PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学」第13回「梅田悟司さん、 人が動きたくなる言葉って何ですか?」講義レポート【前編】

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update_2017.8.9/ photo_yuta nishida / text & edit_akiko miyaura

2017年7月19日(火)に行われた六本木未来大学第13回の講師は、企業広告やドラマの宣伝、地域ブランディング、書籍の執筆など、さまざまな分野で言葉を届け続けるコピーライター梅田悟司さん。今回は本大学初となるワークショップを交えながら、"本当に人に伝わる言葉"がどう生み出されるのかを語ってくれました。"言葉にできる"ことの意味をいま一度問い直すような、興味深い講義の内容をダイジェストでお届けします。

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頭の中で構想しているときから言葉ははじまっている。

講義の最初に梅田さんがスライドに映し出したのは、こんな言葉でした。「自分の想いを言葉にする。そんな最も基本的なことが、最も難しい」。

「どんなにいい企画、いいアイデアが浮かんでも、自分の考えていることを言葉にできなければ、意味がない。でも、そんな基本的なことが、最も難しいんですよね。この会場には、いろいろなお仕事をされている方がいらっしゃると思いますが、言葉はみなさんにとって必要なものです。なぜなら、"言語化はすべての表現の基礎となる"から。大事なのは、言語化の"化"の部分。今日は"化"にフォーカスを当てながら、自分の思いを言葉にするということをテーマにお話したいと思います」

言語"化"するということは、言語にする前の段階があるということ。梅田さんは、例を交えながらこんなふうに説明をします。

「たとえば、はじめて空を飛びたいと思った人は、まず、自分の中で"こんなことができるんじゃないか""こうしたら飛べるんじゃないかな"と考えたと思うんです。そのときに描いていたのはイメージだけではなかったはずです。どうすれば実現できるのか、何から手をつけていけばいいのかを、頭の中で言葉を使いながら考えていたはずなんです。みなさんも同じだと思いますが、何か考えを進めるときには言葉を使いながら頭で構想して、具現化する際に言葉に変えていく......つまり言語化をします。言葉は話したり、書いたりするだけではなくて、すでに頭の中で生まれているということ。考えているときから、言葉ははじまっているんです」

"無意識を意識する"ことで、自分の中にあるタネを掘り起こす。

"頭の中で生まれている言葉"という新鮮な発想に、受講生たちも熱心に耳を傾けます。そこで、梅田さんが大事なキーワードとして挙げたのが「思考と言葉の関係性」。

「最も重要なのは、言語化の"化"に当たる部分。言葉だからと言って、外に発する言葉のことだけを考えればいいわけではない。表現を表面的になぞりながら、いい言葉をつくっていくだけでは足りないんです。みなさんの中には思考がある。まず、その頭の中にある思考を掴んで、掴んだものを言葉に変えていくというプロセスが必要です。わかりやすく言うと、"自分の中にあるタネを掘り起こす"ということ。タネとは、言葉の前の段階ですね。自分が伝えたいと思っていることがなければ、言葉は生まれないはず。気持ちがある、頭の中にアイデアがある、思いがある。それを言葉に変えるっていうことが、とても大切だと僕は思います」

「無意識を意識する」ことが、タネを掘り起こすことにもつながります。無意識というのは、まさに人の頭の中にある思考の部分。考えていること、頭に浮かんでいることを意識することが、すべてのはじまりだと言います。さらに、言葉には「見えている言葉」と「見えていない言葉」が存在すると続ける梅田さん。

「たとえば、目に見えている言葉というのは、みなさんがいまメモに書いている言葉。そして、僕が話している言葉も形として目には見えていないけど、知覚できていますよね? でも、世の中には知覚されていない言葉がたくさんある。それが、みなさんの頭の中にある思考なんです」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
頭の中にある思考を掴み、言葉に変えていく

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表面的ないい・悪いじゃなく、コピーにたどり着いた道筋を見る。

ここまでが「言葉にできる」ことを理解するために、前提として頭に入れておくべき内容。そして、「前段が長くなりましたが」と続いて自己紹介へ。

「あらためまして、梅田悟司と申します。会社ではクリエイティブ・ディレクター、コピーライター、あるいはコンセプターといった名刺を持っています。肩書きが全部カタカナの人って、信用ならないですよね。今日は、ちゃんとみなさんのためになるような話をするつもりですが、話半分で聞くっていう姿勢でもかまいません(笑)」

そう言って会場をなごませると、自身がこれまでの関わってきたプロジェクトの話を通し、どう言葉を生み出してきたかのプロセスを語っていきます。まずは、誰もが知る日本コカ・コーラの「ジョージア」のブランディングに関するお話から。

「山田孝之さんが登場して、CMの最後に吐息のようなカッコいい声で(笑)、『世界は誰かの仕事でできている』と言う、あのコピーを書いています。ジョージアのキャンペーンのなかで特に印象的だったのが、ジョージア40周年の広告です。この特別バージョンで伝えたメッセージは、『この国を、支えるひとを支えたい』というもの。でも、このコピーがいいか悪いかということではありません。言葉を紡いでいく上で重要なのは、いい・悪いより、どうすればこの言葉にまで到達できるのかを紐解くこと。(会場で流した)CMをご覧いただくとわかりますが、ジョージアの40年の歴史は日本の高度経済成長期と大きく関わっています。働く人たちに常に寄り添いながら、ジョージアは歩んできた。こうした事実やブランドとしての姿勢を踏まえ、"この国を支えている人たちを支える存在として、これからもあなたの隣にいたいんです"という普遍的なブランドの本心が、このコピーには込められています」

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言葉の設計は、すべての表現物の設計とほぼ同じ。

コピーライターが活躍できる領域は、企業広告だけではありません。例えば、梅田さんはドラマの番組宣伝にも関わっており、2016年の4月期に放送されたTBSテレビ 日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』ではコミュニケーション・ディレクターとして携わっています。

「このドラマは刑事事件を専門に扱う弁護士たちの物語です。そのなかで肝となるのが、日本の刑事事件では一度起訴されると99.9%有罪になってしまうという事実です。こうした社会的な問題を浮き彫りすることが目的なので、タイトルは『99.9』。ですので、ビジュアルでもこの数字を大胆に使いました。ただ、『99.9』だけでは意味が通じない。そこで、残りの0.1%に対して、主人公たちがどのように向かい合っているのかを表現することで、ドラマの内容を伝える方法を取りました。メインビジュアルでは『無実を証明できる確率、0.1%』というメッセージを入れる。そして、それぞれの登場人物のキャラクターに合わせて『あきらめない。たとえ0.1%でも』『誰かの人生にとって、0.1%は希望なんだ』『0.1%に懸けるなんて、馬鹿のやることだ』と書き分けることで、0.1%に懸ける思いの違いを明確にしていく。こうしたキャンペーン全体における言葉の構造を設計することによって、99.9%という無理難題に対して、つまり、たった0.1%の可能性にかける弁護士たちの話なんですよ、と表現しました」

また、メインビジュアルに書かれたコピーを、役者たちが口にしているCMも印象的。実はあえてナレーションでも、そのままの言葉が使えるように、コピーライティングの段階から表現を考えていたのだと言います。

「言葉の設計って、実はすべての表現物の設計とほぼ同じなんです。だから、最初にグラフィックの際にちゃんと言葉を決めておけば、今回のCMのように1つのコンテンツのいろんな場所で言葉を転がすことができる。ワンコンテンツ・マルチユースって言うと、わかりやすいかもしれないですね。こんな感じで、通常の広告もあれば、ドラマの宣伝、ブランディングなど、いろいろな仕事をさせていただいています。あと、今日お越しのみなさんはお読みいただいているかもしれませんが、本を書いたりもします。そうすると言われるんですよ、『なぜ、そんなにできるんですか』『マルチな才能ですね』って。たぶん、いじわるというか、何でそんなに注意力散漫なんですか、興味が広いんですかみたいな意味で言われているんでしょうけど(笑)。でも、今日はそれを完全否定したいと思います。マルチな才能なんてことはなく、むしろその逆。"言葉にできる"という、1つの能力を横に展開しているだけなんですよ」

【クリエイティブディレクションのルール#2】
どうすれば、その言葉に到達できるかを考え、紐解く

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