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INTERVIEW
175
岡﨑龍之祐ファッションデザイナー、アーティスト Ryunosuke Okazaki / Fashion Designer, Artist
Ryunosuke Okazaki / Fashion Designer, Artist

『“祈り”の造形を街に。六本木の日常に新しい光景をつくる』【後編】

ドレス、彫刻、インスタレーション。まだ試していない表現の先に進みたい。

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update_2026.03.04 photo_yoshikuni nakagawa / text_ shoko ema

2021年のデビュー以来、唯一無二の美を宿したドレスで多くの人を魅了し続ける岡﨑龍之祐さん。2024年にはニューヨークのメトロポリタン美術館、2025年にはロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に作品が収蔵されるなど、世界的にも高い評価を受けています。ドレスのみならず、彫刻、インスタレーションに至るまで、ファッションとアートを自在に行き来する岡﨑さんのクリエイションは、どこから生まれるのか。その根幹と、未来を見据えたビジョンに迫りました。

前編はこちら

遊ぶように形をつくり、自然の色を選びとる。

 ファッションデザイナーであり、アーティストでもある。今はどちらの肩書きも、自然としっくりきています。以前ファッションデザイナーとして世に出たあとに、自分の作品でそう名乗っていいのかと違和感を持ってしまい、彫刻に振り切った時期があったんです。2022年から2023年ごろは、アーティストとしての活動に軸足を置いていました。

 今はドレスも彫刻も、僕の中では同じくらい意味がある。例えば、木の彫刻を仕上げた後にドレスに取りかかると、彫刻で動かしていた手の感覚がそのまま移って、ドレスを形づくる線が細くなったり複雑性が増したりする。相互に影響し合っているんです。この横断こそが、僕にとっての自然体でもあります。

 彫刻をつくるときも服と同じく、デザイン画や設計図は描きません。素材をどう組み合わせたら面白い形になるか、遊びのような偶発性を求めています。色の選び方もかなり直感的で、そのときの「赤と黒にしよう」といった感覚でパッと進めてしまいます。

 僕の作品は発色が強いとよく言われます。自然の中にある彩りがすごく好きなんです。昆虫や花が放つ、あの鮮やかさ。色は生命を宿しているという感覚が、作品の色づかいに結びついているのだと思います。

PIMT

PIMT

2022年から制作している彫刻シリーズ。神社仏閣の伝統技法である組木から着想を得た。木を組み上げて建物をつくる行為が、祈りにつながっていると感じ、その過程を手で再現して造形した。この写真の《PIMT》は、ヒノキにアクリル絵具で着彩している。

大きくて異質な芸術が、六本木の人々と交差していく。

 上京してから、六本木にはよく足を運んでいます。自分の中では、アートとデザインを見に行く街です。学生時代も、森美術館や21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、ペロタン東京などを訪れていました。

 実は大学生のころ、六本木でアルバイトをしていたので、そういう意味でも身近なんです。ただそのときは、家と勤務先の往復だけで、今みたいに落ち着いて街を眺めることはしていませんでした。大人になって改めて感じるのは、芸術が日常に点在している特異な街だということです。

 六本木の魅力は、公共空間に大きな作品が存在していること。六本木ヒルズに行くといつも迎えてくれる、ルイーズ・ブルジョワの《ママン》がすごく好きなんです。大きくて異質な芸術が、街の風景として堂々と存在している。

ママン

ママン

フランス系アメリカ人のアーティスト、ルイーズ・ブルジョワによる巨大な蜘蛛の彫刻作品。高さ約10メートルのブロンズ製で、六本木ヒルズのシンボル的存在として親しまれている。作品の下に入ると見ることができるのは、腹部に抱えられた大理石の卵。《ママン》はフランス語で「お母さん」を意味し、母親への思いがモチーフとなっている。
ルイーズ・ブルジョワ 《ママン》
2002年(1999年)/ブロンズ、ステンレス、大理石9.27 x 8.91 x 10.23(h)m

 アートは公共的な場所に置かれ、日常の中で人々の目に留まることで、価値がより高まると考えています。美術館は、すでにアートに関心がある人が訪れる場所。一方、街なかのパブリックアートは、偶然通りかかった人やこれまでアートに触れてこなかった人の目にも入る。そうした予期せぬ出会いから、少しずつ影響を受ける人が生まれていく。アートが限られた場所から出て、社会に開かれていくこと。それが、パブリックアートの本質的な価値だと思うんです。

 六本木は、その可能性を実現できる街です。東京ミッドタウンや六本木ヒルズのような商業と芸術が共存する施設があり、作品を置ける場所も豊富にある。しかも、一時的なインスタレーションをしても、人々が違和感なく受け入れてくれるので挑戦しやすい。あらゆる表現を迎える土壌がある街だと感じています。

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いつか六本木で、大きなスケールの作品を発表したい。

 一昨年、念願がかなって北京でインスタレーション作品を発表することができました。タイトルは《Trajectory of rebirth》。メインに使ったのは布です。自分がこれまで扱ってきた表現手法と素材に、パブリックアートとしての可能性を感じることができた機会でもありました。軽いため持ち運びが簡単ですし、設置や撤去もしやすい。何より柔らかい素材であることが、人々が行き交う空間での安心感につながっているのだと思います。

Trajectory of rebirth

Trajectory of rebirth

2024年12月19日から2025年2月28日にザ・ペニンシュラ北京で開催された展覧会「The Path of Love and Hope」。それに伴い展示された、10メートル級のインスタレーション作品。タイトルは和訳すると「再生の軌跡」。ザ・ペニンシュラ北京のエントランスの吹き抜けに設置され、人々をホテルに迎える役目を果たした。

 六本木は、東京ミッドタウンや六本木ヒルズなど、吹き抜けのある建物が多い。そういう場所に、こうした大きなインスタレーションを設置できたら面白そうだなと思っています。見慣れた都市の風景の中に、突然理解を超えた造形が現れたら、一瞬でも日常の感覚がリセットされるはずです。そういう驚きと偶然の出会いを、いろんな人に届けてみたい。

 ファッションという観点からも、いつかショーもできたらいいですね。例えば、東京ミッドタウンの芝生エリアや街並みの中から、自分が手掛けたドレスが現れる。そんな光景が実現できたら、すごく魅力的だなと思います。

つくり、祈り、そして未知の表現を探し続ける。

 つくる行為が祈りであるということは、これからも変わりません。ただ、美術館やギャラリーの外にも、どんどん作品を出していきたいと思っています。素材も場所もスケールも、まだ試していない方向へ広げていきたい。

 でも、その先にどんな表現が生まれるかは、そのときどきの自分がつくりたいと思う欲求に従っているので、僕自身でもわからないんです。数年後の自分の作品がどんな姿をしているのか。本当に未知ですが、だからこそ面白さがあるのだと思います。

撮影場所:THE MODULE roppongi、クマ財団オフィス

取材を終えて......
3月に開催されるショーの準備で忙しい中、六本木にあるクマ財団のオフィスで行われた取材。壁にかかった《PIMT-23》を鑑賞しながらお話を聞くという贅沢な時間でもありました。印象的だったのは、ファッションとアートという2つの領域を自在に横断するだけでなく、美術館の外へ、街の中へと、作品を解放していこうとする姿勢。岡﨑さんの次の「祈り」はどんな場所に現れるのでしょうか。とても楽しみにしています。(text_shoko ema)

前編はこちら

岡﨑龍之祐

岡﨑龍之祐 / ファッションデザイナー、アーティスト
岡﨑龍之祐 / ファッションデザイナー、アーティスト

広島生まれ。現在は東京を拠点にアーティスト、「RYUNOSUKEOKAZAKI」デザイナーとして活動。

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