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INTERVIEW
39
吉岡徳仁デザイナー Tokujin Yoshioka / Designer
Tokujin Yoshioka / Designer

『未来のクリエイションの見つけ方』

いつも「なぜ?」と考えて、「理解できない魅力」を形にする。

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update_2014.02.19 photo_tsukao / text_kentaro inoue

 けやき坂にある「雨に消える椅子」、21_21 DESIGN SIGHTでの「セカンド・ネイチャー展」に、森美術館での「ネイチャー・センス展」。世界的に活躍するデザイナー・吉岡徳仁さんが、六本木に関わりはじめて、もう10年以上。かつて、この街が「未来に一番近い街になるといいな」と感じていたという吉岡さんが語る六本木、そしてこれからのクリエイションとは?

新しいスタートとともにはじまったプロジェクト。

 六本木で、僕が最初に関わった大きなプロジェクトは、2001年に六本木ヒルズのプロモーション施設としてオープンした「ROPPONGI THINK ZONE」の建築と空間のデザインでした。1990年代、ベルリンの壁が崩壊したドイツで、街の中心部の再開発が行われた際、多くの企業や建築家が集まってインフォメーションセンターのような場所をつくりました。それを超えるような、社会にプレゼンテーションできる場所を六本木に、ということで、はじまったプロジェクトです。

ROPPONGI THINK ZONE

ROPPONGI THINK ZONE

2001年、六本木ヒルズ開発のプレ・プロジェクトとして、六本木通り沿いにオープンしたアートスペース(現在は閉館)。14×18mの巨大スクリーンを床面に配し、映像や音響を交えた最先端のアートイベントが数多く行われた。

 僕自身、2000年に独立して事務所を設立したばかりで、ちょうど新しいスタートのタイミング。もちろん建物一棟のデザインを手がけるのも初めてでしたし、他にも、けやき坂のストリートファニチャー「雨に消える椅子」の制作をはじめ、さまざまなチャンスをいただきました。

雨に消える椅子

雨に消える椅子

2003年に六本木ヒルズストリートスケーププロジェクトのひとつとして設置された作品。水の中にガラス片を入れるとその輪郭がだんだんと消えていくように、雨の日にはまるでその姿が消えるかのように見える。

 ストリートファニチャーは、公共の場所への設置ということで許可も必要なため、とても長い時間がかかるプロジェクトでした。普通こういった多くの人たちが触れるものにガラスを使用することは少ないのですが、半永久的な素材ですし、朽ちていかないのが最適だと思って選びました。イメージしたのは、待ち合わせのときに「あのガラスの椅子にいるよ」と、簡単にイメージが湧いてくるような作品。僕、今でも六本木に行くと、雨に消える椅子に挨拶するんです。「元気?」という感じで(笑)。

未来に一番近い場所、六本木。

 当時は、わずか十数年で、六本木がこれほど変化するとは、まったく想像できませんでした。ただ、六本木ヒルズの構想を進めていた森ビルから、街の将来像について話を聞くなかで、漠然と「ここが未来に一番近い場所になるといいな」と感じていました。

「未来に一番近い場所」といっても、未来=テクノロジーだけではありません。より正確にいえば、"ヒューマンでありながら未来を感じられる街"。仕事をしたり、食事をしたり、この街で日々生活をしていくわけですから、人のライフスタイルについてどれだけ考えられているかということが重要になります。

 一番驚いたのは、ビルの上に美術館をつくる計画があったこと。本当に高いところに作品を持っていくことができるんだろうか、人の流れはどうなるんだろうか。そんな議論もされていましたが、できあがってみれば、これだけたくさんの人を集める施設として成功しました。世界でも、これだけ高いところにある美術館はないんじゃないでしょうか。

 美術館があることで文化の発信地にもなったし、その後、東京ミッドタウンなどができた相乗効果もあって、街を活性化するイメージも、より明確になってきたと感じます。今は、デザインやアート以外にも、食をはじめ、さまざまなライフスタイルが完結できる面白い街になりました。

「ここでしか体験できないもの」がある街がいい。

 開発が進んでいくとどうしても、似たような街や建物が増えてしまうものです。そして、新しい場所ができればそこへ人が集中し、しばらくするとまた別の場所に移行していくという繰り返し。そのなかで個性を出していくには、「ここでしか体験できないもの」があると、とてもいいと思います。

 森美術館の成功もそうですし、ミッドタウンにも21_21 DESIGN SIGHTがあって、秋のデザインタッチをはじめ、いろいろなイベントを開催しています。デザインやアートの街、言い換えれば、それは「文化」といってもいいでしょう。

森美術館

森美術館

六本木ヒルズ森タワーの最上階、53階に設けられた美術館。2003年のオープン以来、現代美術を中心とした企画展を数多く行っており、現在は10周年記念展として「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」を、2014年5月6日まで開催中。
© 2014 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York Marilyn Monroe™; Rights of Publicity and Persona Rights: The Estate of Marilyn Monroe, LLC marilynmonroe.com

 かつて日本の街は、いかに都会になるかということを目指して発展し、変化してきました。しかし現在では、それぞれの土地の特徴を明示しなければ支持されることはありません。これは街だけではなくて、国や地方レベルでもそうでしょう。特徴があって、違いが鮮明に見えるからこそ、その場所を魅力的で面白いと感じるのです。

吉岡徳仁(デザイナー)

理由がないけれど感じる、それこそが文化。

 六本木という街の文化は、かつて三宅一生さんや倉俣史朗さん、磯崎新さんなど、デザイナーや建築家が集まって意見を交わしながらつくりあげてきた印象があります。そして、商業施設や美術館ができ、海外からも多くの人が訪れるようになって、文化の発信という部分においては、これからさらに進化していくでしょう。21_21 DESIGN SIGHTをディレクションされている一生さんも、次はこの場所で、文化そのものを生み出すことを考えているのではないかと思います。

倉俣史朗

倉俣史朗

透明なアクリル樹脂の椅子「ミス・ブランチ」などの作品でも知られ、フランス文化省芸術文化勲章を受章するなど、国際的にも高い評価を受けているインテリアデザイナー(1934-1991年)。吉岡氏もかつて師事していた。

磯崎 新

日本国内はもとより、「ロサンゼルス現代美術館」や「バルセロナ市オリンピック・スポーツホール」などを手がける。ポストモダン建築を牽引した、日本を代表する建築家のひとり。

 僕はよく、いろいろなところにコンサートやバレエなどを観に行きます。たくさんの人が集まり感動を共有するというのが、とても好きなんです。そこでよく感じるのは、「文化ってやはりすてきだな」ということ。なぜそう感じるのか、言葉では説明できません。理由がないけれど感じること、文化には理屈では測れないすばらしさがあるのです。

 六本木にも、デザインやアートだけにとどまらず、そうした文化全般に触れられる場所がもっとたくさんできたらいいですね。

人々の興味は、物質から時間へシフトしている。

 10年後だったり、100年後だったり、僕はいつも未来がどうなるのかをイメージしながら仕事をしています。そして、未来を考えるときに今、もっとも重要だと感じている要素は「時間」です。なぜなら、人々の興味がモノを所有する満足感から、どのように時間を過ごすかへ、シフトしはじめているから。

 モノによって幸せを得るのではなくて、幸せな時間をどのように演出するか。受ける感覚や過ごす時間の質は変わるでしょう。街でも場所でも、そこでどういう時間を過ごせるかをもっと工夫するべきなのでしょうし、そこに新たなビジネスも生まれると思います。

 昔は雑誌やテレビなどの媒体から得られる「これが面白い」とか「ここに行くべきだ」という情報に、みんなが従っていました。でも、今は個人が「よかった」「悪かった」という情報を発信して、それを見て判断をする時代。より「個」の要素が強くなっているし、個人が発信して、文化をつくっていく時代になってきているのです。

未来に対する方向性を示すのがクリエイター。

 デザイナーの視点から見ると、これからの流れとして確実にあるのは、個人がデザインをしてモノをつくる時代になるということ。たとえば、文字をレイアウトして広告をつくるといったように、以前はデザイナーしかできなかったことが、現在ではパソコンあれば簡単にできてしまいます。

 特定の人だけが社会に対してプレゼンテーションできる時代は終わり、誰もがアイデアを発信できるようになったことで、優れた才能が埋もれることは少なくなりました。その反面、最近の学生たちの作品を見ていると、みんな表情が同じで、考え方が統一化されてしまうという負の面もあると感じています。

 みんなが自由に作品をつくることができ、自由に発表したり発信することもできる。そういう時代に、デザイナーやアーティストの役割とはいったい何だろうと考えることもあります。僕はよく、友だちのデザイナーにこう言います。「デザイナーだけがデザインする時代は終わると思う」と。

 ただシンプルに形をつくりたいのであれば、個人個人がデザインをすればいい。そこで、形をつくるだけではなく、いかに新しい発想ができるか、そして先を見ることができるか。これからのクリエイターには、未来に対する方向性や考え方を示していくことが求められると感じています。

吉岡徳仁(デザイナー)

ただ形を変化させることがデザインではない。

 アートといえば、現在は絵画や彫刻などを意味しますが、100年後にはまったく違っているかもしれません。たとえば写真にしても、アートとして認識されてからの歴史はまだ短いと思います。もしかしたら未来には、デザイナーが存在しているかどうかもわからないし、科学のような別の分野にデザインやアートの要素が入っているかもしれない。

 未来を創造するために何が必要なのか、それは、実は僕にもよくわかりません。ただ、ひとつだけ言えるのは、これからの新しいデザインは、モノの原点から生まれるということです。

 先日、子どもたちにデザインを教える機会がありました。話したのは、「たとえばコップをデザインするときには、まずその役割を考えましょう」ということ。コップというのは本来、お茶や水を飲むためのものです。そういう根本的な部分から考えていけば、私は丸いのがいいとか、四角いほうがいいという意見も出るだろうし、意味のあるデザインになります。ただ形を変化させることだけがデザインではないのです。

どうしても実現させたいという情熱からはじまる。

 デザインするということは、自分を知ることでもあります。ものづくりとは何か? どういうものが好きなのか? 自分自身でも解明できない未知の部分があり、作品を完成させるなかで、だんだんその輪郭が見えていきます。たとえば、雨に消える椅子の場合なら、「形が存在しない椅子」というところでした。重要なのは、根本的な考え方や切り口で、形は最後に現れてくればいい、と。

 一方で、僕は透明でオーラを放つようなものが一番好きで、そのような作品をつくりたいと強く思っていました。ものづくりというのはやはり、「どうしても実現させたいという情熱」からはじまります。さまざまな事情や問題をクリアしてやっとつくるのではなくて、無我夢中でつくってしまう。そうして生み出されたものに、人は魅力を感じるのでしょう。

 すばらしい作品には、まわりの空気を変えてしまうようなオーラがあります。どのようにすれば、そんな作品を生み出すことができるのか、学生の頃から考え続けてきましたが、今も答えは見つかっていません。ただ、これは心に響くのか、自分の中でいつも確認しながら作品を制作をしてきました。

常に「なぜ?」と考える。

 社会をよくしたり、人のためになるというのが、デザインの基本です。僕は作品をつくるなら、人が加わることで完成していくようなものがいいし、作品と人間のインタラクティブな関係性を大切にしたいと考えています。

 今やパソコンさえあれば、何でも見ることができるし、どこかへ行かなくても疑似体験できるようになりました。しかし、人がどうしても見たい、行きたいと思うのは、やはり身体で感じ取れるもの。そういう意味では、森美術館「ネイチャー・センス展」の「スノー」は、とても面白いインスタレーションになりました。見ているお客さんから「わぁ」っと声が上がるような作品。先日、東京都現代美術館で開催した「クリスタライズ」展もそうですが、これからも、本当に自分が面白い、つくってみたいと感じられる作品を生み出していきたいと思っています。

ネイチャー・センス展

ネイチャー・センス展

「自然を知覚する力」をテーマに、吉岡氏のほか篠田太郎氏、栗林隆氏、3名のアーティストによる作品を展示。写真は、幅14×高さ6mの巨大空間の中に大量の羽毛が舞い上がるインスタレーション作品「Snow」。2010年7月24日~11月7日まで、森美術館にて開催された。

 心がけているのは、常に「なぜ?」と考えること。「なぜ」人を好きになるのか?「なぜ」これがおいしいのか?「なぜ」すてきだと思うのか? みんながすばらしいと言う、世界に共通する美意識とは何なのか......。答えが出せる問いではありませんが、その理解できない部分が魅力的で、美しいと感じるのです。

吉岡徳仁―クリスタライズ

吉岡徳仁―クリスタライズ

2013年10月3日~2014年1月19日まで、東京都現代美術館で開催。音楽を聴かせながら結晶化させた絵画「Swan Lake」(写真)をはじめ、国内初公開作品を含む約30点の作品を展示。吉岡氏の個展としては国内最大規模、その作品世界を包括的に概観できる初の機会となった。

取材を終えて......
「文化のすばらしさ」「作品のもつ強さ」「世界に共通する美意識」。いいなあと思うものが何なのかはわからないと繰り返しつつ、丁寧に話をしてくれた吉岡さん。わからないけれど何とか近づこうとする。それが、きっとクリエイターなんですね。(edit_kentaro inoue)

吉岡徳仁

吉岡徳仁 / デザイナー
吉岡徳仁 / デザイナー

1967年生まれ。倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、2000年吉岡徳仁デザイン事務所を設立。デザインからアート、建築まで、幅広い領域において、世界で高く評価されている。紙の椅子「Honey-pop (2001) 」で世界の注目を浴び、ガラスのベンチ「Water Block (2002) 」は、2011年より改修されたパリ・オルセー美術館の印象派のギャラリーで常設展示されており、数々の作品は、ニューヨーク近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、ポンピドゥー・センター、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などの世界の主要美術館で永久所蔵品に選ばれている。また、ISSEY MIYAKEをはじめ、SWAROVSKI、Cartier、Hermès、LEXUSなど、ワールドブランドのプロジェクトを手がけるほか、毎年イタリアで開催されるミラノサローネでは、有名家具ブランドとのコラボレーションし、新作を発表している。
2013年、東京都現代美術館にて開催された「吉岡徳仁―クリスタライズ」では、およそ8万人を動員し、話題となった。東京2020オリンピックでは、桜をモチーフとした聖火リレートーチのデザインを手がけている。

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