PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第15回「寺尾玄さん、新しい体験を提供するって何ですか?」講義レポート【前編】

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update_2017.11.15 / photo_yuta nishida / text_emiri suzuki

2010年に自然界の心地よい風を再現できる扇風機「GreenFan」を世に送り出し、家電業界に革命を起こしたバルミューダ株式会社代表取締役の寺尾玄さん。以降、トースターや蒸気炊飯器などヒット商品を次々と発表していますが、過去には会社の存続危機もあったと言います。そんな寺尾さんによるものづくり、体験づくりは一体どんな考え方から生まれてくるのでしょうか? 2017年10月20日(金)の講義の様子をレポートします。

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絵のうまさより、テクニックより、クリエイティブディレクションに大切なこと。

この日、クリエイティブディレクションに関わる仕事をしている、あるいは興味がある参加者が多いと知った寺尾さん。絵がうまいことよりも、テクニックを持っていることよりも、クリエイティブに携わる人間にとって大切なのは"人としての成熟度である"というお話から、講義は始まりました。

「日々、会社でクリエイティブディレクションの仕事をしながら、優れたデザイナー、クリエイターに囲まれて過ごしていますが、その中でも本当にトップレベルだと思う人にはある特性があります。それは、人として成熟していること。どんなに絵がうまいことや器用なことよりも、人としての成熟度というのがクリエイティブディレクションやデザインといったアウトプットにものすごく大きな影響を与えるな、と常に感じています」

少し控えめな印象にするか、もしくは主張を強くするかはクライアントワークでもデザイナーに大きく委ねられている部分。けれど主張が強いデザインは飽きられてしまうのも早い傾向にあります。ただ主張ができる、ということがクリエイティブなのではない。それよりも、どのように物事を考えてきたか、自分を磨いてきたのかといったことがクリエイティブの人間には大切でアーティストとの違いなのです。

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世界放浪の旅と音楽の道で学んだ、自分が本当にやりたいことの重要性。

「いま、バルミューダという会社は『クリエイティブで夢見た未来をテクノロジーの力を使って実現し、世界の役に立つ』という目標を掲げ、事業を行っています。そんななかでここ数年は、いまお客さんが買っているのは"物"ではなく、"体験"なのではないか、という仮説を立て、その通りに事業を実行してきました。そこからトースターがよく売れ、会社も大きく発展している最中です。しかしここに至るまでは、非常に険しく長く暗く辛い、いろいろな旅路をたどってきたわけですが」

寺尾さんの原点は、17歳の頃の体験にあります。自分が将来できることについて、持っている可能性を限定するような進路調査アンケートに嫌気がさした寺尾さんは、アンケートを提出する代わりに退学届を出し、欧州への放浪の旅へ。1年間の旅から帰ってきたあと、「何でもやってやろうという気持ちだった」と言う寺尾さんはまだ18歳。まずは音楽をやろう、と楽器店でアコースティックギターを1本買い、覚えた4つのコードで書いた曲に自作の詞を乗せたものを、レコード会社に送ったところ、事務所と契約が決定。その間、なんとたったの3ヶ月でした。

「『やっぱ天才って違うわ』なんて思った勘違いの天才くんは、そこから約10年間、ロックスターになろうと、もがき苦しみ続けました。そして結果、ロックスターにはなれませんでした。始めた当初は自信に溢れ、怖いものしらずで何にでもなれる、とりあえずロックスターになっておこう、くらいの欲張りな夢を持ち、本当になんでもできると思っていたんです。けれど、ライブをやればやるほど声が出なくなり、ステージが恐ろしくなり、うまくいかないことの連続で、やがて音楽の夢というのを諦めることになりました」

ひどく落ち込んだ寺尾さんでしたが、もう一度自信を取り戻そうと、アルバイトをしながら自分が「これしかない!」と思えるバンドを始めましたが、そのバンドも、ほどなくして解散に至ります。

「終わらせなければ、夢って終わらないんです。夢が終わるときって、負けた時じゃない。じゃあいつ終わるのか。夢のオーナーの情熱が終わったとき、です」

音楽への夢は自分で終わらせたものの、何かを生み出したいという情熱は自分の中にまだまだほとばしっていたんだと寺尾さんは語ります。

【クリエイティブディレクションのルール#1】
人として成熟し、情熱を持ち続ける