06 佐藤 卓 (グラフィックデザイナー)

佐藤 卓

ものごとを独自に切り取る、鋭い観察眼の持ち主として知られるグラフィックデザイナーの佐藤卓さん。〈東京ミッドタウン〉誕生と共にオープンしたデザイン施設、「21_21 DESIGN SIGHT」のディレクターのひとりであり、傘をさす姿には、開館初年の展覧会、佐藤卓ディレクション「water」展の記憶が重なります。あれから5年。佐藤さんが今抱いているこの場所への思いと、「六本木は面白い!」と言う、佐藤さんならではの視点を聞きました。

update_2012.7.4 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

表からも裏からもよく見る。愛をもって。

 僕は六本木をこうしましょう、といって、机上で考えたイメージを上からかぶせてしまうのは、本当の街づくりじゃないと思うんです。街というのは、ぎょうにんべんの「街」であるべきで、人が人と関わりながらつくっていくのが本当の街づくりですよね。それに、六本木はゼロから新しく作られるのではなく、昔からあるのだから、既にあるものをよく見ていくと、大切にしなければならないものも絶対に見えてくる。

 とにかく六本木をよく見る。そして分析する。例えば交差点のあたりにいる「悪そうなお兄ちゃん」の服装を分析しても面白いかもしれないですね。何が悪そうな印象を与えているのかを明確にしたら、全部で10タイプあることがわかりました、みたいな。その「悪そうなお兄ちゃん」というものをないことにして、キレイごとで六本木を語っても意味がない。だって、実際にいるんだから。あまりそこに深く入っていくと、夜道を歩けなくなるかもしれないけれど(笑)、でも、みんなが避けてしまう部分にも僕は興味があるんですね。まずは真っ当に見る。そしてまったく反対側からも見る。愛をもって(笑)。

六本木を観察し、分析する「六本木展」。

 六本木のキーワードが幾つぐらいあるのか、ざっと出してみるといいかもしれません。「リアルな六本木」が六本木の面白さだから、できるだけリアルなキーワードのほうがいい。そうやって徹底的に観察し、客観的に分析した結果を集めて「六本木展」をやったら、歴史に残る展覧会になるかもしれませんね。

 人間のやっていることって滑稽で面白い。僕は人を観察するのが好きなんです。六本木のような都市が嫌いな人って、人が多いのが嫌だと言うけれど、僕は全然そんなことなくて、むしろ人がいる安心感もあるし、人こそが面白いと思っています。多様な人たちの、多様なカルチャーに触れられる場所。それが六本木の魅力ではないでしょうか。

交差点の上の高速道路、地下に埋めませんか?

 考えるだけだったら自由なので言っちゃいますと、六本木交差点の上を通っている高速道路って、あれ、地下に埋められないんでしょうか。あの交差点が「高架下」であることが、六本木の性格を相当左右している気がするんです。生物学的にも、暗く太陽の光の届かないようなジメジメしたところに、あまり清潔ではない生き物が生息するわけで......。あの下をどう明るくするか。これまでもいろいろと試みられていると思いますが、やっぱり存在としてある以上、明るく見せようとしても嘘になるだけだし、これは六本木の大きな課題のひとつだと思いますね。

 「デザインとアートの街」としての六本木を考えると、例えば、こういった「高速道路を地下に埋める」といった大きなことをプロジェクトとして立ち上げ、アーティストもデザイナーも関わっていくというのはどうでしょう。空が抜ければ景色は大きく変わるし、集まってくる人たちの生態系も変わるかもしれないという気はします。