89 丸山敬太(ファッションデザイナー)後編

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ファッションデザイナーとして自身の名前を冠したブランドを立ち上げ、20年以上第一線で活躍している丸山敬太さん。渋谷区出身の丸山さんにとってお隣にある六本木は、大人になる過程でさまざまなことを教えてくれた場所だったようです。そんな丸山さんの六本木にまつわるエピソードとともに、六本木がこれからの時代を担う若い世代にとって魅力的な街になっていくために必要なことをお聞きしました。

>前編はこちら

update_2018.2.14 / photo_mariko tagashira / text_ikuko hyodo

頭の固いオジサンにならないために。

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ホテルやレストラン、観光地など、旅行に関する口コミをチェックしたり、価格比較ができるウェブサイトおよびアプリ。本社のTripAdvisor, Inc.は米国マサチューセッツ州ニュートンにある。

 一時期は渋谷も新宿も池袋も、東京の街が同じように見えたのですが、景気が悪くなっていろんなものが淘汰されて、その街らしさが戻ってきましたよね。家賃の高い表通りなんかは、いまだにチェーン店が並んでいるけれども、ちょっとした路地に小さいステキなビストロができていたりして、外国の方たちがそんなところにも結構来ているんですよね。一体どうやって調べるんだろうって思うんですけど、聞いてみるとやっぱりトリップアドバイザーや口コミとかで来られるみたいで。しかも最近は、東京が通過点になってしまって、地方のおもしろいところにどんどん外国人が行くようになっているじゃないですか。外国人にとって魅力的な地方が増えていることは頼もしくもあるんだけど、東京にしかない魅力のPRが足りていないんじゃないかなとも思うんです。

 たとえば僕らは、こうやって当たり前にアマンドのケーキなんかを食べていますけど、フランス人とかがこれを食べたら、たぶん新しい食感なんですよ。日本的にアレンジされている繊細なケーキは、本場にはむしろない。コンビニのお菓子の優秀さだって相当なものですよ。そういうことをもう一回見つめ直すと、意外な発見がありますよね。当たり前に見えるけど、当たり前じゃないことっていうのはやっぱりフレッシュだし、フレッシュなことこそがその街の個性だったりするから、もっと大事にしてほしい。そういった視点は、物事の決定権はあるけれども街に出ようとしないオジサンには、ないものですから。その点、オバサンはいつまでたってもミーハーだから、いろんなところに出かけていく。これからは脱オジサンの時代ですよ(笑)。

 僕が言いたいオジサンっていうのは、年齢じゃないし性別でもないんです。若いオジサン予備軍もいっぱいいるし、女性でもオジサン化してる人っているじゃないですか。そういう人たちが引っ張ってきた社会が幅をきかせている限り、日本は何をやっても変わらない。自分の保身をやめて未来のことを考えていかないと、本当の意味で魅力的な都市にはならないですよね。

 オジサンにならないためには、頭を柔らかくしておくことがとても大事。新しいものをすべて受け入れなくてもいいし、古いものをすべて拒絶する必要もないけれども、食わず嫌いが増えてしまうと、どうしても頭は固まっていくものだから。食べてみて好きじゃなかったっていうのは、その人の嗜好だからいいんですよ。だけど食わず嫌いで物事を判断するのは、オジサン化の始まりだから気をつけないと。

リアルな経験のすばらしさを大人が見せてあげる。

 僕が10代の頃の六本木は、大人が遊ばせてくれる街だったから、いろんなものを見せてもらったし、食べさせてもらったし、経験させてもらえて、すごく楽しかったし、勉強にもなりました。背伸びをすればするだけ、かわいがってくれたり、引き上げてくれたりする大人がそこにはいたからね。僕らの世代がそういった大人たちのあとを継いでいないことが問題ではあるのだけど、社会っていうのは本来そうじゃなきゃいけないですよね。今みたいに何かと幼稚化するのではなく、大人として扱われたいと背伸びしたくなるような環境を大人たちがつくってあげないと、未来は変わらない気がして。

 だけどなんとなく、そういう空気を最近の10代後半とか20代前半の子たちに感じることがあるんですよね。もしかしたらそれは、バブル期の親が育てた子どもだからなのかなっていう気がしていて、彼らのDNAが受け継がれているのかもしれない(笑)。今の若い世代の子たちは、海外がどうとか、日本がどうっていう変な垣根もなくて、「つながってるよねー」みたいな感覚があるから、しゃべっていると結構おもしろいんですよね。一方でつながっていると思っているからこそ、「別に行かなくてもいいじゃん」ってリアルな経験を否定してしまうところもあるから、そのすばらしさを見せてあげるのがこれからの大人の役目なのかなって思います。そうなったら、今の子たちのほうが自分のものにしていくのが断然早いから、羨ましいですよ。