水さんによれば、東京ミッドタウンの方向性は、成熟した大人向けの施設。地下鉄と地上、2つのアプローチで訪れた人をどう迎え入れるのかという課題の解決として、「日本の庭園を現代的につくる」ことをアートのコンセプトにしたのだそう。

 外苑東通りに面している側を「太陽の庭園」、ミッドタウン・ガーデン側を「月の庭園」として、パブリックアートを配置していった......というお話を聞きながら、まずは「太陽の庭園」へと向かいます。

地上から訪れる人々を迎え入れる"穴"。
安田侃「妙夢」

清水 通りからはっきり作品を見えるようにしたくて、周囲に予定していたものを全部なくしてもらったんです。東京ミッドタウンは新しい街ですよね。だから、人々を迎え入れるときに、古い街と新しい街を結ぶキーとなる場所が必要だと考えて、この作品を置くことを提案しました。

青野 この丸い穴が、2つの世界をつなぐ境界ということでしょうか。

清水 新しい世界に入っていくイメージですね。どうぞみなさんもくぐってください。穴の下がすり減っているのも、この彫刻が愛されている証拠だということで、あえてそのままにしています。

青野 侘び寂びというか、古色というか......欠けた茶碗を金継ぎするような感じで、いいですね。

清水 太陽のエリアなので、本当は白い大理石を置きたかったんですが、物がぶつかると欠けてしまうんです。そこで、作者と話し合って、頑丈なブロンズにしました。では、次は地下へ。

地下から訪れる人々を石が包み込む。
安田侃「意心帰」

清水 全体の構想をするときに、ここが一番の「要」だと思いました。地下鉄の駅、商業エリアとオフィスエリア、ホテルをつなぐ場所ですから。気持ちがおだやかになってもらいたくて、この形の彫刻を選びました。安田さんによると、穴ではなくて、空間の周りに石があるということだそうです。

青野 大理石の真ん中に"部屋"があるというわけですね。

清水 さっき、ちょうどそこに子どもが入っていましたよね。地球の誕生と同じくらいにできたかもしれない、ものすごく古い石が、人を優しく包み込むというコンセプトなんです。みなさんも、ぜひ穴の中に入ってください。いかがですか?

参加者 すごく安心するし、落ち着きます。この温度がすごくいいですね。

清水 人肌という感じですよね。他のみなさんも、本当は入りたいんじゃないですか? 我慢せずに、どんどん入ってくださいね。

青野 この作品は、一個の巨大な大理石を削っているんですが、途中でひびが入ってしまうと使えなくなると安田さんはおっしゃってました。お米を磨いで磨いで、清酒にするような、それよりももっと大変な作業なんでしょうね。

清水 この大理石は、イタリアのカラーラという場所で採取しました。そこの工房で、職人にいろいろと注文したんですが「おれたちはローマ時代から彫刻をつくっているんだ。なんで日本人に文句言われなきゃいけないんだ」って怒られました(笑)。

青野 「その頃、私たち弥生土器とかつくってました、すみません」っていう感じですね(笑)。

イラン人アーティストのつくる「灯籠」。
シラゼー・ハウシャリー&ピップ・ホーン「ブルーム」

清水 ミッドタウン・ガーデンの入り口にあるこの作品。照明で青く照らしているのは、灯籠をイメージしています。コンセプトは庭園ですから。中には彫刻的にも美しいステンレスの骨組みがあるんですが、それが外からは見えない、ぜいたくなつくりです。

青野 ねじれた形には意味があるんでしょうか? 窓が積んであるようにも見えますね。

清水 イスラム圏では、抽象的な幾何学模様を描くことが多いですね。シラゼーも幾何学的な彫刻をつくっていて、動きのある、上昇していくイメージなのだそうです。

青野 もっと上に伸ばしていくと、また違った感じになりそうですね。

清水 上に伸びていくと、値段が高くなっていくんです(笑)。それは冗談ですが、私はこれが一番好きな作品ですね。

青野 どうしてですか?

清水 いや......きれいだから(笑)。

複雑なパターンが月光を反射する。
フロリアン・クラール「フラグメントNo.5」

清水 ミッドタウン・ガーデンをさらに奥に進んでいくと、桂離宮をイメージした月のエリアに入ります。ここからは、桂離宮をイメージした月のエリアです。これはいわば月の東屋、月の光の反射を見るというコンセプト。この作品は、同じ形のパーツを組み合わせてつくられていて、さらにいくつかつなげていくと、直径20mくらいの大きな球になる。それを頭の中でイメージして見てほしいですね。技術的にすごく難しいんですよ。

鑑賞者それぞれに何かを想起させる。
トニー・クラッグ「ファナティックス」

清水 この作品、いろんな角度から見てみると、どこかに何かが見えてくるんですよ。

青野 「さて、ここでクイズです」という感じですが......暗くてわかりづらいですね。

清水 人の横顔が見えるようになっているんです。作者のトニー・クラッグは、「これは何ですか? って言われてもアートなんだから答えられない。自分で考えてくれ」と言っていました。

第3回 六本木デザイン&アートツアー

 一行は、東京ミッドタウンの館内へ。最初に向かったのは、商業エリアの「ガレリア」とザ・リッツ・カールトン東京、オフィスエリアを結ぶ場所。ガレリアには、清水さんがセレクトしたガラス作品が展示されているなど、館内には至るところにアートが並んでいます。

 今回は特別に、一般には公開されていないエリアの作品も鑑賞できることに。パブリックアートツアーは、いよいよ大詰めです。

アナログで描いたデジタルモチーフ。
ピーター・ツィンマーマン「スコープ」

清水 ここは各エリアが結びつく場所で、ピンポイントでカラフルな作品を置きたいと思って選びました。描かれているモチーフは何だと思いますか?

青野 またクイズになってしまいました。上下逆にしても、なんとでも言える感じですが、手で描いているんですか?

清水 樹脂、ようするにプラスチックをたらしていくんです。冷えると固まって、透明な色同士が重なったところが新しい色になるんですね。みなさんが日常的に見ている、テレビやインターネットから抽出したデジタル画像なんです。それを抽象化して、アナログで描いたものがこれ。

作品から差し込む光。
堂本右美「悠々」

清水 このミッドタウン・タワーのエレベーターホールには、窓がないでしょう。でも毎日、ここで働く何百人、何千人という人が通るんですよね。そのときに光を感じてほしいと思って、「光」をテーマに作品をつくってくださいとお願いしたんです。

青野 堂本さんの他の作品とは、ちょっと描き方が違いますね。

清水 ふだんはもうちょっとはっきりした形を描いています。この作品、実はかなり大きいんです。ご自宅のアトリエもかなり広いんですが、それでも、アトリエの奥に置いて、道路の反対側から見え方を確認していましたね。ですから、遠くから鑑賞するのもいいかなと思います。最後に、21階に上がりましょう。

東京の街とパブリックアートの共演。
嶋崎誠「遥かなる記憶」

清水 ここからは、昼間には東京の街の広がりがよく見えます。そこに、重い石は合わないだろう、ガラスの透明感が東京の空とマッチするんじゃないかとういことで選びました。ガラスは、中に光を取り込むと一番きれいに見えるんです。夜は、ライトアップされた東京タワーとの、光の対比を見せるというコンセプトですね。

パブリックアートをもっと楽しむために。

青野 以上で予定していたコースはすべて回りました。せっかくですから、何か清水さんに質問などがあれば、ぜひ聞いてみてください。

参加者 作品として意識していなかったのに、パブリックアートが、ふと日常とリンクするのが面白いなと感じました。

清水 アートだって意識しなくていいと思うんです。通勤中に目にしても、毎日毎日「アートだ」って思う人はそういません。視界に常に入って、それが積み重なっていくと、心の底に何かがたまっていく。きれいな色や形を、自分の中に自然に取り込んでもらえればいいと思っています。

青野 その「役に立たなさ」がいいんだと思います。だから、みんながいろんなことを考えられて、いろんな感じ方ができるんじゃないでしょうか。

参加者 定期的にメンテナンスはしていますか?

清水 ミッドタウンでしています。「妙夢」と「意心帰」については、ときどき「彫刻を磨いている人が現れる」と電話があるんですが、それは作者ご本人なんです(笑)。

参加者 一番高い作品と、安い作品の値段を教えてください。

清水 一番高額なのは、安田侃さんの「意心帰」。モノ自体も高いけれど、運ぶのも設置するのも大変でした。地下だし、完璧に垂直に降ろさないと壊れてしまうから、高度なクレーンテクニックが必要なんです。一番安いものは......言わないほうがいいと思います(笑)。

参加者 アートを取り巻く環境について、日本はまだ欧米には追いついていないと思いますか?

清水 街なかに日常生活とは直接関係ないものがある状態が、本当の街のあり方だと思うんです。たとえばヨーロッパには街なかにマリア様があったりする。きっと江戸の街にもあったんでしょうが、近代になって忘れ去られてしまった。そうすると、精神的に満たされない部分が出てくるんです。だから、パブリックアートは重要。20年前とは雲泥の差ですが、まだまだ足りないから、もっと置きたいと思っています。

青野 鑑賞する側のほうが先をいっているのかもしれませんね。瀬戸内国際芸術祭なんかを見ても、みなさん自然体で、日常生活としてアートを楽しんでいますから。

清水 私は都会にアートを置くことにこだわりたいと思っています。今回、あらためてパブリックアートを鑑賞して、6年たって自分の見方が一新された気がしました。客観視はできないんですけどね、全部自分が関わったものだから。

青野 美術館だと見るだけですが、パブリックアートは触れられるのもいいですよね。たとえばスマホをかざすと情報が出てくるとか、作品情報に簡単にアクセスできるようになると、もっと楽しめるかもしれません。今回は、自分が一番得をしてるなって思えるツアーでしたね。

 

清水敏男(しみず・としお)
1953年東京生まれ。東京都立大学人文学部文学科卒業、パリ・ルーヴル美術館大学修士課程修了。帰国後、東京都庭園美術館キュレーター(1985〜91年)、水戸芸術館現代美術センター芸術監督(1991〜97年)を経て、インデペンデントキュレーター、美術評論家として活動。1997年に清水敏男インデペンデントキュレーター事務所設立、2002年よりTOSHIO SHIMIZU ART OFFICE主宰。東京ミッドタウンをはじめとするパブリックアートのプロデュース、「上海ビエンナーレ2000」などの展覧会、上海万国博覧会日本産業館のアートディレクションなど、国内外で多岐にわたってアートワークをプロデュースしている。2004年より学習院女子大学・大学院教授をつとめる。

青野尚子(あおの・なおこ)
東京都出身。早稲田大学第一文学部・桑沢デザイン研究所ヴィジュアルデザインコース卒業後、六耀社、建築・デザイン専門誌「FP」編集を経て現在フリーランス。建築、アート、デザインのジャンルを中心に活動しているライター。共著に建築を見るべき日本の美術館を54件紹介した「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。PEN BOOKS「やっぱり好きだ!草間彌生」「ルネサンスとは何か」「キリスト教とは何か」「印象派。絵画を変えた革命家たち」「ダ・ヴィンチ全作品・全解剖」共同執筆。PEN、カーサ・ブルータス、VOGUE Japan、ウェブマガジン「honeyee.com」などの雑誌にも寄稿。

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