80 蔦谷好位置(音楽プロデューサー/作曲家)前編

蔦谷好位置(音楽プロデューサー/作曲家)

YUKI、Superfly、ゆず、エレファントカシマシ、木村カエラ、Chara、JUJU...。現在の日本の音楽シーンを代表する数々のアーティストたちへの楽曲提供やプロデュース、アレンジを手がけてきた蔦谷好位置さん。たしかな技術と知識、伝統を重んじながら常に新しい領域での活動を続けてきた蔦谷さんが語る、音楽の進化に必要なこと、六本木の可能性、終わらないクリエイションへの挑戦について。インタビューは今回撮影を行なった六本木西公園の話から。

後編はこちら

update_2017.5.10 / photo_mariko tagashira / text_yuto miyamoto

六本木とともに歩んだ15年。

六本木西公園
六本木通りから1区画入ったところに位置する公園。「六本木」の地名にちなんで6本の木をイメージしたカラフルなモニュメントがある。

 いまから約15年前の26歳のとき、いちばんお金がなかった頃に、チャンスがあればいろんな人に会って自分の音楽を渡していた時期がありました。当時は1曲3万円で曲のアレンジを行うような仕事もしていたのですが、仲介をしてくれていた人と会うためによく六本木に来ることがあって。夜10時に待ち合わせをしたのに、深夜1〜2時になっても相手が来ないなんてこともしょっちゅうでした。そんなときによく、この六本木西公園あたりで時間を潰していましたね。

 当時は、六本木ヒルズはただ見上げるだけのものでしたが、昨年までは自分もJ-WAVE「THE HANGOUT」の仕事でその六本木ヒルズにいたりして。六本木西公園に来たのは久しぶりですが、公園の雰囲気も当時とは違っていて、ぼくも公園も変わるんだなと思いました(笑)。

「都市の音」がなくなった時代。

「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)
毎年3月に米テキサス州オースティンで行なわれる、「音楽・映画・インタラクティブ」をテーマとしたカンファレンス&フェスティバル。イベント名は、オースティンがメジャー音楽の中心地・ニューヨークから見て南南西に当たることから、映画『北北西に進路を取れ』(原題『North by Northwest』)をもじったもの。音楽フェスとしてスタートしたが、近年では新しいテックスタートアップが注目される場所にもなっている。

「CYBER TELEPORTATION TOKYO at SXSW」
SXSW2017にて行われた東京とオースティンをリアルタイムでつなぐパフォーマンス。イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」によって、オースティンにいるstarRoと東京いるダンサーデュオのAyaBambiやシンガー向井太一らが、あたかも同じ会場にいるかのようなパフォーマンスを披露した。

 音楽の面では、六本木といえば昔はディスコやクラブがありましたが、いまはそうしたカラーはだいぶ薄くなっている印象があります。ただそれは、六本木に限った話ではありません。このあいだ坂本龍一さんが、「都市の音」が2000年以降なくなってきているとインタビューで言っていました。たとえば昔は「デトロイト・テクノ」といったらデトロイトの音がしていたし、ブリストルに行けば港街らしくダブやレゲエが入ってきて融合したサウンドがあった。90年代の東京の音だって、東京ならではの音楽だったでしょう。そうした都市の音が、インターネットの登場とともにどんどん薄れてきているんです。

 実際、ぼくは普段ほとんどインターネットで音楽を聴くんですけど、たとえばSoundCloudでフォロワー数がまだ1,000人もいないのにめちゃめちゃおもしろいやつが、ニュージーランドやベネズエラにいたりする。昔は音楽って街やストリートから生まれてきたと思うんですけど、いまはインターネット自体がストリートになっている。だから、大事なのは街のカラーではなく個人のカラーなんですよね。

 街の意味が薄れてきたときに、六本木で何ができるのか。六本木には、世界有数のIT企業がたくさんありますよね。ミュージシャンは、そういう人たちと一緒に何かやっていくべきだとぼくは思うんです。

 たとえば今年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト。毎年3月に米テキサス州オースティンで行なわれる、「音楽・映画・インタラクティブ」をテーマとしたカンファレンス&フェスティバル)では、starRoという日本人DJが「Cyber Teleportation Tokyo」と題された、世界初の「グローバル・インタラクティブ遠隔ライブ」を行っていました。これはオースティンにいるstarRoが、東京にいる向井太一などのシンガーやダンサーたちと一緒に行った試みで、日本のアーティストたちの映像がAR(拡張現実)となってオースティンで3Dで投影されたんです。このように、最先端の技術を使った面白い取り組みを、SXSWのようなグローバルな舞台と連動して、ここ、東京・六本木から発信していければ、六本木らしいおもしろいことってまだまだできるんじゃないですかね。