27 エリイ(アーティスト Chim↑Pom) × 卯城竜太(アーティスト Chim↑Pom)

27 エリイ(アーティスト Chim↑Pom) × 卯城竜太(アーティスト Chim↑Pom)

3月23日と24日に行われた「六本木アートナイト2013」。各所でイベントが目白押しのなか、六本木未来会議ではアート集団「Chim↑Pom」のエリイさんと卯城竜太さんへの公開インタビューを行いました。会場となった〈東京ミッドタウン アトリウム〉のステージには、「Chim↑Pom」の作品である高さ8mの巨大な矢印が! 対談は、かつて年間300日六本木で遊んでいたという六本木好きのエリイさんのアイディアからはじまります。

update_2013.5.1 / photo_taro hirano / interview_kazuo hashiba / text_tami okano / edit_rhino

所得税の一部を美術セミナーに使う。

江戸城

江戸城
日本最大の面積を誇った、輪郭式平山城。江戸幕府の開幕後から明治維新後まで、幕府の政庁として機能していた。1657年の「明暦の大火」で消失してしまったが、現在は天守台のみ再建し、周辺は一般公開されている。

エリイ六本木って、きれいなビルやマンションがいっぱい建っているじゃないですか。そういうところに住んでいる金持ちの人たちの所得税の一部を美術に使うという法律にして、セミナーを開く。

卯城えっ、セミナー?

エリイそう。金持ちの人向け美術講座みたいな感じで。そうすると美術に興味がなかった人も慣れ親しんできて、作品を買うようになったりして、買ったものを見せ合うパーティーが繰り広げられていくような気がしますね。で、だんだん、「おれ、何とかの作品買ったんだけど」みたいな感じで自慢がはじまり、どんどん高いものが買われることにより美術業界が潤う。あと、空いているマンションの部屋をアーティストに開放するべきだと思う。

卯城六本木に空いているマンションって、あるのかな?

エリイ絶対あるよ、空いているデッドスペースが。それをうちらの作業場にしたり、アトリエにしたり。

卯城さっき金持ちの所得税の一部ってやんわり言ったけど、数日前は家を没収しても良い的なレベルで言っていたよね(笑)。

エリイまあ、そうね。とにかく全部開放すればいいんだよ。

卯城何かで読んだ美術館の成り立ちなんだけど、革命が起きました、それで貴族たちの宮殿が一般公開されました、そこにいっぱい美術作品があって、そんな感じで美術館になりました、って。そんな話しを思い出した。

僕は、六本木って、森美術館とサントリー美術館と新国立美術館があって、すでに美術の街という感じがするけど、ニューヨークと比べてみるとわかりやすいと思った。六本木ってより、もうちょい広げた港区ぐらいの規模のほうが考えやすくない?港区には湾岸もあるじゃないですか。お台場とか。ブルックリンとかチェルシーとかってあんな感じに近いよね。繁華街との距離感が。でもああいうエリアの倉庫をアーティストたちが安く借りて好きに使えてるのが、ニューヨークっていうかアートが盛んな世界中の都市の謎で、結局東京は倉庫も家賃高いし空いてなさそうだし。

エリイアーティストやってると、めっちゃお金持ちでもないじゃない。そうすると制作のスペースがないんだよね。それをサポートしたり、場所を提供したりする制度がもっとしっかりあるほうがいいんじゃないかなと思います。それによって、アーティストって育っていくと思うから。

卯城だからもし港区の湾岸あたりで敷地や建物を余らせてたら、アーティストのスペースにするって一案だと思う。まあ行政が主導しても意味ないと思うけど。でもデカい所で制作したら作品もデカくなるし、近場の六本木に美術館が3つもあるわけだから鑑賞ついでに海外とかからのスタジオヴィジットとかも増えるだろうし、俄然アートの街になりますよ。

ただ、六本木の美術館は何かちょっと遠いよね、一般人との距離が。MoMAとか路面だから盛り上がってるし、展覧会のオープニングパーティとか、ブラックライトがピカピカしてDJがいい感じでちゃらいんですよね。ああいう感じはむしろ六本木っぽいはずなのに、何故か日本の美術館はその逆をいく(笑)。

さらに言うと、港区の隣は千代田区ですよね。引き続き比べると、ニューヨークは新しいから歴史がないんだけど、東京には旧市街があるからさらに文化的なはず。港区と渋谷区で新しいアートを、千代田と台東らへんで古い文化を、って隣接感が実は絶妙なバランスなんだけど、なんか東京って広すぎるしとっちらかってるよね。その問題は千代田区にあると思うんですよ。皇居って、昔は江戸城だったでしょう。江戸城を中心に円が広がるように東京が作られたって聞いたことがあるんだけど、もはやその城がない。中心がない。そりゃとっちらかるわって思いますよ。

だからやっぱり欲しいですよ、江戸城が。オリンピックよりそこマジで真剣に考えるべきじゃない?だって、外国人が来て、東京タワーとか別にそんなに行きたくないじゃん。

エリイ私は年越し、東京タワーにしたけど。

卯城エリイちゃんは地元魂で東京タワーを愛し過ぎてるよね(笑)。とにかく日本はやっぱり歴史があるんだから、現代アートの街としての港区が出来るなら、その隣に江戸城、そして台東区に行ったらすぐ雷門が、ってコンボが本来の東京らしい文化マップなんじゃないかな。

入り口をつくり、その先へと進む種を植える。

六本木アートナイト2013

六本木アートナイト2013
3月23日〜24日に行われた、六本木地区の美術館や商店、地域と人が一つになったアートイベント。ちなみに今回公開インタビューの会場になったアトリウムに展示されてた大きな矢印はChim↑Pom×BABOTの「UUUU↑PPPP!!!!」という作品。夜は輝きだしました。

Gold Experience

Gold Experience
アートナイト時に芝生広場に現れた、巨大なバルーンのゴミ袋もChim↑Pomの作品の一つ。中ではトランポリンが設置していて、子供から大人までポンポンと飛んでいました。実は人間をゴミに見立てるアトラクション作品なのです。

エリイさっきの「所得税の一部でセミナー」の話の重要なところは、美術って理解を深めていけば深めていくほど好きになると思うんですよ。だから、ちゃんと入り口をつくってあげることが大事だと思うし、入り口をつくった後、さらにその先に進んでいきたくなるような「取っかかり」をちゃんと教えてあげることがすごい肝心だと思う。「ああ、おもしろいんだな」みたいな興味深さを「種」として植えつけることができれば育つ。だから私は、強制的にでも美術に触れるセミナーみたいなものがあってもいいと思うんだよね。

卯城なるほどね。そういう人たちが本物を観る目があるかないかって大事な話だよね。つまんないことに大金そそいで消費してるだけじゃ文化なんて育つはずないしね。でもその反面ていうか、アーティスト側ももっとガチになるべきじゃない?さっき言ったスペースにしたって、「はい、ここ、どうぞ」みたいに何でも準備され過ぎちゃうと盛り上がらない気がする。ガチでアーティストたちが攻めていくような街づくりって、誰かに「ここまでこうしていいですよ」と言われるものじゃない。普通に住みつきはじめて、おもしろいことを勝手に、お金使わなくてもどんどんできる環境と態度からしか始まらないと思う。エリイちゃんは湾岸は嫌い?

エリイ嫌いだし遠い。お台場とか湾岸とかあの辺、すごい嫌い。イケてないじゃん。

卯城でも、六本木は土地も家賃も高いじゃん。

エリイまあ、そうなんだけど、それは全員にとってそうじゃん、アーティストだろうが、なかろうが。それに、余ってるよ、ビルもマンションの部屋も。

卯城じゃあ、やっぱりそれを開放してもらおう(笑)。