101 和田永(アーティスト / ミュージシャン)後編

和田永_03

ときにオープンリール式テープレコーダーを楽器として操り、ときに古い電化製品を電子楽器として蘇らせ、自らの体を使って音を表現する和田永さん。音楽とアートの領域でつくり出す唯一無二の作品、パフォーマンスで注目を集める和田さんは、2019年2月21日から行われるTOKYO MIDTOWN × ARS ELECTRONICA「未来の学校祭」への参加も発表されました。ものづくりの原点と「未来の学校祭」で表現したいパフォーマンスについて、そして役目を終えた家電とテクノロジーで生み出す独自のアートを通じて、今後向かいたい場所を聞きました。

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update_2019.2.20 / photo_yoshikuni nakagawa / text_akiko miyaura

身近にあるもの、生活と結びついたものから音楽は生まれる。

 楽器をつくりたい、パフォーマンスをしたいという衝動が生まれるときって、自分が思い描く世界観を形にしたいということと結びついているんです。やってみたいのは、"電磁パンク"という世界観ですね。

 蒸気機関が過剰発展した世界を舞台にした物語を"スチームパンク"、インターネットがとにかく社会の隅々まで過剰発展した未来を舞台にした物語を"サイバーパンク"って呼ぶじゃないですか。それと同様に磁石とか電気、電波、電子、電磁のテクノロジーが過剰発展したときに生まれる物語、民族音楽が"電磁パンク"としてあり得るんじゃないかなって。

 その電磁パンクの世界で使っている楽器は、もちろんブラウン管や扇風機(笑)。基本的に土着的な音楽が根源的に生まれる瞬間って、生活と結びついていると思うんです。身近にあるモノを叩いたり、弾いたりするなかで音をみつけ、さらに弾いた弦の長さが違うと、音程が変わることを発見して音楽になっていく、みたいな。僕たちが電磁的な発音原理を見つけて、楽器にしていく過程も似たようなものだと思うんです。そしてあらためて思ったのは、身近にあるテクノロジーって、実は楽器としての機能を秘かに備えているのかもということでした。

パフォーマンスは映画を撮っているのと同じ感覚。

扇風琴 扇風琴

扇風機に電球と穴の開いた円盤を取りつけ、回転によって起こる光の点滅を電気信号に変換して音を鳴らす楽器。ギターのようにストラップを取りつけて肩にかけ、回転を利用しながら演奏する。サウンドも、エレキギターのような音色。
Photo by Mao Yamamoto

 電磁パンクということで言うと、実は映画が撮りたいんですよね。いまパフォーマンスしていることって、僕にとっては映画のシーンをつくるのと似た感覚なんです。自分が監督で、見ているみなさんの目がカメラ、電磁パンクの世界にある楽器と暮らしている人々が出演者で、そこで奏でられる音楽がサントラ(笑)。夕方になると人々が『ブラウン管ガムラン』を叩いたり、『扇風琴』を弾き始めたりして、物語が展開していく......。「未来の学校祭」でみなさんを巻き込んでやることも、目の前で超高解像度にリアルに進んでいく映画のようなものだと思います。

 そして、今回は電磁パンクの世界を六本木という街で表現するのですが、六本木でなんでもできるとしたら電磁神輿や電磁山車を通りに走らせて、"電磁百鬼夜行"をしてみたいですね。もし、街に置いていいなら"通電キス"みたいなスポットをつくるのもおもしろそう。実は友人の結婚式で何かやってほしいと言われたときに、「通電キスでしょ!」って提案して、実際にやったことがあるんですよ。新郎・新婦がブラウン管を触って低周波を流してキスをした瞬間、ブビーーーッて爆音がなる装置をつくって。ふたりとも「すごくいい記念になった」と喜んでくれて会場もかなりホットになりました(笑)。