32 鈴木菜央(greenz.jp発行人)×兼松佳宏(greenz.jp編集長)

鈴木菜央(greenz.jp発行人)×兼松佳宏(greenz.jp編集長)

六本木未来会議のサイトリニューアルに合わせて、クリエイターインタビューも企画を一新。六本木という街の課題を抽出して、それを解決するアイデアや具体的なアクションを提案していただくことになりました。 第一弾として登場するのは、「ほしい未来は、つくろう。」を合言葉に、暮らしと世界を変えるグッドアイデアを集めるウェブマガジン「greenz.jp」を運営する、鈴木菜央さんと兼松佳宏さん。 千葉と鹿児島、現在は東京から離れて暮らす二人が語る、「六本木に必要な"スキマ"」とは?

update_2013.7.17 / photo_ryumon kagioka / text_kentaro inoue

夜の街・外国人の街......そして今は計算されつくした空間。

鈴木菜央父親が広尾で、外国資本向けの建築コンサルタントをやっていたこともあって、僕はもともと港区民。その仕事では外国からエンジニアとか法務の専門家とかに来てもらうことが多かったのですが、彼らの中に滞在先は「六本木がいい」と希望する人もいて。土日に引越しの手伝いをする父親に、一緒についていったりした思い出があります。

NEW TOKYO LIFE STYLE ROPPONGI THINK ZONE
2001年、六本木ヒルズ開発のプレ・プロジェクトとしてオープンしたアートスペース(現在は閉館)。床には14×18mの巨大スクリーンがあり、映像や音響を交えた最先端のアートイベントが数多く行われていた。

兼松佳宏逆に僕は秋田生まれなので、最初はすごく緊張しました。夜の街、外国人の街みたいなのが刷り込まれてて(笑)。六本木の思い出はたくさんあるのですが、六本木ヒルズが建つ前に実験的に展開された「NEW TOKYO LIFE STYLE ROPPONGI THINK ZONE」というスペースは、当時大学生だった僕にとってまさに衝撃でしたね。街の中で最先端のアートに触れ、新宿や渋谷とは違う"六本木らしい遊び"の魅力に惹かれていきました。

 恵比寿でウェブデザイナーとして働き始めてからは、徹夜明けの朝4時くらいに青山ブックセンター六本木店に行って、またそのまま仕事に戻ったり。一度、なくなりそうになったときには涙を流したほど、お世話になってました。ただ僕にとっては、"住む"とか"関わる"という意識はなくて、あくまで消費者として利用する街でしたね。

鈴木僕も最近は、ちょくちょく利用するようになりました。六本木で打ち合わせがあるときは必ず美術館をチェックして、「おっ」と思ったらふらっと入る。休みの日には、子どもと映画も観にくるし。

デザインあ展

デザインあ展
2013年2月8日〜6月2日まで、21_21 DESIGN SIGHTで開催。NHK Eテレで放送中の教育番組「デザインあ」を、展覧会に発展させた企画。音や映像なども用い、子どもから大人まで、全身で体感しながら「デザインマインド」を育める仕掛けがたくさん。

兼松この10年で六本木ヒルズや東京ミッドタウンができて、デザインやアートの街というふうに、急にイメージが変わりましたよね。それって実はスゴイことなんじゃないかと思ってます。「DESIGN TOUCH」のときには、ミッドタウン横の芝生がわいわい賑わっていてとてもピースフルでしたし、最近では「デザインあ展」とか、ものすごく混んでましたよね。親子でデザインやアートを楽しめて、行列までできるなんて画期的だと思います。

鈴木他にも、浮世絵の展覧会をやったり、すばらしいものをさらにセレクトして、世に出していこうという姿勢はすごいと思います。ただ六本木って、計算されつくした空間に見えるんです。しっかり計画を立てて、整然と開発されているような。もちろんデザインとかアートとか、ハイブローな文化はつくっているし挑戦もしている。でも、新しいムーブメントを生み出しやすい街かというと、少し違う気がしていて。

新しいムーブメントはいつもスキマから生まれる。

鈴木見たこともないような新しいものって、「スキマ」からしか生まれないと思うんです。最初は社会のスキマではじまったものが、だんだん進化していって、美術館で展覧会をできるまでになるという流れ。六本木には、その最終到達点のイメージしかない。

 僕が数年前に引っ越した千葉の外房って、すごくフロンティア感があるんですよ。使われてない家があったり、海があったり、まず場所としての魅力もあるし、面白い人も多い。土地が安いから気軽に店も出せるし、ちょっと薪ストーブつくろうか、なんて暮らしの実験をしてもいい。やりようによっては何でもできる、クリエイティビティを刺激されるスキマだらけなんです。

 一方で今、六本木で何かやっているのは、山でいうと雲がかかった頂上近くの人だけ。じゃあ、どうなったらもっと魅力的な街になるのかと考えたときに浮かんだのは、やっぱりスキマをつくること。

 一番わかりやすいのは公共空間の使い方で、六本木に滞在しながら作品制作を行う「アーティスト・イン・レジデンス」をやるとか、公園や広場が街の人に開放されるとか。経済原理からすれば、ムダかもしれません。でも、ヒルズやミッドタウンだけではなく、周辺の雑多なエリアも含めたダイナミックな場づくりに挑戦したら面白いなと思うんです。

 デザインとかアートが活発に動くのって、ニューヨークでいえば1960~70年代のSoHoみたいな、みんなから見捨てられたような場所が多いでしょう。昔は家賃が安かったから、倉庫を改装してアトリエにして、そこからいろんなアーティストが出てきたように。