99 津森千里(ファッションデザイナー)前編

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かわいいのに、凛としていて個性的。女性に圧倒的な人気を誇るファッションブランド「TSUMORI CHISATO」は、「ガーリィでセクシー、大人のためのファンタジーがあふれる、ハッピーなテイスト」を提案することをコンセプトに掲げています。津森千里さんのつくる服は、なぜ着る人をハッピーにするのでしょう。ブランドの立ち上げから29年を迎えた津森さんに、洋服づくりのこだわりや、アイデアの源となっているもの、そして人や街をハッピーにするヒントをうかがいました。

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update_2018.11.21 / photo_yoshikuni nakagawa / text_ikuko hyodo

過去を振り返って気づいたのは、変わっていないこと。

「WAKU WORK 津森千里の仕事展」 「WAKU WORK 津森千里の仕事展」

2018年10月6日(土)~24日(水)に21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催された、津森さんの初の個展。ブランド初のパリコレクション出展作品をはじめとするアーカイブ作品や、ぬいぐるみやマトリョーシカなど長年収集してきた私物、貴重なデザイン画などを展示。会場の細部に至るまで本人が演出を手がけた。

21_21 DESIGN SIGHT 21_21 DESIGN SIGHT

デザイナー三宅一生さんが創立者となり、2007年、ミッドタウン・ガーデン内に竣工したデザインの展示施設。地上1階地下1階の低層建築で、設計を手がけた安藤忠雄さんは、三宅さんの服づくりのコンセプト「一枚の布」に着目して、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根を考案。津森さんの展覧会が行われたギャラリー3は、開館10周年を機に新設された。
Photo: Masaya Yoshimura

 2018年10月6日(土)~24日(水)に行った「WAKU WORK 津森千里の仕事展」は、これまで私が40年ほどやってきたファッションデザインの仕事を集めて、みなさんにお届けする場づくりを心がけました。私としてはワクワク楽しく仕事をしてきた結果なんだけど、これだけ一堂に会すると、自分の頭の中を覗かれているみたいな恥ずかしさもあったりして、見てくださった方はどんなふうに感じるのかしら? 自分でも頭の中がどうなっているのかときどきわからなくなっちゃうくらい、いろんなことをやってきたから、このごちゃごちゃした感じこそ津森千里だな、みたいな思いもちょっとあるんです。混沌としているのも嫌いじゃないので。展示のしかたにも、自分のにおいを振りまきたいとか、自分の世界で埋め尽くしたいっていう欲望が表れていますよね。

 会場になっている21_21 DESIGN SIGHTを設計された、安藤忠雄さんには申し訳ないですけど(笑)、子どもの頃、小屋をつくってそこを全部自分の色に染めちゃうのがすごく夢だったんです。だからこの展覧会が、津森千里の城みたいな場所になったんでしょうね。

 これまでの仕事を振り返ってあらためて思うのは、変化がないってことかな。会場のショーケースに、1990年に「TSUMORI CHISATO」を立ち上げたときのコンセプトを展示しているのですが、そこにはこんな言葉が書かれています。

 "年齢にも 職業にも 何にもとらわれない 着たいものを 着たい時につくる 何よりも大切にしたいのは 素直に表現すること 可愛いものは可愛い 良いものは良い TSUMORI CHISATO ワールドには スポーティも 民族調も フェミニンもあります そこは あたたかく ほのぼのとした いごこちの良い世界でありたいと願っています"

 今やっていること、考えていることとまったく変わっていないんですよね。それがずっと続いていることは、自分でもすごいなと思ったし、好きなものを好きなときにつくることをいまだにできている環境が、ありがたいなって思います。

食べたいものを考えるように、着たい服をつくる。

 私にとって好きな洋服をつくることは、「今日は中華にしようかな? それとも和食がいいかな?」みたいに、そのとき食べたいものを考えるのと一緒なのかもしれません。食べることって基本的にみんな好きだし、当たり前のことだから絶対に飽きないし、続けられるじゃないですか。服をつくることを、食べ物に例えると、すごくシンプルでわかりやすいなと思って。

 生地を買ったり、アイデアを貯め込んだりするのも、すぐに使うかわからないけれどもいつか使えるかもしれないって、冷蔵庫に食材を入れていく感覚と似ているんですよね。一見合わなそうな素材をミックスしたら、意外とおもしろいものができたりするところも料理と同じ。だからストックがなくなると、すごく不安になっちゃう。うちの冷蔵庫と一緒で、私の頭だってもちろんそういうときもありますよ。もうすぐ夕飯でみんなが帰ってくるけど、冷蔵庫の中になにもない......どうしよう! みたいなね。展示会が近づいて焦っているときの感覚は、それに近いかな(笑)。