PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#13 「現代アートセミナー by Chim↑Pom」

update_2016.11.16 / photo_taizan kamijo / text_yosuke iizuka

六本木の夜の芝生で語られた、現代アートを巡る一夜限りのトークイベント。

「現代アートセミナー by Chim↑Pom」は、今から3年前、アーティスト集団「Chim↑Pom」のエリイさん卯城竜太さんが「六本木アートナイト2013」での公開インタビューで語った「高所得者の所得税の一部を使って美術セミナーを開く」というアイデアから始まったプロジェクト。2016年10月22日(土)、そのプレ・イベントとして、「六本木アートナイト2016」を舞台に再びふたりが集結、トークイベントを開催しました。その様子をお届けします。

©六本木アートナイト実行委員会

六本木で開催された"アートの饗宴"に、Chim↑Pom登場。

「現代アートセミナー by Chim↑Pom」が行われたのは、今回7回目の開催となる「六本木アートナイト2016」。「六本木、アートのプレイグラウンド〜回る、走る、やってみる。〜」をテーマに3日間にわたって開催された、六本木の街を代表する一大アートイベントです。メインアーティストの名和晃平さんが、プラントハンターの西畠清順さん、バルーンアーティストのデイジーバルーンとコラボレーションしたインスタレーションを中心に、六本木ヒルズや国立新美術館、東京ミッドタウンをはじめとする六本木の街のいたるところでイベントや展示が行われました。

プレ・イベントの会場となったのは、東京ミッドタウンの芝生広場。Rhizomatiks Architectureが手がける"脳波でカーテンがランダムに動く"作品「カーテンウォールシアター」が特別ライトアップされ、多くの人で賑わう中、エリイさんと卯城さんが登場。参加者のみなさんがふたりを取り囲むように車座になって、トークがスタートしました。

トークのはじまりは、新宿・歌舞伎町でChim↑Pomが行った展覧会「また明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too?〜」の話から。この展覧会は、東京オリンピック開催に向けて解体予定の歌舞伎町振興組合ビルを一棟まるごと使用して行われたもので、会期終了後には展示作品をビルもろとも取り壊し、その後作品の残骸を拾い集めて再構築、2017年初頭にプロジェクト第2弾として展示するという内容です(開催は2016年10月15日(土)から10月31日(月)まで)。キーワードは「スクラップ・アンド・ビルド」、まずは2020年東京オリンピックに向けて再開発が進む、現在の東京の姿に迫る展覧会のコンセプトの話をどうぞ。

リアルな都市を浮かび上がらせる、現代アートの展覧会。

卯城 会場になったビルは最初の東京オリンピックが開催された1964年に建てられたんだけど、まず所有者の歌舞伎町振興組合が面白い組織で。戦後、焼け野原だった新宿で地主たちが復興のビジョンを話し合って、歌舞伎座を呼ぼうとか劇場型の都市にしようとか、"グラウンドゼロ"状態から街づくりを行った先達の組織。結局歌舞伎座は来なかったけど、名前だけは残って今の歌舞伎町になった。

エリイ 最初は歌舞伎町がああいう街になるとは思っていなくて、楽しい街にしようと思っていたのに、悪の巣窟になっちゃった(笑)。

卯城 「民主的文化都市を目指す」と語っていたよね。今回はけっこう攻めきっている展示なんだけど、そもそも振興組合にプレゼンしたときからかなり寛容で。ああいう街の振興組合だからか、彼らは基本的に「善悪をジャッジしない」という立場でいるらしいんです。ダメ出しと自粛ばっかりの昨今において珍しいよね。でも、アートってそもそも現存する基準や常識を疑ってナンボだし、根源的にそういう立場にいるべき存在。彼らがアートに詳しいかどうかじゃなく、ジャッジしないという立場がウチらにしっくりきた。

エリイ ビルの5階に振興組合が入っていて、地下2階はクラブ、3階は雀荘、4階にはハプニングバーが入っていて。外には「ラーメン二郎」の看板がついたままだから、展覧会に来てくれた人の列がラーメン屋に並んでいるようにしか見えない(笑)。

photo by Yuki Maeda

卯城 2階にはぼったくり防止のメッセージが外に掲げられているんだけど、一棟の中でカオスすぎるよね?(笑) このビルを展示作品とともに11月から取り壊すんですよ。そこから再構築がはじまる、つまり作品自体に「スクラップ・アンド・ビルド」を体験させて、ビルと運命をともにすることが作品のプロセスになる。

エリイ この展覧会のタイトルが、「また明日も観てくれるかな?」なんですよ。

卯城 「笑っていいとも!」のお決まりのフレーズなんだけど、最終回もタモリはその言葉で締めたんです。このタイトルは、展覧会がビルの最終回のようなイメージで付けました。終わりとその後、ルーティーンとかを考えるうえでめっちゃいい言葉だし、何より「いいとも」が新宿から発信されてきたこともハマった理由だと思う。展覧会では、歌舞伎町についてもいくつか作品化しています。デリヘル嬢を呼んで作品をつくったり、かなり自由に表現できたよね。

photo by Kenji Morita

エリイ 作品は観に来ればわかるじゃん。善悪の話だけして!

卯城 はい(笑)。振興組合に展示プランを見せても、倫理的に問題があるかどうかには興味がなさそうだったよね。

エリイ 気にしていたのは、消防法に引っかかるかどうかくらい。

卯城 てか、振興組合だけじゃなく、すぐそばにある交番からもほとんど何も言われなかったし。

エリイ 交番があるからできたんだよ。歌舞伎町は写真や映像に映りたがらない人が多いから、長期に渡って撮影するのが難しくて。昔、歌舞伎町でその筋の人を893人撮影するっていうビデオを撮ったじゃん。

卯城 「COUNT UP 893(カウントアップヤクザ)」ね。普通に撮影するだけでめっちゃ怖かった。

エリイ マクドナルドの2階から追われて飛び降りたよね(笑)。今回も街の映像を流しているんだけど、それができるのは交番が会場の斜め前にあるから。奇跡の立地って言われている。

卯城 おれもそう思う。会期中は地下でライブ、4階でDJイベントもやっていたんだけど、4階は窓全開、地下にいたってはコンクリで埋められていた階段を掘り起こして使ったからドアすらない(笑)。だから2フロア分の爆音が外にダダ漏れだったのに、何も言われなかった。

エリイ だって、歌舞伎町では毎日大変なことが起きているんだよ。ウチらの善良な展示に対しては何もない。毎日、それどころじゃないんですよ。

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