TOUR REPORT

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

第17回六本木デザイン&アートツアー 金島隆弘氏と巡り、知る、アートギャラリーとマーケットの仕組み講座

たどりついたピラミデビルには、最初に訪れた「ワコウ・ワークス・オブ・アート」をはじめ5つのギャラリーがあり、金島さんによれば、2011年頃にいくつかのギャラリーが一緒に移転してきた"ギャラリーコンプレックス"。さっそく、ギャラリーの中に入ってみることに。

ドイツにゆかりのある海外作家を数多く紹介。
ワコウ・ワークス・オブ・アート

「ワコウ・ワークス・オブ・アートは、もともとは初台にあったギャラリーですが、設立20周年を機にこのピラミデビルに移転。隣にある草間彌生さんなどを扱う『オオタファインアーツ』というギャラリーも、同じタイミングでこちらのビルに入りました。ヨーロッパの現代アートなど、海外のアーティストを積極的に日本に紹介しているギャラリーです。まず、スタッフの方に展示について説明していただきましょう」

「今は常設展で、メインのスペースではロンドンを中心に活動しているフォトグラファー、横溝静の作品を展示しています。ヴェネチア・ビエンナーレなど海外での展示も多く行っている作家です。奥のスペースでは、こちらも2015年のヴェネチア・ビエンナーレでアメリカ代表に選出されたジョーン・ジョナスというパフォーマンスアートのパイオニアと、東京都写真美術館と国立国際美術館を巡回したフィオナ・タンというオランダの作家、合計3名の作品を展示しています」(武笠さん)

「私はギャラリーに入ったらまずざっとすべての作品を観て、そのあとで気になったものをじっくり鑑賞します。だいたいのギャラリーはカウンターにプライスリストを置いているので、それも必ずチェックしますね。売れたり予約が入っていたりすると印がついているので展覧会の評判がわかりますし、作品の値段はアーティストのキャリアを知る上での参考にもなるので。ちなみにこちらの作品は57万円(※写真内の3点)。ギャラリーでは分割での支払いなどの相談にも乗ってくれますよ」

「ギャラリーの展示には、オーナーの方のポリシーが表れています。ワコウ・ワークス・オブ・アートはドイツにゆかりのある作家が多いですね。六本木全体では、海外のアーティストを扱っているところが多いでしょうか。たとえば、下町にあるギャラリーなどでは比較的値ごろ感のある日本人の作品のみを扱っていることもありますが、ここ六本木ではビジネスの観点からそれなりの価格の作品を扱う必要があると言えると思います。もちろん、その値段はグローバルな基準に基づくものです。では、次のギャラリーへ向かいましょう」

アーティストを育成するのもギャラリーの役割のひとつ。

「作品を購入するということは、アーティストやギャラリストを支えることにもつながります。日本には大小含めてとても多くのギャラリーがあり、メセナ活動(文化支援活動)の一環で企業が運営することもありますが、ほとんどが作品を販売するコマーシャルギャラリーです。日本は若手アーティストを育てる土壌をなかなかつくれていないと言われていますが、昨年からはコマーシャルマーケットに対しても、文化庁の支援がスタートするなど、コマーシャル側の要素も含め若いアーティストを育てる体勢も少しずつ整ってきたように感じます」

アートの裾野を広げる「ヒロミヨシイエディション」。
ヒロミヨシイ六本木

「こちらのヒロミヨシイ六本木は、清澄白河だけでなく、2010年にここ六本木にもスペースを開設しました。写真家の篠山紀信さんなどが所属し、現代アートを中心にいろいろなキュレーターやギャラリーの方と組んで展覧会を行う、ユニークなスタイルのギャラリーです。また山梨県にある清春芸術村を運営していたり、六本木のここにはバーも併設していて、噂によると芸能人のお忍びスポットにもなっているらしいですよ(笑)」

「私たちは主に現代アーティストの作品を、写真、絵画、彫刻を問わず、幅広く展示しています。入り口にあるタイヤの跡の作品(※1点前の写真右)は、タイのリクリット・ティラヴァーニャという作家のものです。ウィンドウ側の12点セットの作品(※ページ冒頭の写真)は、篠山紀信の『晴れた日』という写真集からのもの。奥の3点は杉本博司の建築シリーズから、グッゲンハイム美術館、光の教会、バラガンハウスの写真作品をリトグラフに起こしたものです。壁沿いの5点(※下の写真)は、横尾忠則のY字路の作品から、5点を版画にしています。いずれも、ヒロミヨシイエディションで制作したものです」(坂本さん)

「今『エディション』という言葉がありましたが、エディションとは作品が複数あるということ。デジカメで撮って複製すればいいと思う人もいるかもしれませんが、ギャラリーが制作数を管理し販売することで、美術品としての価値が担保されています。エディションをつくるときには、ビジネスとして成り立つかどうかをギャラリストが考えて企画し、アーティストと相談しながら制作を進めていくパターンが多いですね」

「たとえば杉本さんの作品は、オリジナルだと数千万の価格で流通していますが、エディションの作品を制作することで価格を抑えられ、購入できる人も増えます。また、この横尾さんの作品は45枚のエディションがあって、1点18万円だそうです。エディションの数やサイズによって価格が決定されますが、リーズナブルなエディションは購入できる層の裾野を広げているとも言えるのです」