55 菱川勢一(クリエイティブディレクター)

菱川勢一(クリエイティブディレクター)

6月19日から21_21 DESIGN SIGHTで開催される「動きのカガク展」でディレクターを務める菱川勢一さんは、NTTドコモのCM「森の木琴」で世界最大の広告賞、カンヌライオンズで三冠を獲得するなど、国内外からも注目を集めるクリエイター。「動きのカガク展」のことはもちろん、菱川さんが六本木でやってみたいこと、さらにモーションデザインの未来についてもうかがいました。

update_2015.6.3 / photo_hiroshi kiyonaga / text_kentaro inoue

デザイナーやクリエイターによる「子どもつくろう」キャンペーン。

 すごく月並みな話ですが、僕が今、危機感を感じているのは、子どもが減っているということです。大学で教えているので、みるみるうちに受験生が減っているのは肌身で感じているし、今後もう増えることはないというのが数字となって表れている。

 たとえば、ちょっとエッチな企画を考えたときに、半分冗談で「少子化対策です」なんて言うことがありますけど、それをもっとマジメにやったらいいと思うんです。今回、このインタビューで未来の話をしてほしいといわれて、真っ先に思い浮かんだのは、デザイナーとかクリエイターが集まって「子どもをつくろう」キャンペーンみたいなことができないかということでした。

 アメリカにしろフランスにしろ海外って、日本に比べて、エッチなことの描き方とか性に対してオープンじゃないですか。求愛するとなったら、すごく情熱的だったり。その、やや肉食系のエネルギーをどうしたら湧き起こさせることができるのか。最近、僕は徳島県のプロジェクトにも関わっているんですけど、徳島には6月生まれが多いんだそうです。それはなぜかというと、8月に阿波踊りがあるから。たしかに花笠をかぶった女性ってみんなキレイに見えるし、動きもしなやかで、すっかりやられるんですね(笑)。ホントかどうかはわかりませんけど、そういうことなんじゃないかなと思って。

恋とか愛とか子づくりを、もっと明るく健康的に料理する。

「カナザワ映画祭」

「カナザワ映画祭」
2007年の初開催以来、毎年8~9月に石川県金沢市で行われている映画祭。主催は、市民有志の団体「かなざわ映画の会」。旧映画劇場や野外会場で、テーマに合わせたさまざまな映画の上映、シンポジウムなどを開催し、3000人ほどの来場者を集めている。

 僕の本業でもある映像というところから考えると、面白いなと思ったのが、2007年から市民が有志でやっている「カナザワ映画祭」。この映画祭、2012年のテーマが「エロ」だったんです。たとえば、宮崎駿さんが最初で最後に峰不二子の全裸を描いた「ルパン三世」とか、他にも「エマニエル夫人」を上映したり。いわゆるAVとかではなくて、エッチな部分もあるコメディとかロマンスものをセレクトしていて、だいぶ明るいイメージ。たしかにロンドンとか海外の映画祭を見ると、夜の部は18禁の映画を上映していたりするんですよ。

 僕の勝手なイメージなんですけど、なんとなく六本木なら、そういうことをやっても許される気がして(笑)。六本木って、昼間の顔と夜の顔があるというか、近代的でスマートなところと、猥雑なところがすごく上手に共存している街。これって、すごくまれなことだと思うんです。猥雑な部分を排除すればするほど、お台場的な街になるだろうし、スマートな部分をなくしてしまうと、それはそれでこの先大丈夫? となってしまう。両方あることでバランスが取れているというか。

 こういう話をすると、すぐわいせつだとか、いかがわしいといってタブー視されてしまうけど、子どもが減っている現実を見ると、けっこう本格的に取り組まないとまずいんじゃないかって思うんです。恋とか愛とかセックスを、もっと明るく健康的に料理する。それは、デザイナーとかクリエイターの腕の見せどころでもあるでしょうし。

その前段階の舞台を六本木が粛々と仕立てあげる。

 ストレートに言ってしまえば「子づくり」になってしまうんだけど、その前段階としての舞台を六本木が粛々と仕立てあげる。こんなステキなホテルもありますよ、年末には待ちに待ったクリスマスでございます! それこそ80年代、90年代のバブルやトレンディドラマの世界のように、健康的に恋ができる街っていう方向にもっていく。

ガーデンシアターカフェ

ガーデンシアターカフェ
2008年7月18日〜8月24日まで、東京ミッドタウンの芝生広場で行われたイベント。夕方から日没までは産地直送の野菜を使った料理が味わえるオープンカフェ、日没後は野外で名画を鑑賞できるオープンシアターが登場した。

 僕、昔から自分で映画をつくるとしたら、絶対に恋愛映画がいいって言っていたんです。どういう映画をつくりたいかもさることながら、どういう人たちに観てほしいかってことを考えると、やっぱりカップル。映画館にはデートで来てほしいんですよ。最近は、デートに映画なんてベタすぎる、みたいな感じになってるのかもしれないけど、映画をデートコースの王道中の王道に揺り戻したいって思ったり。

 もちろん六本木にすでにある映画館でやるのもいいですが、屋外でできたらもっといい。カリフォルニアに一人旅したときに感動したのが、いわゆるドライブインシアターが現存していたこと。屋外で、映像を見たり音楽を聴いたりすることの、なんと気持ちいいことか。別に車が乗り入れられなくてもいいから、東京ミッドタウンの芝生にでっかいスクリーンをつくってできたらいいですね。(※編集部注:2008年に「ガーデンシアターカフェ」というイベントが開催されていました)。