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INTERVIEW
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押山清高アニメーション監督、アニメーター Kiyotaka Oshiyama / Animation Director, Animator
Kiyotaka Oshiyama / Animation Director, Animator

『六本木をさまざまな分野のクリエイターが出会い、共創する場に』【後編】

細部を追求するクリエイターほど、これからはAIが支えになる。

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update_2026.01.28 photo_yoshikuni nakagawa / text_shoko ema

2024年に公開された劇場アニメ『ルックバック』。丹念に描き込まれた映像表現が評価され、監督の押山清高さんは一躍、世界的な注目を集める存在となりました。自らも主催として参加する、麻布台ヒルズ ギャラリーで開催中の展覧会『劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情』では、映画とは異なる角度から作品を味わえる仕掛けを施しているといいます。今、業界でもっとも熱い視線が注がれるアニメーターのひとり、押山さんが見つめるアニメーションの未来像とは。これまでの歩みと、「漫画をたくさん描きたい」という意外な本音にも迫りました。

前編はこちら

アニメーションの次は、漫画という舞台に挑戦したい。

 最近は、漫画への創作意欲がふつふつと湧きあがっています。『劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情』では、9ページの漫画を描き下ろしましたが、実はこれが初めてではないんです。以前、アニメーションの仕事を1カ月ほど休んで、30ページくらいの漫画を描いたこともありました。アニメーションばかりやっていると、どうしてもマンネリ化してしまいますし、常に本業以外でも何か面白いことはないかと探っているんです。

 漫画は2作品しか描いた経験がないので、まだつくり手としては入口しか理解できていません。しかし、企画から完成するまでのスピードがとても早いことは魅力に感じました。アニメーションの場合は、数分間の作品を制作するだけでも、体制構築や資金集めなど複雑なステップを経るため、数カ月かかります。それに比べて僕の漫画は、ラフに描いたとはいえあっという間にできあがったんです。

 そして、アニメーションで培った経験を漫画づくりに活かせることに気付いて。絵コンテは、どこか漫画に似ていると思いませんか。コマ割りの絵と台詞でストーリーを組み立てていくという点で、共通しているんです。また、漫画は物語をゼロからつくる力を効率良く身に付けられます。アニメーション監督も、オリジナル作品を手がければ鍛えられますが、1つのタイトルができるまで数年がかりなので、そんなに場数を踏めない。漫画ならば、短期間でいろんな実験やトレーニングができるんです。そして、アニメーションづくりは基本的に集団作業ですが、漫画はひとりでの戦い。自分の責任だけで、どこまでも試行錯誤を重ねられる世界です。それを繰り返して突き詰めた先に、どのように変化した自分がいるのか、非常に楽しみですよね。

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新しい出会いと刺激を求めて、都心に移り住んだ。

 劇場アニメ『ルックバック』が完成し、落ち着いたころに都心へ引っ越しました。これまでは基本的に郊外で暮らしていたんです。上京して横浜、国分寺、一時期西新宿もありましたが、その後は西荻窪へ。劇場アニメ『ルックバック』は荻窪で借りた小さなスタジオでつくったんですよ。まさか、こじんまりとつくった映画が、港区の中でもひときわ未来的な麻布台ヒルズで展覧会になるなんて、夢にも思っていませんでした。特に、麻布台ヒルズの有機的な建築は、僕の好きな建築家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの作品を思い出させてくれて、見るたびに楽しんでいますね。

麻布台ヒルズ

麻布台ヒルズ

森ビルによって2023年に開業した、港区麻布台・虎ノ門・六本木にまたがる大規模複合施設。中には、ギャラリーや商業施設のほか、オフィス、住宅、ホテルなどが集結している。3棟ある超高層タワーの外観デザインは、アメリカのペリ・クラーク・アンド・パートナーズが手がけ、低層棟の建築とランドスケープは、イギリスのトーマス・ヘザウィック氏が担当した。館内にはパブリックアートも点在し、オフィスロビーではオラファー・エリアソン氏、中央広場では曽根裕氏、奈良美智氏、ジャン・ワン氏の作品を鑑賞することができる。

フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー

フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー

1928年生まれ、オーストリア・ウィーン出身の芸術家。絵画や建築の分野などで活躍した。環境保護にも積極的に携わり、彼の建築に見られる有機的な形には、人間と自然の調和を大切にする思想が息づいている。新日家で、日本では姓を直訳した「百水」という雅号を使っていた一面も。国内にも作品があり、大阪のごみ処理場「舞洲工場」や「キッズプラザ大阪」といった建築のほか、東京・赤坂にある《21世紀カウントダウン時計》などを手がけた。
画像提供:大阪広域環境施設組合「舞洲工場」

 郊外エリアは居心地が良かったのですが、どうしても同業者と過ごすことが多くなり、行動範囲も狭くなって、新しい刺激に触れる機会が少なくなっていました。思い切って引っ越したのも、環境の力で自分を変えたいと思ったからです。それに、大きな仕事を終えて達成感を得た後は、いったん孤独になって、そこから新しいスタートを切りたくなるんですよね。

 今は少しずつ、都心の解像度があがってきました。しかも、麻布台ヒルズだけでなく、周辺の六本木エリアまで足を運ぶようになって。僕にとって六本木は、夜の街でおっかないイメージだったんですよ。でも、展示の準備を通して友人が増えたおかげで、最近は六本木ヒルズに映画を観に行ったり、ランチのお店を探したりすることもあります。あとは、さくら坂公園を散歩するのも好きです。こうやって、だんだんと六本木の昼間の顔が見えてきたのも、新しい刺激のひとつですね。

さくら坂公園

さくら坂公園

六本木ヒルズの南側、さくら坂沿いにある港区立の公園。愛称は、ロボロボ公園。閑静な地域にあり、六本木の中でも憩いの場所として知られている。「六本木ヒルズパブリックアート&デザインプロジェクト」の一環で設置された公園で、現代アーティストのチェ・ジョンファ氏が園内のアートディレクションや遊具を設計し、かつて子どもだった大人へも愛のメッセージを込めている。入口には、同氏が手がけたオブジェ《ロボロボロボ》が。44体のブリキのおもちゃのようなロボットでつくられたタワーで、ランドマークとしてそびえている。
画像提供:有栖川宮記念公園管理事務所

六本木にアニメーターと異業種の人が出会う場を。

 六本木には、純粋に手を動かすクリエイターはおらず、どちらかというと最先端のテクノロジーを活用する司令塔のような人がいるイメージです。『劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情』の内覧会で、ヘッドマウントディスプレイを使った3Dドローイングを披露したのですが、こういったイベントを考えてくれるのも、六本木という地域ならではだと思いました。しかも、エンジニアが僕の描きやすいようにプログラミングを調整してくれて。細部までこだわる姿勢に、同じクリエイターとして強く共感しましたね。

押山清高氏による3Dドローイング

押山清高氏による3Dドローイング

2026年1月15日に開催された内覧会で、押山清高氏が3Dドローイングを披露。ヘッドマウントディスプレイを装着し、会場の空間にイラストを即興で描いた。
画像:© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会/©「劇場アニメ ルックバック展」実行委員会

 六本木で出会う人たちは、こういった新しい体験をもたらしてくれる方々が多い印象です。都心へとフィールドを広げてから確実に刺激が増していて、とても面白い。今後、異なる業界のプロフェッショナルたちが出会い、一緒に作品を生み出せるような環境が六本木に整うと良いなと思います。例えば、これまで交わる機会の少なかったアニメーターとエンジニアがともにプロジェクトを進めれば、何か化学反応が生まれるかもしれません。僕自身、これまで培ってきたアニメーションをつくる技術が、この地でどう形を変え、どんな新しい表現になるのか、大変興味があります。

こだわりが強い人こそ、テクノロジーを味方にすると良い。

 昨今の社会全体の動きと同じく、アニメーション業界にもAIが入りつつあります。業界内での大きな変化はまだありませんが、今後ますますつくり方が多様になり、作品数も増えていくはずです。さらに、AIを使って一人で制作する人も続々と登場すると思います。誰でもアニメーションも漫画もゲームもつくれる。みんながクリエイターになれる時代が到来すると感じています。

 アニメーション制作の現場では、AIと上手く分業することで、人海戦術だけでは到達できなかったクオリティまでブラッシュアップできるようになるでしょう。あらゆるルック(視覚的な印象)で、いかようにも表現できる時代が来ます。今、手描き風の描写が日本ブランドとして世界で認知されていますが、AIがさらに表現の可能性を広げてくれるはずです。

 これまではどんな大作でも、監督やスタッフ全員が満足するまでつくり込むのは、大変難しいことでした。スケジュールもクリエイターも限られ、やり直しもそう利かない。しかしAIの登場で、チームの力や監督のこだわりを今まで以上に突き詰められる時代になると思います。ただし、あらゆる制作者が同様にAIを使ってくるでしょう。やはり、競争の中で抜きん出ることの難しさは変わりません。

 僕自身としては、アニメーション制作にAIを使ってみたいですね。例えば、人物のまばたきや口パクを描くだけでも、かなりの作業量が必要になります。もしAIがつくり手のクセや好みを学習して代わりにやってくれるなら、もっと力を入れたい他のことに集中できる。こだわりが強い人こそ、テクノロジーを味方につけた方が尖りやすいでしょう。また、これまで集団作業で感じていた不自由さから、テクノロジーによってある種解放されるかもしれない。そこに大きな魅力を感じています。

撮影場所:『劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情』(会場:麻布台ヒルズ ギャラリー 会期:2025年1月16日~3月29日)

取材を終えて......
"手描き"の価値を劇場アニメ『ルックバック』で見せてくれた押山さん。将来的に見据えているのは、AIというテクノロジーとの共存です。反復作業はAIに任せ、浮いたエネルギーを創造性へ注ぐ。こだわりを追求するその選択には、描くことへの愛が垣間見えます。そして今、新たに惹かれているのが漫画という表現。展覧会のために描き下ろした一本、みなさんも会場でぜひ。新天地に引っ越された押山さんは、これからどんなクリエイターたちと作品を紡いでいくのでしょうか。期待せずにはいられません。(text_shoko ema)

前編はこちら

押山清高

押山清高 / アニメーション監督、アニメーター
押山清高 / アニメーション監督、アニメーター

1982年、福島県生まれ。2004年よりアニメーターとして活動を開始。 2006年『電脳コイル』で作画監督を務める。以後、監督・脚本・デザインなど幅広い役割で多数の作品に参加。2017年、アニメーション制作会社スタジオドリアンを設立し、短編『SHISHIGARI』を制作。2024年、監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督・原画を務めた劇場アニメ『ルックバック』を発表。同作は第48回日本アカデミー賞「最優秀アニメーション作品賞」、第34回日本映画批評家大賞「アニメーション作品賞」、第1回アジア芸術映画賞「最優秀アニメーション映画賞」、第75回芸術選奨文部科学大臣新人賞(メディア芸術部門)など国内外で多数受賞。2025年のブランドムービー『赤のキヲク』でも、65th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSフィルム部門Bカテゴリー「ACCゴールド」などを受賞。著書に『作画大全作画添削教室・押山式作画術増補合本 神技作画シリーズ』。

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