44 キギ 植原亮輔×渡邉良重(アートディレクター)

キギ(アートディレクター)

デザイン会社・ドラフトで、数々の広告やプロダクトブランド「D-BROS」に関わったのち独立。キギの植原亮輔さん渡邉良重さんは、現在、アートディレクターとして企業やファッションブランド、セレクトショップなどのブランディング、プロダクトデザイン、ファションデザイン、映像やアプリ制作など、さまざまな領域でクリエイションに携わっています。ちなみに、この日のメイン写真の撮影は、渡邉さんが一度行ってみたかったという六本木ヒルズの屋上庭園で。また、インタビューでは、「六本木の街をステキに変えるアイデアを!」という編集部に、植原さんからこんな衝撃の一言が......。

update_2014.7.2 / photo_tsukao / text_kentaro inoue

六本木は、何も変えなくていい。

六本木ヒルズの屋上庭園

六本木ヒルズの屋上庭園
六本木ヒルズのけやき坂コンプレックス屋上、地上45メートルにある、約1300平方メートルの庭園。テーマは「四季の庭」。四方を木々が囲む園内には、桜の小道や池があり、水田や畑では実際に収穫も行われる。通常は非公開。

デザインバトンズ ~未来のデザインをおもしろくする人たち~

デザインバトンズ
~未来のデザインをおもしろくする人たち~

2014年4~5月、東京ミッドタウン・デザインハブで開催された合同企画展。デザインの領域で注目を浴びているクリエイターがキュレーターとなり、未来を感じさせるクリエイターをひとり選んで語り合う。植原氏は、音楽家の阿部海太郎とトークセッションを行った。

植原六本木未来会議っていいますけど、いったい何が不満なんだろうって思うんです。別にこのまま、何も変えなくたっていいじゃないですか(笑)。ちょっと前まで近くの南麻布に住んでいたんですが、僕、今の六本木が好きなんですよ。美術館もあるし買い物もできる、ここに行けば何か面白いことがあるだろうと思える街。しかも、いろんな人がいるし、いろんな店がごちゃまぜになって同居している感じが面白いと思うんです。以前はデザインというとアクシスくらいだったけど、六本木ヒルズと東京ミッドタウンができて、本当に変わりましたよね。

渡邉大学3年で初めて東京に遊びに来たとき、なんだかわからないけど友だちに教えられたのが、六本木のアマンドでした。当時は客引きの外国人さんが多い街だな、って。

植原僕も22歳くらいで、初めて来たときに待ち合わせたのはアマンド(笑)。そもそも行く用がない街で、なんだか怖いというイメージもあったかもしれません。

渡邉実は私、昔10ヶ月くらい六本木の会社に勤めていたんです。そのときに通っていたのは、鳥煮込みそばで有名な香妃園とインドカレーのモティ。アクシスにもよく行ってました。インテリア雑貨といえばここ、という感じがあって。

植原僕は今でもよく、アクシスのリビング・モティーフには行きますね。フライパンを買うぞとか、アイロンを買うぞとか、目的があるときに行くと、必ずいいものが揃うので便利。年末には、ミッドタウンで食材とかキッチンツールとかを買って、大荷物を抱えてタクシーで帰ったり。

渡邉で、年が明けたときにカレーを持ってきてくれる(笑)。私は最近、六本木に来るとしたら、美術館か映画館くらいで、それ以外はあんまり。森美術館と21_21 DESIGN SIGHT、サントリー美術館に国立新美術館。面白い展覧会が重なっているときは、かけもちして行くこともあります。

植原仕事では、21_21 DESIGN SIGHTの「チョコレート展」に出させてもらったり、この間も、デザインハブで「デザインバトンズ ~未来のデザインをおもしろくする人たち~」という企画展をやらせてもらったりも。

「売ってください」ではなく「一緒に売っていく」。

KIKOF

KIKOF
キギが「Mother Lake Products Project」の職人たちとともに商品開発をするブランドとして設立。2014年夏に発売される第一弾は、信楽の丸滋製陶とともに手がけた陶器のシリーズ。「紙でつくれる形」というテーマで企画され、陶器とは思えないほど薄くて軽い。
http://www.kikof.jp

植原今日は「六本木の街」がテーマということで、僕らが最近、街や地域に関わっている仕事を紹介すると、滋賀県の職人さんたちとやっているブランド「KIKOF(キコフ)」があります。琵琶湖のまわりには、仏壇仏具を中心とした職人さんたちがたくさんいます。今はそれほど盛んではなくなったんだけど、もちろん技術は当然すばらしいものがある。

もともと、現代のライフスタイルに合った伝統工芸品づくりを目指す、立命館大学の佐藤典司先生が立ち上げた「Mother Lake Products Project」という取り組みがありました。そこに参加する職人さんたちとキギで一緒に何かできないだろうか、ということで「KIKOF」を立ち上げることになったんです。

渡邉参加しているのは、陶器、麻、ちりめん、木工、漆、それから数珠の6組。もうすぐ第一弾の、信楽焼の丸滋(まるし)製陶さんの陶器が発売されるんです。

植原こういうプロジェクトをするとき、僕らができることといえば、ひとつのブランドをつくること。僕らはモノもつくるプロダクトデザイナーでもあるけど、グラフィックもやっている。言ってみれば広告屋みたいなところもあるでしょう。ただ広告するんじゃなくて、まずはいいモノをつくって、それを自然と伝えられる仕組みがあればいい。

渡邉ただ単に「デザインしました。あとは売ってください!」っていうんじゃなくて、一緒に売っていく。

植原デザイン料いくらじゃなくて、分配方法まで本当に全部オープンなんですよ。職人さんとの関係をフェアにしないといけないので、誰がどう考えても納得できるような数字を見せる。「うん、これならたしかに、誰がどう見てもイコールだな」って。

渡邉リスクも一緒に負って、広がっていけば自然と儲かる。儲けるだけが目的じゃなくて、みんなモノづくりが好きで、文化を大事にしている。だから呼吸が合うんです。

植原でも、最初は初めて取り組む素材が多くて、どうしたもんかなと思ってました。それにいつもだったら、僕らがまずアイデアを考えて、こんなものをつくりたいからこういう職人さん、こういう工場に頼むという流れが普通。それが、まったく逆だったので。

渡邉滋賀県の陶器といえば信楽焼で、たぬきの置き物っていう印象がありますよね。だから最初は、これは困ったな......って(笑)。