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INTERVIEW
168
ヤノベケンジ現代美術作家 Kenji Yanobe / Contemporary Artist
Kenji Yanobe / Contemporary Artist

『人々が熱狂する荒唐無稽なアートで街に「事件」を起こす』【前編】

創造のエネルギーを、美術館に閉じ込めずに解放する。

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update_2025.06.25 photo_tada / text_ikuko hyodo

宇宙服をまとった巨大な猫や、黄色い放射能防護服を着てほほ笑みを浮かべる子ども、防護服を着たバーコード頭の腹話術人形……。インパクトの中にかわいさやユーモア、そしてアイロニーが同居するキャラクターたちの生みの親、ヤノベケンジさん。ジャパニーズポップカルチャーの黎明期に、サブカルチャーの要素をいち早く取り入れた作品を発表し、今なお第一線で活躍を続ける稀有なアーティストの原点とは。現在は、大学で次世代のアーティストを育てる立場でもあるヤノベさんの、30年以上におよぶ活動を紐解いていきます。

後編はこちら

"未来の廃墟"で育まれたイマジネーション。

 六本木との関わりで思い出すのは、2004年の展覧会です。森美術館が開館した翌年、第2回目の企画展となる「六本木クロッシング」に呼んでもらいました。そのグループ展は、《トらやん》という僕のキャリアのなかでもかなり重要な作品が、形になった場でもあるので思い入れがあります。《トらやん》は腹話術人形から派生したキャラクターで、前年の2003年に国立国際美術館で開催した「MEGALOMANIA」の個展をきっかけに誕生しました。

トらやん

《トらやん》

バーコード頭にちょび髭、ポーランド民謡を歌う世紀のトリックスター。ヤノベさんの父親であるヤノベマサノブさんの腹話術人形が原型。その後、さまざまな形態に変容させながら作品としての世界観を広げる。
画像:(撮影)豊永政史

近作展29 ヤノベケンジ MEGALOMANIA

近作展29 ヤノベケンジ MEGALOMANIA

2003年に国立国際美術館(当時・吹田市)で開催されたヤノベさんらしいユーモアと批評性が融合した、体験型のインスタレーション展。エキスポタワーの解体部材を使った新作を含む約40点を展示し、ヤノベさんが体験した「未来の廃墟」への時間旅行を鑑賞者が追体験できる空間が話題になった。
画像:(デザイン)豊永政史

 僕の生い立ちを少し話すと、1965年大阪生まれの大阪育ち。1970年の大阪万博があった翌年に、万博会場跡地の近くへ家族で引っ越してからは、万博の取り壊し現場が僕の遊び場になっていました。太陽の塔の周りのパビリオンが次々とつぶされ、「大屋根」と呼ばれた丹下健三さんの建物の下に、磯崎新さん制作の「デメ」というロボットが放置されていて......。未来の廃墟ともいえるその風景は、僕のイマジネーションの原点になっています。

 実は国立国際美術館は、今は大阪の中之島に新築移転していますが、もともとは万国博美術館として建てられた建物を転用していたんです。建物の老朽化に伴い解体されることになり、そのクロージングに個展の開催が決まったときは、うれしかったですね。僕の活動としても集大成といえる内容にしたくて、大阪万博ひいては岡本太郎さんの思想にぶつかりながら、未来都市の廃墟となった万博跡地にこれまでの作品を並べて、妄想都市を移植するような構成にしました。もう作家をやめてもいいくらいの意気込みで、全身全霊で挑んだプロジェクトでした。

国立国際美術館

国立国際美術館

大阪・中之島にある現代美術を専門とする国立の美術館。1977年大阪万博の跡地に開館し、2004年に現在の大阪市・中之島へ移転。建築家シーザー・ペリが設計した完全地下型の建物が、都市空間にアートのような存在感を与えている。

父親の腹話術人形から生まれた、トらやん。

 《トらやん》がいかにして生まれたかというと、父親が定年退職後に、腹話術の趣味にはまったことがきっかけです。父は、僕がアーティストになることを昔から反対していたのですが、家からほど近い万博記念公園での息子の個展開催がよほどうれしかったのか、設営中から毎日遊びに来ていました。そんな父が僕のすべてを出し尽くしたともいえる展覧会のオープニングで、美術館から勝手に持ち出したアトムスーツを腹話術の人形に着せてショーを行ったんですよ。ダミ声で不器用な父が、アトムスーツを着た腹話術人形を操るミスマッチさを想像してみてください。シュールだと思いませんか?(笑)ある意味、この運命的な事件をきっかけに、インスピレーションが降臨してきました。腹話術人形にバーコードのかつらとちょび髭をつけて、"トらやん"っていう名前のキモカワとっちゃん坊やのキャラに改造したら、しっくりきたんです。

 翌年の、森美術館でのグループ展に参加してほしいという依頼があったときも、アイデアが何も思いつきそうにないので最初は断るつもりでした。けれど、ちょっとした遊び心から、"森美術館だから森の映画館"という設定で、木の小屋の前で《トらやん》が踊っているセルフパロディのスケッチを描いてみたんです。木の小屋に見える建物は、実は核シェルターの役割を担った堅牢な鉄のシェルターで、中では腹話術ショーの映像が流れている。それは僕の父親から孫に対する、何かあったときにはここに隠れて生き延びてくれよ、という悲しい遺言でもあるんですが......。これもある意味運命的に生まれた作品と言えるかもしれません。

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第1回六本木アートナイトでの伝説的パフォーマンス。

 その後、再び六本木に戻ってきたのが、2009年に初めて開催された六本木アートナイトです。一夜だけ街をアートで彩るイベントをやりたい、という依頼をいただいた際にまず思ったのが、単なるお飾り的なことをやっても意味がない、ということでした。その頃の《トらやん》は、増殖や巨大化を遂げながら、2005年には《ジャイアント・トらやん》という火を噴く巨大なロボットに進化し、金沢21世紀美術館や豊田市美術館などで、アトラクション的な魅力を放ちつつ展示されていました。今度は美術館を離れ、トらやんを街に繰り出させたいと思いつき、引き受けることにしたのです。

 初開催だからこそ多少の無茶はできるだろうと踏んで、《ジャイアント・トらやん》がディズニーランドのエレクトリカルパレードのような台車に乗って、火を噴きながら六本木界隈を練り歩くアイデアを提案しました。「それくらいのことをやる覚悟はありますか?」と実行委員会の方々に聞いたら、意外にも乗ってきてくれて(笑)。自衛隊から戦車を呼んで、昔の刑事ドラマ『西部警察』みたいに車が爆破されるアイデアはさすがに採用されませんでしたが、要はそのくらいの"事件"にして、街全体を非現実的な状態に置くことが、新しいアートや文化の創出につながる。1回目にふさわしい強烈なインパクトを残せたと思っています。

ジャイアント・トらやん

《ジャイアント・トらやん》

2009年3月28日から29日にかけて開催された第1回「六本木アートナイト」では、代表作《ジャイアント・トらやん》を六本木ヒルズアリーナに展示。全長7.2メートルの巨大な赤ちゃん型ロボットは、歌い、踊り、口から火を噴くというパフォーマンスを披露し、来場者に強烈なインパクトを与えた。
画像:(撮影)KENJI YANOBE Archive Project

 ちなみにこの《ジャイアント・トらやん》のパフォーマンスの構想は、フランスを本拠地に置くラ・マシンというパフォーマンスグループの活動からインスピレーションを得ています。幼少期に見た、岡本太郎さんの《太陽の塔》をはじめとする作品にイマジネーションの限界をすでに外してもらっていたので、荒唐無稽と思われるような発想じゃないと、僕自身も面白みを感じられないのです。

《La Machine(ラ・マシン)》
《ラ・マシン》は1999年に設立されたフランソワ・ドラロジエールが監督を務めるストリートシアターカンパニー。機械仕掛けの巨大なオブジェクトなどを制作。さまざまな演劇や世界各地のイベント、都市計画のプロジェクトなどに参加している。

アートには都市の規制を緩め、可能性を引き出す役割がある。

 僕が担当した第1回の六本木アートナイトと同じ年、大阪では「水都大阪2009」というイベントが開催され、《ラッキードラゴン》という作品が、火を噴きながら道頓堀川を泳ぎました。当時、知事だった橋下徹さんが推進していた文化予算削減の政策に対するアンチテーゼの意味も込めた作品だったのですが、最終的には大阪文化賞を受賞しました(笑)。同年、大阪府ではあらためてアートの力を街づくりに生かす目的で「おおさかカンヴァス推進事業」が発足。大阪をカンヴァスに見立て、世界中からアーティストを公募するプロジェクトの審査員やプロデューサーを務めていました。都市にある規制の枠を超えたアートの可能性をあらためて実感しています。

ラッキードラゴン

《ラッキードラゴン》

「水都大阪2009」で発表された、トらやん専用のアート船。遊覧船を改造して制作。作品タイトルは、1954年にマーシャル諸島ビキニ環礁で、アメリカが行った水爆実験で被曝した、遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」の英語名。
画像:(撮影)塚正玲子

 東日本大震災後は《サン・チャイルド》という作品を制作し、2018年には福島市の公共の場に設置されたその像が、撤去される騒動も起こりました。SNS上で賛否両論の意見が飛び交いましたが、社会とアートの関わり方がどうあるべきか、最前線で実践して戦ってきているところはあります。業界で生きていくためには、マーケットを捉えることも、歴史や文脈を踏まえることも重要ですが、人間の創造のエネルギーはもっと尊い。美術館やギャラリーのような枠組みに閉じ込めるべきものではない、と思っているんですよね。

サン・チャイルド

《サン・チャイルド》

右手に希望を象徴する「小さな太陽」を持ち、左手にヘルメットを抱える、全長6.2メートルの子ども像。防護服姿でヘルメットを脱いだポーズや、胸元のゼロのカウンターが、放射能の心配のない世界を取り戻した未来の姿を表している。2011年制作。画像は2018年に福島市の公共空間に恒久設置されるものの、1か月あまりで撤去に至ったもの。
画像:(撮影)KENJI YANOBE Archive Project

 そういう考え方がベースにあるのも、太陽の塔や万博の跡地の原風景が、リミッターを外してくれたからなのでしょう。言ってしまえば、何もなくなってしまった未来の廃墟だから、何でもできるという意識が、常に根底にあるのかもしれません。

撮影場所:六本木ヒルズ 毛利庭園

後編はこちら

ヤノベケンジ

ヤノベケンジ / 現代美術作家
ヤノベケンジ / 現代美術作家

1965年大阪府生まれ。現代美術作家。1990 年、隔離タンクの中で瞑想する体験型の作品《タンキング・マシーン》でデビュー。「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマに機械彫刻を制作。ユーモラスな形態に社会的メッセージを込めた作品群で国内外で評価される。1997 年より、放射線感知服《アトムスーツ》を身にまといチョルノービリ(チェルノブイリ)や大阪万博会場跡地を訪れる《アトムスーツ・プロジェクト》を敢行(〜2003年)。21 世紀の幕開けとともに、制作テーマを「リヴァイヴァル」へと移行。2003 年、国立国際美術館(大阪万博会場跡地)で集大成的な個展「メガロマニア」を行う。
2004 年より、実父の腹話術人形「トらやん」をキャラクターとするシリーズを開始。2004〜05年、金沢21 世紀美術館の開館に合わせて、全長7.2mの《ジャイアント・トらやん》を滞在制作。2011 年、東日本大震災後、希望のモニュメント《サン・チャイルド》を制作し、国内外で巡回。3体のうち1体が茨木市(大阪)に恒久設置される。2017年、福を運ぶ旅の守り神《SHIP'S CAT》シリーズの制作を開始。2021 年、大阪中之島美術館に《SHIP'S CAT (Muse)》が恒久設置される。2024年、生命の旅をテーマにした巨大インスタレーション《BIG CAT BANG》をGIZA SIX中央吹き抜けで展示した。
創作の原点は幼少期に大阪万博会場が解体されていく現場「未来の廃墟」で遊んだこと。美術の起源や存在意義を問い、環境と相互作用をもたらす作品を制作している。

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