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INTERVIEW
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イム・ジビンアーティスト Jibin Im / Artist
Jibin Im / Artist

『無機質なビル街に、バルーンで“移動式美術館”をつくる』【前編】

現代を生きる人を癒す、小さくて温かなアートの力。

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update_2025.10.15 photo_yoshikuni nakagawa / text_shoko ema

ある日、いつも通る道で巨大なクマの風船に出会ったら? そんな驚きと非日常を私たちにもたらしてくれる、アーティストのイム・ジビンさん。“ベアバルーン” と名付けたクマを世界中の街に前触れなく出没させる、《EVERYWHERE》というプロジェクトを展開しています。これまでは都市を中心にこのゲリラアートを実施していましたが、最近は地方にもフィールドを広げているそうです。生きづらさを抱える現代人を捉え、鑑賞者を癒し続ける作品を生み出す理由とは。そのクリエイティビティの源を探ります。

後編はこちら

芸術から人々のもとへ出向くようにしたい。

 《EVERYWHERE》は、2011年にソウルで始動しました。これまでアジア、アメリカ、ヨーロッパ、中東など80以上の都市を巡回していて、現在も継続中です。わざわざ時間を作って美術館やギャラリーに行かなくても、誰もが日々の中でアートと出会い、向き合えるようにした"デリバリーアート"という形式をとっています。「芸術は至る所にあり、誰もが遭遇できる」ということを、このプロジェクトを通して伝えたいんです。

 主役となるのは、クマの形をした巨大な風船「ベアバルーン」。これが街並みの中に突如として現れます。日常的な空間を一瞬で美術館へと変えてしまう、そんなゲリラ的インスタレーションです。ちなみに、ベアバルーンは綺麗に立たせず、ぎゅっと何かに挟まったり歪んだりした状態で設置します。モチーフとしたのは、地下鉄の通勤ラッシュで会社へ向かう人たち。ストレスに押し潰されそうな現代人の姿や感情を捉え、応援の気持ちを込めました。

 クマのモチーフの着想源に、アートトイの「ベアブリック」があります。韓国では20年近く前、承認欲求を満たすために高級品を過剰に購入する消費行動が注目されていました。そんななか、シャネルと「ベアブリック」のコラボレーションした商品が出て、大変な人気だったんです。まとうブランド名によって価値が上がるフィギュアを見て、着る服で自分の評価が決まると感じる人々に似ていると思ったんです。そこで、「ベアブリック」へのオマージュを込めながら、今の時代を表現するのにクマを使い始めました。

 それでは、《EVERYWHERE》プロジェクトの出発点はというと、大学生時代の経験です。私は美術大学で彫刻などを学び、典型的なホワイトキューブのギャラリーを中心に展示をしていました。ただ、そういう場所にはアートに興味のある人しか来ない。芸術はなぜ特定の層にしかアクセスできないのかと、疑問が湧いたんです。

 アーティストは作品にいろんなメッセージを込めています。しかし、ギャラリーに訪れた人にしか伝えられないとなると、その作品が持つ役割が少し薄れてしまうと感じました。芸術を難しいと思い込んでいる人もいますし、展示会場から遠いところに住む人も多い。そこで、アートが鑑賞者のもとへ行くべきではないかという考えに至り、街や公共空間を一時的に美術館へと変えるプロジェクトを構想。それが《EVERYWHERE》のスタートでした。

困難が待ち構えていても、ゲリラアートをする意味がある。

 《EVERYWHERE》は、鑑賞者が作品と気軽に対話できるような、肩肘張らないプロジェクトにしたいと考えていました。大衆的で接しやすい、サブカルチャーに近い芸術にしたかった。それで、ストリートアートのように作品を突然出現させる形を取ったんです。設置場所の選定は、その都市でもっとも人が集まる空間を見つけるところから始まります。そのあと、現地の人が通勤する道や日々使うマーケットなど、もう少しローカルな匂いがする場所をチェックします。

 ゲリラアートなので、もちろん事前に許可などは得ていません。そのため、その場で担当者を見つけて相談するのですが、協力してもらうのが難しいときもある。警備員に追い出されたり、警察にパスポートを没収されたりしたこともあります。でも、綱渡り的行為だとわかっていながらも、そのスポットならではの雰囲気を生かしたリアルな展示をしたいのです。結局、たいていの場合は、作品素材はやわらかいバルーンで、何かを破壊するパフォーマンスもしないと説明すると、納得してもらえました。

 現場で準備中は警戒して遠巻きに見ていた人も、ベアバルーンを膨らませた後は徐々に近付いてきて、笑顔を見せてくれます。それでも、国ごとに少しずつ反応は違いますね。日本では2016年から2017年にかけて、さまざまな場所にベアバルーンを出現させました。日本のみなさんは、静かに近づいて写真を撮ったり、眺めて微笑んだりした後にすっと離れていく印象。一方、ヨーロッパの国々では、多くの場合、作品に触ったり私に質問したりする人も珍しくありません。ただ、国や文化によってリアクションが異なっても、芸術は人々の心を動かし、つなぐことができる。それを肌で感じています。

日本で開催された《EVERYWHERE》プロジェクト

日本で開催された《EVERYWHERE》プロジェクト

2016年から2017年に日本で展開。東京は、東京駅などのランドマークだけでなく、パーキングに停められた車と車の間や建物の外階段などにも真っ白なクマが出現した。2017年には京都と大阪にベアバルーンが登場。京都は嵐山のほか清水寺の近く、有名な観光地である産寧坂(三年坂)で。大阪では大胆にも、多くの人が行き交う道頓堀の中心でもインスタレーションを実施した。
画像:©六本木アートナイト実行委員会

 ベアバルーンが現れる時間は、長くてもだいたい4時間、短くて1時間程度が目安です。たまに、数十分というケースもあります。短時間でインスタレーションを終える理由は、ゲリラだからでもありますが、持ち歩いているバッテリーの容量が決まっているという物理的な問題もあります。実は、風船を完全に膨らませるには5分程度あればいいんです。大きな送風機で空気を入れるのですが、このときネックとなるのは電気。外国の場合、屋外で電源を確保するのが難しいこともあるため、ポータブル充電池を持っていきます。いつも6、7個くらい持参しますが、とても重いので、それが限界かもしれません(笑)。

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芸術とファッションがつながったのが新鮮。

 ありがたいことに、これまで10年以上たくさんのコラボレーションをしてきましたが、一番記憶に残っているのはやはりグッチとのキャンペーンでしょうか。2021年にグッチが100周年を迎えてアジア限定のカプセルコレクションを発表するときに、《EVERYWHERE》プロジェクトでティザーキャンペーンを一緒にやりたいと声をかけてくれました。

 ファッションブランドが新しいコレクションを告知するとき、通常は広告ビジュアルなどを展開しますよね。しかしこのときは違いました。韓国の有名なランドマークであるソウルのDDP(東大門デザインプラザ)や南山ソウルタワーなどに、ベアバルーンを登場させたんです。見た人は、最初は何なのかわからず不思議に思っていたけれど、後日グッチがベアバルーンを展示されるまでのメイキング映像を公開。それを見ることでクマとコレクションとがつながったキャンペーンだったと気付く仕掛けでした。

 グッチが私の思いを理解してそのまま反映してくれたことも嬉しかったし、アートから始まったファッションのキャンペーンがとても新鮮で、なにより芸術がファッションと自然に結びついて見えたのが刺激的でした。世界的なブランドのパワーを感じ、一緒にクリエイションに挑戦できたことは自分のアーティスト人生において大きな糧になりました。

《KAI GUCCI Capsule Collection Teasing Campaign and Installation》(2021)

2021年に実施されたキャンペーン。グッチが韓国の男性アイドルグループ「EXO」のメンバー、KAIとのコラボレーションコレクションを発表する際、韓国のさまざまな場所にベアバルーンを出現させた。DDP(東大門デザインプラザ)や南山タワーのほかに、ソウルのグッチ清潭店や期間限定ショップなどにも登場し、話題を呼んだ。

撮影場所:『六本木アートナイト2025 イム・ジビン作品《あなたは一人じゃない》』(会場:東京ミッドタウン コートヤード / 会期:2025年9月26日~28日)

後編はこちら

イム・ジビン

イム・ジビン / アーティスト
イム・ジビン / アーティスト

1984年生まれ、釜山出身のイム・ジビンは、2009年に上海現代美術館(Shanghai MOCA)で開催された「Animamix Biennial」でデビューした後、ソウルを拠点に活動している。2011年からソウルで開始した公共アートプロジェクト《EVERYWHERE》は、現在までにアジア、北米、ヨーロッパ、中東など50を超える都市で展開され、都市における公共アートの新たな可能性を提示している。ソウル美術館、大邱美術館、アブダビ・マナラト・アル・サアディヤット美術館など多数の美術館や、ユネスコ、国連財団、ユニセフ、2018平昌冬季オリンピック・パラリンピックなどの公共機関をはじめ、グッチ、コカ・コーラ、ナイキ、サムスンなどの多様なグローバルブランドとのコラボレーションを通じて、芸術の社会的役割を拡大し続けている。

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