PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#13「現代アートセミナー特別編 by Chim↑Pom」

update_2017.2.15 / photo_chikako murabayashi / text_yosuke iizuka

アートを売り、アートを買う。作家とコレクターの"共犯関係"の結び方。

2017年1月30日(月)の夜、六本木の某所で開催された「現代アートセミナー特別編 by Chim↑Pom」。この参加者限定のクローズドイベントは、Chim↑Pomのエリイさんがクリエイターインタビューで語った「高所得者の所得税の一部を使って美術セミナーを開く」というアイデアから生まれたもの。お酒とフィンガーフードが用意された会場に登場したのは、エリイさん、卯城竜太さん。六本木アートナイト2016でのプレ・イベントで語られた「プロジェクト型現代アートを買う」という話を出発点に、現代アートと「お金」との関係について語り尽くしました。

プロジェクトタイプのアートをどう買うかが試されている。

卯城 「アートを買う」っていうと、好きで持っておきたい人と、投機目的の人がいると思うんだけど。

エリイ 買うときって、そのどちらの気持ちもあるよね。

卯城 エリイちゃんだったら価値が高くなったら売りたい?

エリイ 売らないと思う。売らないんだけど、買うときには「これ、絶対に高くなる!」っていう気持ちは必ずあるな。

卯城 この前、ZOZOTOWN社長の前澤友作さんが、バスキアの作品を62億円で落札したことがニュースになったじゃん。バスキアは若くして死んだけど、まだ死後30年もたっていない。生きていたらまだ50代だし。ホント、めっちゃ高いよね。

エリイ やっぱり、作家が死ぬと高くなるよね。

卯城 プライマリーマーケットのギャラリーっていう場では、コマーシャルな作家もプロジェクトタイプの作家もごった煮状態だけど、そこからオークションやフェアとかのマーケットと、ビエンナーレみたいなタイプに分かれていく。

エリイ 私、金持ちがアート作品を観ながらレストランでごはんを食べる会みたいなのに行ったんだけど。その人たちはサザビーズにはすごく詳しくて落札してるみたいで、エンリコ・カステラーニのけっこういい作品や、イブ・クライン、ジェフ・クーンズとかの作品を持ってるのに、Chim↑Pomのことはもちろん知らなくて。

卯城 偏りがあるよね。アートを盛り立てるマーケットと、ビエンナーレとか芸術祭とか、プロジェクト系の2つは、入り混ざっているんだけど、遠く離れている感じがする。

エリイ 別に金持ちがChim↑Pomを知らなくていいんだけど、特定のアートには超詳しかったり、落差が激しいんだよ。もっと全体感が欲しいよね。

卯城 全体感って? ザックリってこと?

エリイ たとえば算数だったら、足し算は知っているけど割り算を知らない人みたいな感じ。人によって知識の差がこんなにあるのはアートぐらいじゃないかな。

卯城 今のアートシーンには面白い現象があるよね。アートバブルとかいわれていた10年ぐらい前までは、マーケットの評価がそのままアーティストの評価として反映されていたと思う。でも、ここ数年、マーケットの評価とアーティストとしての影響力のバランスが崩れてきていて。

エリイ 今はバブルのときよりも価格が高くなってるよね。

卯城 そうそう。イギリスの雑誌『ArtReview』で影響力の高い人物を「Power100」として毎年ランク付けしてて、ちょっと前までは、ダミアン・ハーストとか、マーケットを牽引していた人がいっぱいランクインしてた。でもそれがどんどん変わってきていて、今はヒト・スタヤルとかシアスター・ゲーツとかトレバー・パグレンとか。この3人は日本ではあまり紹介されてない、社会実践やプロジェクトタイプのアーティスト。アイ・ウェイウェイなんかは知られてるけど。

エリイ トレヴァー・パグレンの作品は売れてそうだけど。

卯城 たしかに。マーケットとは入り混じっているような状況だよね。ただ、トレバーはChim↑Pom発案の国際展「Don't Follow the Wind」にも参加してもらったけど、どうやってこのプロジェクトのファンドレイジングをするかってときに、「オークションは嫌だ」ってはっきり言ってた。プロジェクトとマーケットの関係はまだこれからじゃないかな。

エリイ 日本人でプロジェクトタイプの作品を「買う」という気持ちで好きなのは数パーセントくらいじゃない?  だって、物質社会で、みんなモノがすごく好きだから。

卯城 うん。Chim↑Pomの活動が好きだっていうコレクターに何か買いたいって相談されたんだけど、どうしても「飾れるもの」を考えちゃうって言ってた。

エリイ 買った作品は人に見せたいしね。

卯城 物質的なアートは盤石だとしても、アートマーケットは、もっと非物質的な実験を求められるようにもなるんじゃないかな。

「消費」ではなく「表現」としてのアートの買い方。

エリイ いずれ過ぎ去ると思うけど、プロジェクトタイプのアートはブームだよね。ティノ・セーガルの売り方がすごくいい例。

卯城 ティノ・セーガルは、ヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を獲ったりしている、コンセプチュアルアートを牽引しているアーティスト。それまでのコンセプチュアルアートの売り方は、たとえば穴を掘る作品だとしたら、その指示書などを売っていた。

エリイ 穴の深さは何センチ、こういう条件の下でこう掘るとか、細かい指示書やコンセプトシートを売るんだよね。

卯城 だけどティノ・セーガルはもっとぶっ飛んでて。コンセプチュアルアート特有の非物質性を売買においても徹底している。たとえばパフォーマンス作品は売るけど、その指示書や領収書が一切存在しないよう要求している。だから一説によると面談をするらしい。その間、契約書とか指示書も紙としては存在しないから。

エリイ 口頭でしか作品を売らないんだよね。偽ティノ・セーガルに騙されたりしないのかな?

卯城 「ティノ・セーガルですけど」って電話がかかってきて?(笑)

エリイ 言葉だけだったらわかんないじゃん。

卯城 そういう不確かな部分も面白いんだろうね。ほかにもコンセプチュアルアーティストだと、プロジェクトの様子を撮影した動画や画像をハードディスクにまとめて、好きなように展示してくださいっていうやり方の人もいる。買い手に、アートの消費者ではなく表現者になるように求めているわけ。ティノ・セーガルもそうだけど、消費とは違う体験をコレクターに迫っている。そういう人たちは、マーケットを通して当事者をつくっていくことに敏感だよね。

INTERVIEW

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