01 水野 学 (アートディレクター)

水野学

農林水産省のロゴデザインからNTTドコモiD、アディダス、宇多田ヒカル「SINGLE COLLECTION Vol.2」まで、話題の仕事を数多く手掛け、クリエイティブディレクターとしても活躍する水野学さん。〈東京ミッドタウン〉のキャンペーンポスターも手掛けており、風が心地よく抜けるこの庭は、水野さんのお気に入りの場所のひとつ。初夏のような5月のある日、その庭からデザインとアートの街、六本木の未来を改めて見つめてもらいました。

update_2012.6.6 / photo_taro hirano / text_hisashi ikai & tami okano / edit_rhino

若い頃は、ちょっと苦手だった六本木。

ニコラス六本木

飯倉片町交差点すぐにある、創立57年を迎えるニコラスピザ六本木店。店内での飲食はもちろん、店内のメニューのほぼすべてがテイクアウト可能で、人気が絶えない老舗なのです。
ニコラス六本木 03-3568-2501

 外国人でごった返し、昼夜を問わずにぎやかな街、六本木。現在の繁華街としての六本木のイメージは、日本に初めてピザを紹介した店として知られる「ニコラス・ピザ」(1954年創業)が発端とも言われています。街の姿は、コロコロと変化しているように見えているかもしれませんが、「ニコラス・ピザ」をきっかけに、さまざまな外国人が集まるようになり、戦後から60年近い時間をかけて、ようやく六本木は現在のような姿になったのです。

 茅ヶ崎育ちの僕は、若い頃どうも六本木の猥雑なイメージや流行に押し流されている様子が好きになれず、六本木に足を運ぶことはあまりありませんでした。でも最近では、映画を観にきたり、本屋をのぞいたり、また子どもをつれて公園で休日を過ごすなど、六本木をときおり訪れるようになっています。

社交の場から脱却し、新しい六本木へ。

 「社交の場所」と「人が集まる場所」。この二つの言葉は似ているかもしれませんが、少し意味が異なります。社交の場は、何かしらのイベントのもと、お酒を飲みながらワイワイしている印象。一方で、人が集まる場所というのは、特に目的がなくとも、太陽に光に誘われて集う様子でしょうか。以前の六本木には「社交」という意識しかなかったような気がします。この街に来るには、何かしら理由が必要だったんです。

 今では、映画や美術館などのカルチャー&エンターテインメントがあることはもちろん、東京ミッドタウンのように、芝生や緑に囲まれた明るく気持ちの良い空間があったり、便利で生活を豊かにするものがたくさん見られるようになり、「人が集まる場所」としての魅力も生まれていると思います。

ニューヨークのように、六本木も......。

 ルドルフ・ジュリアーニ元市長による旗振りの下、ニューヨークは犯罪撲滅と大規模な再開発により、都心部の安全性と風紀を一新、都市としてのイメージを大きく変えました。今では居心地の良い場所に人が集まり、またその人たちがほかの人を呼び寄せています。僕の育った茅ヶ崎が魅力的なのも、そこにイベントがあるからではなく、海という気持ちのよい環境があるからだと思います。

 六本木も大規模な開発が行われ、六本木ヒルズ、国立新美術館、そして東京ミッドタウンが登場したことによって、街の雰囲気が一新。人々が六本木にやってくる理由も大きく変革したのではないでしょうか。