95 藤本実(ライティング・コリオグラファー)後編

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「SAMURIZE from EXILE TRIBE」の光る衣装の生みの親であり、ウェアラブル・コンピューティングとダンスパフォーマンスを融合させた作品で注目される、藤本実さん。「世界の中で自分しか生み出せないものをつくりたい」と、さらりと言ってのける34歳のスーパークリエイターは、身体表現に光の要素を加えた「ライティング・コリオグラファー」という新たな表現の世界を切り拓いてきた。原点にあるものは何か、身体と光による表現の未来とは? そして、人々からLED博士と称される藤本さんが考える六本木を舞台にしたエンターテイメントのアイデアとは?

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update_2018.8.15 / photo_yoshikuni nakagawa / text_tami okano

生で見るからこそ伝わるインパクト。ライブ感が最大の強み。

 これって、自分の作品の特徴だと思うのですが、映像で見ても、そのおもしろさとか凄さが、まったく伝わらないんです。「映像映え」しない(笑)。LEDを9,000個付けた人間が動く、しかも50体、目の前で歩き出すという衝撃は、なんだか違う惑星にでも来たんかな、と思えるくらいのものなのですが、映像で見たら、ふーん、って感じなんですよね......。伝わらない、ということ自体は残念ではあるけど、でも、「ライブ感」や「ストリート感」は僕の原点であり美学。最大の強みだとも思っています。

 人間ってたぶん、自分が何に衝撃を受けたかでつくるものが変わってくるのだと思います。映画をつくりたい人は、映画に感動した経験が少なからず、あるのではないでしょうか。僕は生でダンスを見たときの、あの体感が忘れられないから、「ライティング・コリオグラファー」を追求しているわけで、そこにある魅力以外のものは、捨ててもいい。

 できることであっても、捨てていく。画像処理とか、センサーとか、新しく出た技術は全部、学生時代に一度は自分の中に入れてみたけれど、でも、これは自分ではなく、他の誰かがやったほうがいいものができる、というものは、潔く、自分が扱うものとしては捨てようって、決めました。残ったものは、生で見るからこそ伝わるインパクト。それをなぜ、人間でやっているかというと、やっぱり、「動く」ということに関しては、人間が一番「楽」なんです。人間みたいに動くロボットをつくろうとすると、研究に何年かかるねん、みたいな話で、結局、「ちょっと動いてみて」と言って一番簡単に動けるのは、今はまだ、人間だから。

人間の動きを超える"何か"が、新たな表現を切り拓く。

『Robotic Choreographer』 アルスエレクトロニカ

人間より大きく・人間より速いパフォーマーをつくる、というコンセプトから生まれた、世界初のパフォーマンス専用ロボットアームプロジェクト。全長約3メートル・2軸の無限回転・1秒間に最大5回転する上部アームなどの特徴を持つ。IPA(情報処理推進機構)の第2回先進的IoTプロジェクト支援事業に採択された。
photo by yoshikazu inoue

 それでも、何年先なのかはわからないけれど、そう遠くない未来、僕が生きている間のギリギリくらいには、人間の動きを超える「人間以外のもの」が、出てくるという気はします。ロボットの研究においても、今は「人間ができること」を目指していると思うのですが、きっと、人間ができることの「その上」を目指すようになる。僕としては、その次元になった時にも、ちゃんと演出ができるようになりたい。例えば、人間より大きく、人間より早くて滑らかな有機物なのか、何なのか、その"何か"ができたときに、あらたな表現が切り拓かれるんだろうと思うから。

 それを考えるきっかけとして取り組んでいるのが、3メートルのロボットアーム『Robotic Choreographer』です。これ、1秒間に、ロボットアームが、5回転するんです。言葉ではもちろん、映像でもそのすごさがまったく伝わらないんですけど......。生で見るとめっちゃ怖いです。この速度の動きがもし滑らかになったら、完全に人間に勝つでしょう。僕としては、最初に、3メートルのロボットアームがガンガン、ダンスしているイメージがあり、そんなものは世の中にまだないからつくりたい、と言ったら、国のプロジェクトとして研究費を出していただくことができました。最初のモデルをつくるだけでも1年くらいかかっているんですけど、それでも開発としては早い方だと思います。まだ誰も見たことのないものにお金を出してくれるなんて、日本も捨てたもんじゃない(笑)。開発はまだまだ続けますよ。