TOUR REPORT

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

「これから訪れるギャラリーのディレクター・石井孝之さんは、ここのほか、実は先ほど訪れたピラミデビルでも、『モダン』というギャラリーを運営しています」と金島さん。到着したのは、AXISビル。こちらの2階にある「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」を見学し、最後は質疑応答を行ってツアーを締めくくりました。

日本のヴィンテージ作品や海外作家の写真を紹介する拠点。
「タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム」

「写真を軸に扱っている『タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム』は、2013年にこちらにオープンしたばかり。4階には同じく写真を扱う複合スペース『IMA CONCEPT STORE』もあります。日本の写真への評価は年々高まっていますが、ここでは国内外の作家を広く扱っていて、海外での評価もとても高いギャラリーです。では、ギャラリストの方に話を聞いてみましょう」

「現在はリナ・シェイニウスの日本初の個展『Exhibition 03』を開催しています。リナはスウェーデン出身でロンドンを拠点にしている写真家。日本の写真にも造詣が深く、荒木経惟さんがとても好きだそうです。プライベートなあらゆる場所にカメラを持ち込んで撮影している点には、荒木さんとの共通点をみることができるかもしれません。価格はエディションによって異なりますが、一番小さい作品はエディション数が15、価格も4万円からご紹介しています。若手ならではの落ち着いたプライスです」(菊竹さん)

「ここ数年、日本の写真に対する海外からの評価がとても高まっています。2008年に世界最大級のアートフォトフェア『パリ・フォト』で日本特集が組まれたのを皮切りに、とくに戦後のヴィンテージ作品への注目が集まっていますが、まだ充分に紹介されていない作品や作家も多いので、これから紹介していきたいですね。お客様は海外からも多くいらっしゃいます。声をかけていただければ、作家や作品についてご説明しますよ」(菊竹さん)

ギャラリーは、作品と個人が対峙する時間を尊重する。

「みなさん、今日はありがとうございました。3つのギャラリーを回って、アートのマーケットについての基本をご理解いただけたでしょうか。最後に、ご質問があればどうぞ」

――ギャラリーは作品販売の場ということですが、なぜあまり接客をしないのですか?

「都市伝説的にお金を払うまで外に出さないなんてギャラリーがあったと言われます(笑)。積極的な接客を行うところもありますが、特に現代美術のギャラリーでは、しつこい接客をするところはまずないと思います。逆にお客さんのほうから聞かないと説明してくれないくらいなので、ぜひ、あまり怖がらずに声をかけてください。質問に答えるのも仕事ですから、やさしく答えてくれますよ」

――美術館と違って、ギャラリーの中があまり装飾されていないのはどうしてですか?

「まず単純に費用対効果の問題ということがあります。美術館は、行政の予算や入場料等の収入をベースに計画されたプランやストーリーに沿って作品を見せているのに対して、ギャラリーはあくまで作品の販売でビジネスが成り立っている、その違いですかね。またアーティストの作品そのものに対峙する空間と考えれば、過剰な装飾はあまり必要ではないとも言えるのではないでしょうか」

――現代美術の価格はどうやって決まるんですか?

「基本的にはギャラリストが、アートマーケットの現状や今までのビジネスの経験を踏まえ、アーティストと相談しながら決めていきます。また美術館での個展やグループ展、トリエンナーレなどの国際展に出たりすると少しずつ値段が上がっていくし、ほかにも有名なキュレーターによる記事や論文、本が出版されるなど、学術的な裏付けがつくことでも上がりますね。値段を付けて作品を販売するということは、ギャラリーとアーティストが一緒になって頑張っていきましょうというスタートの合図。分配はアーティストとギャラリーで半分ずつシェアするというのが基本的な考え方となっています」

「3月20日に開催する『アートフェア東京2015』には、今日訪れたようなギャラリーのほか、企業やパートナーを含め140軒ほどが出展します。作品を購入する第一歩としてはとてもいい機会だと思いますので、ぜひお越しください。ギャラリーではどうやって値段を確認すればいいのか、一点ものは高くてエディションは買いやすいとか、そんな知識を持って作品を観ると、以前とはまた違って見えるかもしれません。ギャラリーは、作品と個人が対峙する時間を尊重してくれる場所。これからは、ぜひ緊張せずにギャラリーを楽しんでくださいね」

金島隆弘(かねしま・たかひろ)
1977年、東京都生まれ。FEC代表(2008-)兼アートフェア東京ディレクター(2010-)。横浜市創造界隈形成推進委員会委員。FECでは、アーティストの制作支援や交流事業、東アジアの現代アートの調査研究等を手掛ける。2002年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、ノキア社、株式会社東芝、東京画廊+BTAPを経て、2007年よりFEC(ファーイースト・コンテンポラリーズ)の設立準備、2008年4月より横浜ZAIMにて活動を開始。日本や中国、台湾、欧州等で、現代美術から工芸、ファッション、メディアアートなどの展覧会やアートプログラムを企画。主な展覧会として、「Asia Cruise:物体事件/Object Matters」(台北, 2013)、「Find ASIA-横浜で出逢う、アジアの担い手」(横浜,2014)など。また、横浜にて中国とのアーティスト・イン・レジデンス交流事業を2008年より担当し、滞在アーティストによる展覧会「失眠鎮/吉磊」(2014)などを企画。