11 猪子寿之 (チームラボ代表)

猪子寿之

取材当日、約束の時間を随分過ぎても現れず、聞けばインタビュー場所を探し回り、なかなか辿り着けなかったという。「六本木のビルに入ると必ず迷う......」この人こそ、いま、新時代のデジタルアートの旗手として注目されている猪子寿之さんだ。東京大学在学中の2001年、日本再生を目的にウルトラテクノロジスト集団、チームラボを設立。デジタルの領域から生まれる新しい表現に挑戦し続けている。日本文化のバリューとは何か、インターネット以後の社会でインパクトを持つものは何かを常に考えてきた猪子さんの、六本木未来構想とは。

update_2012.9.19 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

日本の中で、なのか、世界から見て、なのか。

 「デザインとアートの街」というときに、それが日本の中で見てなのか、世界から見てなのか、どっちを目標とするかで全然違いますよね。日本の中で見て、ならば、六本木は今も既にある程度「デザインとアートの街」になっていると思うし、今後も今の方向で進んでいけば、より一層なっていくと思う。でも、世界から見て、ならば、六本木がデザインとアートの街として想起されることは、絶対にないと思うんですよ。少なくとも今の延長線上では。

 今、六本木で言うデザインとかアートって、ニューヨークで言うデザインとかアートと一緒ですよね。ニューヨークと同じだったら、勝てないよね。ニューヨークは大昔からそういう街だったわけだし、六本木にある代表的な作品って、ニューヨークでも十分評価されるようなもののわけでしょう? 20世紀にできあがった価値観の中で評価され、完成された物をチョイスして、コレクトしているような感じでしょ? その延長線上では、おそらく世界から見て永遠に、デザインとアートの街にはならない気がする。

新しいカルチャーの受け皿になること。

 だからもし、世界の中で、六本木をデザインとアートの街にしたいのであれば、今はまだ価値が定まっていないけれど、未来において必ず価値を持つであろうもの、ジャンルすら不明確で、どこにもまだ行き場所がないような新しいカルチャーの受け皿になることを考えたほうがいい。

 例えば、今ネットの中ではみんなが見ていたり盛り上がっていたりするんだけど、まだそれが何であるのかは言えないようなものってありますよね。そういうものって、たぶん、ベネチア・ビエンナーレ(現代美術の国際美術展覧会)には絶対呼ばれないし、ミラノ・サローネ(国際家具見本市/世界最大規模のデザインイベント)に出ることもない。でも実は、まだ何であるかは言えないようなものの方にみんなが興味を持っている、ということが実際に起こっていて、そっちが未来なんだと思うんですよ。そういうものの受け皿に六本木がなったとき、はじめて10年後、20年後に「クリエイティブシティ」という意味で象徴的な街になれると思うんです。

ベネチア、ミラノ、リンツ。

アルス・エレクトロニカ

アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)
オーストリアのリンツで開かれる世界最大級のメディアアートフェスティバル。毎年世界中からアートや最先端のテクノロジーに関する様々な作品が集結し、日本人からも多くの受賞者が出ている。
また2010年の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」ではコラボレーション展示が行われた。

 ベネチア・ビエンナーレは100年以上前から現代アートの受け皿としてやっているわけで、ミラノ・サローネだってモノのデザインの受け皿として50年以上やっている。オーストリアのリンツで開かれているメディアアートのイベント、アルス・エレクトニカだって、30年以上になるわけですよ。

 アルス・エレクトニカって、1979年に始まった当時はすごいニッチな分野だったと思うんだよね。メディアアートという言葉も果たしてあったのか、というくらい。コンピュータだって電卓みたいなものしかない時代ですよ。テクノロジーはアートの主流ではなかったし、でも、結果的に、それが未来だったから、その分野の象徴的なイベントになったし、街としても象徴的な街になった。今や横浜や大阪がクリエイティブシティになろうとしたら、アルス・エレクトロニカ招致したらいいって言う案も出るくらいですよ。でも今招致したところで、勝てないでしょ。あたりまえだけど。