PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#09 暮らしの中にデザインを感じるワークショップ by 柴田文江【前編】

update_2016.1.6 / text_yosuke iizuka

暮らしの道具をつくることが、世界の見え方を、人生を変えていく。

「もし私が何かひとつプロジェクトをはじめるとしたら、デザインのワークショップか、体験型のイベントを企画してみたいですね」。2012年に柴田文江さんがクリエイターインタビューで語ったこの言葉が、2016年1月9日(土)、アイデア実現プロジェクトの第9弾として実現します。内容は、国産の間伐材を使った「箸づくりのワークショップ」。そこに込められた柴田さんの想いとは?

身の回りにあるものは全部、誰かがデザインしたもの。

インタビュー当時、柴田さんが語っていたのは「自分もデザインの中に生きている」ことを実感できるワークショップを行うというアイデア。「デザインやアートを『暮らしの一部』として体験することができれば、世界の見え方はぐっと広がっていく」という想いは、それから3年あまりが経った今も変わっていないそうです。

「普通は、必要なものはお店で選んで買いますよね。でも、私は実家が織物屋だったこともあって、手づくりのものを生活の中で使っていたんです。それが一般的じゃないと知ったのは大人になってから。そもそも人間はずっと自分たちの手で暮らしの道具をつくってきました。そういう意味では、ものづくりって、本当に根源的な欲求だと思うんです。だから、体験すれば楽しいし、ものやデザインに対する考え方、もっと言えば人生が変わることだってあるんじゃないかな」

一般的に「デザイン」と言われて思い浮かべるのは、ファッションや車、ロゴなどといったわかりやすいもの。でも、昔から当たり前のようにある道具も含めて、「どう使うかを考えられてつくられているものはすべてデザインされている」と柴田さんは言います。

「『デザイン』という言葉の意味の広さがわかると、家の中にあるもの全部が、誰かが工夫してつくったものなんだって気づく。そうすると、ものの見え方も変わってくるんです。このワークショップを通して、そういうことが起こせるといいなって。何かを形づくるだけがデザインじゃない、人の目が変わるっていうこともデザインなんですよね」

箸というプリミティブな道具づくりが、暮らしへの視点を変える。

そんな想いを抱きながらも、実は柴田さん、これまで一度もワークショップを開催したことがないのだそう。大学で教えたり講演をすることはあるけれど、そこにいるのはもともとデザインに興味がある人たち。短い時間で一般の人にものづくりのすばらしさを伝える機会はなかなかありませんでした。そんなときに出会ったのが、長野県で木製品の開発・販売を通して木のすばらしさを広める「木育(もくいく)」という活動を行っている酒井産業という会社。

「最初はデザイン会社MIRU DESIGNを通じて『間伐材を使ったおもちゃをつくりたい』という依頼をいただいて、『buchi』という木製玩具のシリーズをデザインしたんです。"ふち"に着色をすることで、木種も加工方法も異なるさまざまな木のおもちゃに統一感を持たせました。このプロジェクトを進めていく中で、彼らが木育の一環としてお箸づくりのワークショップをやっていることを知りました。刃物を使うし、木を削るし、子ども向けなのにそんなことができるの!? ってびっくりしたんです」

ワークショップをやるなら実際に暮らしの中で役立つものがいいと考えていた柴田さんの考えと酒井産業のノウハウが一致して、今回のアイデア実現プロジェクトは「箸づくりのワークショップ」としてスタートすることに。

「ものづくりを体験すると、デザインを理解できます。オブジェなんかをつくるのも悪くはないですが、実用的なもののほうが暮らしに対する視点が変わっていいなって。そういう意味では、箸ってすごくプリミティブな道具なので、私がやりたかったワークショップにぴったり。自分の手にフィットするように木を削って、食べ物を口に運ぶ道具を自分でつくるって、すごいことじゃないですか」

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