PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学 by 水野学」 第2回「夏野剛さん、ビジネスのデザインって何ですか?」講義レポート

update_2015.9.16 / photo_ tsukao / text & edit_kentaro inoue & yosuke iizuka

「六本木未来大学 by 水野学」第2回は、NTTドコモで「iモード」の立ち上げを行い、現在は慶應義塾大学で教鞭をとるかたわら数々の企業で取締役を務める夏野剛さんが登場。日本ではなぜイノベーションが起こりづらいのか、そしてどうすれば日本はこれから成長できるのか? 2015年9月2日に行われた授業のレポートをお届けします。

日本のGDPは成長率2%、アメリカは200%!?

「過去20年で、アメリカのGDPはどれくらい成長しているか?」。夏野さんの授業は、こんな質問からスタート。正解は200%、わずか2%にとどまっている日本の成長率と比べると、実に100倍も違うそうです。

「アメリカは移民政策を推進しているので、もちろん人口増分で35%成長しています。でも、それ以外の165%は、ひとりあたりの生産額が上がっているということ。一方、人口もGDPもほとんど変わっていない日本は、生産性がまったく向上していません。この現実を見ながら、政策立案や企業経営をしないといけないはずなんです」

「これほどの差があるのはなぜか? アメリカの成長の要因は、製造業じゃないんですね。両国ともにGDPにおける製造業のシェアは20%以下。多くを占めているのはサービス業です。その生産性を、アメリカはグンと上げた。技術力さえあればいいなんて思っていませんか? でも、そうじゃない。ITの普及は、競争力の概念をまったく変え、技術のコモディティ化(均質化)をもたらしました。iPhoneを生み出し、今や世界最大の携帯電話メーカーとなったアップルが、携帯電話の技術を持っていたわけではありません。技術そのものは真似できないものではなくなったんです」

パソコンと携帯の普及によって起きた「効率革命」。

「では、この20年で、ITがどんな革命を起こしたか。それは『効率革命』です。20年前は、自分だけが使えるパソコンはなかったんですよね。携帯が普及したのも1990年台後半から。ビジネスモデルが変わり『ゼロ円携帯』がはじまって、一気に若い人の中で普及しました。携帯もパソコンもないなかで、どうやって仕事をしてたんでしょうか(笑)。それなのに、ほとんどGDPが変わっていない。つまり我々は、何かを間違えているんですよ」

とはいえ、この20年間、テクノロジーで日本が劣っていたわけではないと夏野さん。実際、「アンドロイド」が参考にしたのは、2000年代前半、技術的にも先端を走っていた日本のガラケーで、その誕生の経緯は夏野さん自身が体験してきました。

「日本のハンディキャップは、新しい技術に否定的な人たちがいること。以前、選挙期間中に候補者がホームページを更新するのは公職選挙法違反ではないかと議論になりました。その理由は、ホームページはプリントアウトできるから文書図画の配布にあたる、というもの。今はさすがに改正されましたけど、これがほんの2年前の話。医薬品のネット販売だって、薬事法が改正されたのに事実上禁止されている。効率革命が起きているのに経済成長できないのは、こういうことが行われているからなんです」

新しいビジネスをルールで縛る日本、まずやってみるアメリカ。

「かつて、経済産業省が日本型の検索エンジンをつくる『大航海プロジェクト』という計画がありました。そのとき、一番障害になったのが、知的財産法的に問題があるんじゃないかということ。まだ検索エンジンができてもいないのに、そういう議論が出てくる。ファイル交換ソフト『ウィニー』の開発者が逮捕された、なんてこともありましたね。それがいいか悪いかは別として、日本は新しいビジネスモデルが生まれると、既存の法体制でコントロールしようとするんです」

「アメリカがどうして伸びたかというと、新しく出てきたものは、とりあえずやってみたから。そのいい例が、1990年台後半に流行した『ナップスター』という、音楽データ交換ソフト。音楽業界は壊滅的なダメージを受け、最終的にはサービス停止になりました。でもこれ、最初から国が止めたわけではなくて、あくまで結果を見て法律を整備しただけ。ちなみにその後、ナップスターは定額の音楽配信サービスへと変わりました。こういうアメリカの試行錯誤型のほうが、今の時代には間違いなく合っていますよね」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
新しいアイデアは試してみてから問題点を考える