TOUR REPORT

第15回六本木デザイン&アートツアー 松田朋春氏による「DESIGN TOUCH 2014」ツアー

第15回六本木デザイン&アートツアー 松田朋春氏による「DESIGN TOUCH 2014」ツアー

最後に訪れたのは、「森の学校 by六本木未来会議」。これまでにもお伝えしているように、椿昇さんと長嶋りかこさんのインタビューから生まれたこのプロジェクトは、森の中でクリエイターが授業を行うというもの。さらに、50人のクリエイターが推薦した本が並ぶ図書室も併設されています。ツアーの終わりは、ここに設置されている黒板を使った、松田さんの"特別授業"となりました。

デザインとアートの学校は未来の顧客を創出する。
「森の学校 by六本木未来会議」

「僕も教育には関心があります。というのも、私たちは一般的に『いいもの』を感じる力が弱いと思うんです。いくら日本のものづくりの品質が高いと言っても、それを感じ取る力がなければ意味がない。品質の高いものに触れさせたり、精度の高さを感じさせたりすることが、日本の製造業の、未来の顧客をつくり出すことにつながる。僕はそれを『品質教育』と呼んでいます。そして、感受性が鋭いっていうことは、感じたことを表現する言葉をたくさん持っているということ。最終的には語彙の問題なんだと、最近は思うようになってきました」

体験型イベントだけでは、見逃されてしまうもの。

「ここ、本物の教室みたいで、すてきなところじゃないですか。最後にこの場所をお借りして、みなさんからの質問に答えていきたいと思います。感想でも構いませんので、ぜひ」

――これまでの仕事で、一番楽しかったものを教えてください。

「僕は基本、楽しいことしかしないんですが......(笑)。『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』というソーシャル・エンタテイメントをご存じですか? 屋内外のさまざまな環境が再現された光がまったく入らない暗闇の中を歩くのですが、何も見えない中を進むので、全盲の人がアテンドしてくれるんです。その人たちと関わるうち、彼らの能力の高さに驚かされて、この人たちはもっと社会参加するべきだって思ったんです。そんなときに、依頼されたのが今治タオルのプロデュースの仕事でした。タオルは肌触りが肝の商品だから、彼らとコラボレーションするにはぴったり。できあがったタオルは売れ続けていて、彼らの運営資金にもなっています」

――デザインやアートの展示には、触れてはいけないと思っていました。でも、今日は体験型の展示やさわれる展示もあって、面白かったです。

「子どもたちは、さわりすぎて壊しそうな感じでしたよね(笑)。子どもって、さわれないものには興味がないんです。見るだけっていうのは不自然なことなんだなって、気づかされますね。でも、最近のデザインイベントで体験型のものが増えてきている中、『見る』だけでどこまで理解できるか、ということも大事だと思います。もちろん体験型の展示は楽しいですが、『見抜く力』が、もしかしたら衰えてしまうかもしれませんね」

――今、社会的にもデザインとアートの力が期待されているのだと思います。実際に、どれくらい求められているのでしょうか?

「デザインやアートって、要は『創意工夫』ということだと思います。それはどんな分野にも必要なこと。そういう意味では、デザインやアートの力が求められる領域はどんどん広がっているでしょう。その一方で『何かの役に立つ』ということだけにとらわれすぎてはいけないとも思います。とくにアートは、役に立つ、立たないという目線で見てもあまり意味がないところがありますよね」

アート=問い、デザイン=答えの繰り返しで、物事はよくなる。けれど......。

「さて質問にあったように、よくいわれる『デザインとアートの違い』について、お話ししましょう。物事は、Q(問い)とA(答え)の組み合わせでできていて、適切に組み合わさることで、よりよくなっていく。私は、問いがアート、答えを出すのがデザインだと考えています。デザイナーもアーティストも、もちろん仕事上は問いも答えも出すでしょうが、重心がどちらにあるのかということです。デザイナーやアーティストと接するとき、このことを頭に入れておくと行き違いが少ないと思います」

「この図の階段の上の方向にあるのは『イノベーション』です。でも、階段を上ることだけが大切なわけじゃないし、下りるという方法だってある。では、みなさん、雑居ビルの階段をイメージしてみてください。雑居ビルの地下には、何がありますか? バー? いえ、たいていはスナックがあるんです(笑)。バーやパブには相応のデザインがあるけれど、スナックには明確なスタイルがないというか、『その他』みたいな業態なんです。「反デザイン」的な空間で、通う人はそこが好き(笑)ちなみに、東京ミッドタウンは当たり前ですがスナック的じゃないでしょう? でも、そういう方向も大事なんだと思います」

「今日のツアーで巡ったのは、DESIGN TOUCHの一部だけでしたが、どれもクオリティが高いなと感じました。今後に期待して、あえて課題を挙げるとしたら"街の使いこなし"でしょうか。これからもっと冒険してもらいたいですね。今日は脈絡なくいろいろな話をしてしまいましたが、天気のよさに免じてお許しください。お付き合いいただきありがとうございました」

 

Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2014 information
『Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2014』

会場:東京ミッドタウン各所
会期:2014年10月17日(金)~11月3日(月・祝)
開館時間:10:00~22:00
休館日:会期中無休
入場料:基本無料
http://www.tokyo-midtown.com/jp/designtouch/2014/